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"戦略"、"暴露"、"自賛"…… 建前の間に本音が見える政治家本の出版事情

去る7月1日、世論を騒がせながら集団的自衛権を認める閣議決定がなされた。タカ派として知られる安倍晋三政権下での成立だけに、安倍首相の政治戦略に不安を口にする人も多く、各種メディアでも安倍氏への批判記事が乱立している。

安倍氏は2度の首相経験者であると同時に、50万部以上を売り上げたベストセラー作家でもある。覚えている方も少なくないであろう『美しい国へ』(文藝春秋)だ。第一次安倍政権の2006年当時に刊行された同書は、13年の第二次政権発足後、増補版として『新しい国へ』【1】と改題・再刊行。政治家として目指す「アジア外交戦略」や「教育問題」といった政策と共に、国家観や天皇観が披露されている。『美しい国へ』から付け加えられたのは最終章「新しい国へ」の部分であり、ここではのっけから「デフレ退治と日銀改革」と、経済政策が披露されており、以降も大半がいかに経済を回復させるかという話に終始。第二次安倍政権下では「アベノミクス」と呼ばれる成長戦略の思い切った舵取りが行われているが、前政権時代に比べて経済政策重視の姿勢を打ち出す腹積もりが、ここからはよく読み取れる。これはつまり、この「新しい国へ」こそが第二次安倍政権のマニフェストであるということなのだろう。

安倍氏ほど売れるケースは稀にしても、政治家が執筆した書籍はコンスタントに刊行されている。本稿では、自身の政治観について語った本から趣味エッセイまで、いくつかのタイプの中で近年話題になった書籍を取り上げてその中身を見ていきたい。

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