ライムベリーとlyrical schoolを筆頭に、アイドルがマジにラップ中!「やらされ感」と「自分の言葉」とアイドルとヒップホップの“間”

――EAST END×YURI、安達祐実、燦然と輝く傑作としての星井七瀬、多くのアイドルヒップホップを量産してきたハロプロのつんく♂サウンド。そして、AKB48の楽曲群……。いま、ポップソングとしてのアイドルラップの歴史が語られる!

1994年に発売されたEAST END×YURIの「DA.YO.NE」。ミリオンヒットを達成した。

 女性アイドルがラップする、その歴史は案外古い。それは、アイドルソングがポップソングであるがゆえに。J-POPがかなり早い段階からラップ(あるいはラップ的な歌唱)を取り入れたために、それがアイドルソングにも波及したのだ。そして、アイドル戦国時代といわれて久しい現在。他の多くのアイドルとの差別化のため、あるいは楽曲バリエーションに幅を持たせるためにも、ラップを楽曲に取り入れるアイドルは、いまやさして珍しくもなくなってしまった。しかし、珍しくもないほどに数が増えたがゆえに、いくつかの突出した存在も生まれてはいる。本稿では、いま聴くべきラップアイドル、あるいはアイドルラップについて語ってみたい。

 1980年代前半にも山田邦子や松居直美がラップ歌謡曲をリリースしてはいるが、ヒップホップに初めて正面から向き合ったアイドルといえば、やはりEAST END×YURIだろう。東京パフォーマンスドールの市井由理が自身のソロ曲でもラップを歌うほどヒップホップ好きだったことから結成された同ユニット、YURIの歌うリリックをMummy-D(RHYMESTER)が手がけたこともあり、アイドルによる初の本格的なラップが実現。94年に発売された「DA.YO.NE」は、ミリオンヒットを記録し、翌年の紅白歌合戦にヒップホップグループとして初出場も果たしている。

「当時はまだ、日本語ラップそのものさえ良しとしないヒップホップ好きも少なくなかった時代。EAST END×YURIなど“セルアウト”(商業主義)もいいとこだと、あまり良くは言わない人もいました。以降、安達祐実の『どーした!安達』(94年)や星井七瀬『恋愛15シミュレーション』(03年)など、アイドルラップは企画モノとしてネタ的に消費されることが多く、ハロー!プロジェクトのアイドルなどがたまにラップ曲をリリースすることはありましたが、次に登場した“ラップ専業”に近いグループといえば、03年デビューのHALCALIでしょうね」

 こう語るのは、音楽ライターの高木“JET”晋一郎氏だ。

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