エルサレムのイチゴ

【第33回】今週のアルジャジーラ〔イスラエル〕

みなさん、一週間お疲れ様です。暑い。暑くて死ぬ。今週のイチゴ画像は元のサイズにもどり、普通です。

今週はとっとと、気になる記事の紹介から始めます。

Radiohead in Israel: A fig leaf for apartheid

レディオヘッドといえば、私の青春である(高校のとき聴きまくっていた、今も大好き)。しかしわくわくしながらクリックしてみると、レディオヘッドがイスラエルのテルアビブで公演を行なったことが波紋を呼んでいるという、あまりポジティブとはいえない内容であった……。

ボーカルのトム・ヨーク氏は、「ある国で公演を行なうことはその国の政府を支持していることと関係ない。ぼくたちはトランプを支持していないけどアメリカで公演はする。同じように、テルアビブで公演をすることはネタニヤフ(現イスラエル首相)を支持していることにはならない」と主張。まあ筋は通っているし、政治と文化芸術は関係なしで行こうよ、という考えには私も賛同したい部分がある。

が、音楽界では今、イスラエルでの公演をボイコットする動きが主流であるらしく、公演を敢行したレディオヘッドに対して他の様々なアーティストが非難の声を上げているようだ。映画監督のケン・ローチもトム・ヨークとレディオヘッドを批判していて、「彼らはアパルトヘイトに加担している」と発言している。記事中で頻出するBDSという単語は Boycott, Divestment,Sanctionsの略らしい。

私としては、トム・ヨークの言っていることもわかるし、ケン・ローチの言ってることもわかるしで、ここで積極的にどちらかを支持することはしないが、まあほんとどうしたもんかなと思う。月並みなことしか言えずすみません、だってこういう系の問題むずかしいんだもの……。まあでも、「空気読めよ」ということでケン・ローチに一票、かもしれない。トム・ヨークの主張は筋は通っているが、結果的にパレスチナの人々の心情を無視することになっていては元も子もない、と思う。文学も音楽も美術も、文化は国境を越えて人を繋ぐものだ。だからなるべく政治的なことは絡んでほしくないのだが、こういう時代なので、こういう系のトラブルは今後も各所で起きそうである。

以下は個人的な思い出だけど、イスラエルのエルサレムを訪れたとき、ゲストハウスで流れていた音楽に私は感動した。下の写真のようなゲストハウスだったのだけど、ロビーのBGMで、それこそ今回のレディオヘッドとか、アークティック・モンキーズとか、私の知っている好きな音楽がずっと流れていたのである。

それまで旅していたモロッコやヨルダンでは、レディオヘッドもアークティック・モンキーズも、まず耳にすることはなかった。バスや宿の中で流れていた音楽は、私の知らないアラブ系の曲だった。それはそれで情緒があったし、日本に帰ってきてからアラビア語の曲がすごく好きになったので良かったのだけど、「あ〜ここは私が知ってる文化圏じゃないんだ〜」という疎外感がずっとあった。

そんな中でやってきたエルサレム、レディオヘッドやアークティック・モンキーズなど、聴きなれた音楽を耳にしたときの安堵感と言ったらなかった。「ここは私の知ってる文化圏だ!」と思った。Macをカタカタしている人がいるのも、底がドロドロしてないコーヒーも、私がよく知っている風景だった。言葉も通じない、文化も宗教もちがう。だけど、良いと思える音楽は同じ。そのことはなんとなく、私を少しだけ勇気付けもしたのだ。

だからこそ、今回のレディオヘッドの騒動は、ちょっとショックだった。国境を越えて同じ音楽に熱狂できるって、本当はすごく素敵なことだと思うんだけど、政治的トラブルにもなってしまうんだなあ。

というわけで、ちょっと中途半端ではあるが、また再来週〜。


شكرا لك!