会見場から考えるグラビア業界の光と闇と裏側――チリドルはなぜ生まれる? ソフマップ的グラドル考現学

――グラビアアイドルのDVD発売イベントとメディア取材が行われ、“グラドルの聖地”ともいうべき存在となっているソフマップ。しかし最近は、そこでのメディア取材の画像が、思わぬ方向でネット上の話題となることが増えている。“チリドル”や“ソフマップクオリティ”という言葉が生まれる、その現場の裏側を探る。

秋葉原にあるソフマップモバイル館。この4階では……。

「ソフマップ」という言葉を聞いて、一体何を思い浮かべるだろうか? 多くの人は、家電量販店だと思うだろう。だが、グラビアアイドル界では、今やDVDや写真集の会見場としてつとに知られている。実際のところ、「ソフマップ」と書かれた青白パネルの前で、グラビアアイドルがポーズをとっている写真を目にしたことがある人は多いはずだ。

 さて、こうしたソフマップの会見画像だが、ネットをよく見ている人ならば、タイトルに【ソフマップ】と書かれた2ちゃんまとめの記事を読んだことがあるだろう。そこで独特の雰囲気をまとうグラドルたちは“チリドル”とも呼ばれている。共有辞書サイト『はてなキーワード』によると、チリドルとは、『独特の雰囲気をまとうグラビアアイドル・女優の総称。2ch芸能スポーツ+板にて記者であるチリ人φ(ハンドルネーム)がこうしたグラビアアイドルのスレ立てを得意とすることから名付けられた』とある。その特徴はズバリ次の7つだ。

「風俗で出てきたら『チェンジ!』と叫びたくなる容姿」「だらしなく弛んだ“W60”のビア樽腹」「熟女を彷彿とさせるくたびれた乳」「貫禄のどや顔」「読む側をイラっとさせる本人の口調やブログでの文章」「××カップや爆乳など思わずクリックしてしまうキャッチフレーズ」「チリ人がスレッドを立てている」

 このような特徴を備えているため、2ちゃんねるではスレッドの冒頭で実際に「チェンジ」と揶揄されるのが定番で、その容姿が口汚く罵られることも多い。そして“チリドル”という言葉を知らない人でも、ネット上でイジられるグラドルを見て、「こういうルックスの女のコが、なぜグラドルデビューできるのだろうか?」と、素朴な疑問を抱いていた人も決して少なくはないはずだ。

 今回は、そんなソフマップのグラドル関連イベントの裏側について、事情を知る人物らにインタビューを敢行。そこからグラドル業界に潜むさまざまな諸問題について考察してみたい。

 まず、我々がネットで目にしているソフマップのグラドルイベントは、どのような形で行われているものなのだろうか?

「秋葉原のソフマップで行われるグラドルのイベントは、グラドルの新作DVDのリリースに合わせて行われるものです。DVDの購入者を対象に行われる握手会・撮影会がイベントのメインとされ、メディアの取材・撮影は、その前後に行われます。14時~15時に1部、16時~17時に2部と2回のイベントを行う場合などは、その間の1時間でメディア取材が入る……なんていうパターンもありますね」(ニュースサイト記者)

 ネットでイベントの写真だけを見ている人からすると、メディア取材がメインの場所だと思えるかもしれないが、ソフマップのイベントはファンがDVDを購入し、グラドル本人と交流をする場所でもあるわけだ。

 また、ソフマップのイベント会場は、複数存在するのだという。

「最も大きな会場は、約200人を収容するアミューズメント館の8階。ここにはある程度の集客が見込める、人気の高いグラドルが登場することが多く、ネットで揶揄の対象になるような“地雷”は少ない。同店の7階にも小規模のイベントスペースがあり、そちらは着エロ系のグラドルやAV女優が中心ですが、知名度の低いグラドルが出る場合もあります。またモバイル館4階のイベントスペースも、過激なタイプのグラドルや、デビューしたてのグラドルが出ることが多い。2ちゃんねるに転載されて話題になるのは、モバイル館4階に出ているコが中心ですね」(同)

 グラドルのDVD制作に関わる関係者も、それぞれの会場の違いについて次のように解説する。

「アミューズメント館8階でイベントを成功させることは、グラドルにとっては人気があることの証明になりますから、ひとつのステータスともいえます。もちろん、モバイル館の小さな会場からスタートし、順調にステップアップを果たしているグラドルもいますし、イベントが好評だった場合は、大きめの会場で急遽アンコールイベントが行われることもあります」

 当然のことながら、メディア露出の場としても、デビューしたてのグラドルには、ソフマップは貴重な場所だ。前出の関係者は「大手メーカーからDVDをリリースするグラドルは、8~9割はソフマップでイベントをやっているのではないか」と語る。アイドル研究家の北川昌弘氏も次のように続ける。

「書泉グランデや福家書店なども写真集の発売記念イベントをやっていますが、出版不況の現在、写真集を出せるグラドルは少なく、イベントの数も少ない。一方でソフマップは、毎週末に複数のグラドルのDVD発売記念イベントをやっているので、取材に訪れるメディアも多いです。またソフマップ店舗でのグラドルDVDの売り上げランキングは、TBSの情報番組『ランク王国』でも紹介されるため、必然的に注目を集めることになります」

 またソフマップのイベントは、前述の購入者対象の握手会や撮影会により、「DVDを手売りする場所」としても大きな役割を果たしている。

「グラドルのDVDはアマゾンの売り上げが半分近くを占めている場合が多く、セル店での売り上げは非常に限られている。売り上げ枚数自体も非常に小規模なもので、知名度がそこまでないグラドルの場合は、500枚程度を売ることでなんとか採算ベースに乗せている……というような状況と推測されます。ですから数十枚、数百枚のDVDを、ファンに直接売ることができるイベントは、売り上げを稼ぐ貴重な場所というわけです」(北川氏)

続きをみるには

残り 4,789字 / 3画像
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?