メディアへの圧力団体という虚像――タレント肖像権をチラつかせる音事協はタブー団体なのか?

――清水富美加の芸能界引退&出家騒動や、能年玲奈の独立騒動でも、一部メディアでその名前が報じられた音事協。100以上の芸能プロダクションが加入する業界団体で、「マスメディアに強い影響力を持つ」という噂を耳にしたことがある人もいるだろう。本稿ではその真偽や、協会の設立経緯、現在の活動などを探っていく。

音事協の会員や役員の一覧が記載されている公式HP。

 ホリプロ、ワタナベエンターテインメント、バーニングプロダクション、吉本興業といった芸能プロを中心に、100社以上が加盟している「一般社団法人 日本音楽事業者協会」通称、音事協。こちらの記事で詳しく紹介しているように、渡辺晋(初代渡辺プロダクション代表)、堀威夫(初代ホリプロ代表)、田邊昭知(田辺エージェンシー代表)といった芸能界の大御所が歴代会長を務めており、大手芸能プロの大半は会員として参加。業界としては、最大規模の団体といっていいだろう。

 その設立は1963年。ホームページ上では「音楽事業及びその関連事業の向上ならびに近代化を図る」ことを設立の目的として説明している。

 現在、協会の取り組む業務の中心は、所属タレントの肖像権、パブリシティ権といった知的財産権の管理保全事業。具体的な業務は、加入している芸能プロのタレントの映像・写真がテレビメディアで二次使用される際、その許諾を与え、使用料を徴収する窓口となること。そして、売り上げを各芸能プロに分配することだ。その業務について、加盟団体のスタッフは次のように話す。

「二次使用の際に、その都度テレビ局から問い合わせがあり、契約書が発生して……という状況になると、物理的に業務が追いつきません。音事協はその窓口業務を一括で担当してくれるので、その点が会員になる一番のメリットになります」

 芸能プロと音事協側がメールや電話・対面でやりとりをする機会は「ほとんどない」(同)という。

「やりとりが必要なのは、新しく所属になったタレントを音事協に登録するときと、タレントが移籍したときくらい。登録も、性別や本名、契約日などの必要事項を記入して、社判を押して送る程度の簡単なものです。また、二次使用の際の相場も大まかに決まっているので、その点で交渉することもありません」(同)

 以上が芸能プロと音事協の基本的な関わりとなる。「だから、音事協の会員にならないと何か困る……ということはないんです」と音事協関連の事情に詳しい芸能ジャーナリストは語る。

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