“強姦罪”の消滅で変わるもの、変わらないもの…110年ぶりの刑法改正でも穴だらけ!? 強姦罪名称消滅でも“悪法”への懸念

――法律が時代に追いついておらず、悪法と呼ばれてしまうこともあるが、その一方で、改正されたにもかかわらずその懸念が拭えないものもある。ここでは、このたび閣議決定される新しい強姦に関する法律からその事例を見てみよう。

『強姦の歴史』(作品社)

 “強姦”が消える──3月7日の閣議決定において、110年ぶりに変わる見通しの刑法がある。1907年より続いてきた、刑法第177条“強姦罪”だ。2014年から議論が始まり、今国会での成立を政府は目指している。しかし未熟な改正が、後に悪法と呼ばれる可能性は拭えない。

「『110年ぶりの大改正』とうたわれるが、そうではない」と断言するのは、「レイプクライシス・ネットワーク」代表理事の岡田実穂氏だ。セクシャルマイノリティを含め、男女を問わず性暴力被害サバイバーを09年より支援している。

 今回の改正点を6つに整理してみよう。大きく動くのは「【1】厳罰化」「【2】非親告罪化」「【3】【4】被害者の対象の拡大」「【5】罪名の変更」「【6】新しい罪の創設」だ。

【1】法定刑の下限が引き上げられる。現行の強姦罪の下限刑は「懲役3年以上」だが、改正後は「懲役5年以上」になる。また強姦致死傷罪も「無期または懲役5年以上」から「無期または懲役6年以上」に引き上げる。これまで強盗罪、放火の罪よりも刑が軽かった強姦罪を厳罰化することで、性加害はより重大な犯罪だと社会に示す狙いがある。

【2】「親告罪」規定の削除。刑法第180条では強制わいせつ罪、強姦罪、準強制わいせつ罪及び準強姦罪、ならびにこれらの罪の未遂罪を「親告罪」としている。これを削除し、非親告罪化する。被害者が加害者を訴える決断を下さなくても、警察は犯罪事件として立件できる。

【3】被害者・加害者の性差の撤廃。現行法は、母体保護の観点から「被害者は女性、加害者は男性」と限定していた。改正後は、男性被害者も起訴可能になる。

【4】処罰化の対象の拡大。強姦とは「暴行又は脅迫を用いる、ペニスを膣に挿入する行為」を指す。しかし改正後は、膣以外の挿入(肛門、口腔)も罪に問える。

【5】罪名を「強姦罪」から「強制性交等罪」に変更する。

【6】監護者の罪を新設。注目度が低いが「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」ができる。子どもを現に監護する者(親)が加害者の場合を厳しく罰するためだ。

 以上を踏まえたうえで、岡田氏は「非親告罪化は前進だが、改正で被害者が大きく救われるとはいい切れない」と語る。

「肛門性交やフェラチオも罪になり、確かに罰せられる範囲は広がります。

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