“セックス”描写がなくても大人気!井原西鶴の最大傑作は『男色大鑑』だった?

前々記事「顔とアナルを駆使して“立身出世”!――井伊直政は家康の“愛人”だった?男色が武士の出世を左右したワケ」の中でも紹介した、江戸期の人気作家・井原西鶴の浮世草子『男色大鑑』。昨年BLコミカライズ版(全3巻/KADOKAWA)が発売され、大きな話題となった同作は、どんな時代背景を示していたのか――読み解いていこう。

BL版『男色大鑑』(KADOKAWA)で描かれた「傘持てもぬるゝ身」(左)の惨殺シーンと、「玉章は鱸に通はす」(右)のセックスシーン。実際の『男色大鑑』に性描写はないそうで、「BLだとセックスしないと売れないというのも面白い」と染谷氏は話す。

 西鶴といえば、『好色一代男』などで知られているが、 実は彼の書いた『男色大鑑』は全8巻40章にわたって武家社会における衆道、そして町人社会に属する歌舞伎若衆を取り上げた大作であり、実はこちらが「代表作だ」との声もある。

「西鶴の残した作品の中で、『男色大鑑』は圧倒的に文量が多いんです。もちろん、量が多ければいいというものではありませんが、彼は一昼夜に俳句を何句読めるかという矢数俳諧で2万3500句という金字塔を打ち立てた人物。人一倍数にこだわった人ですから、一番作品数を盛り込んだ『男色大鑑』に彼がいかに力を注いでいたかがわかります」(前出・染谷氏)

 例えば第二の二「傘持てもぬるゝ身」は、寵童となって明石藩の殿に近づいた美少年・小輪の愛と裏切り、執着を描く。小輪は殿からこの上ない寵愛を得つつもあえて別の念者と関係を持つ。そして密会が発覚し、小輪は万座の席で殿になぶり殺しにされるという、凄惨で複雑な物語だ。

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