【Kダブシャイン】米国をチェンジさせたヒップホップの力――独自の解釈で紐解く自国の歴史への反省

Kダブシャイン(ラッパー)

1968年、東京都生まれ。95年にキングギドラとしてデビュー。97年にソロ作『現在時刻』を発表。政治批判や社会問題などを積極的に取り上げ、唯一無二のMCとして知られている。最新作『新日本人』発売中。Twitter〈@kingkottakromac〉Instagram〈kw5hine〉

 日米関係をいつも憂いてるオレが選んだのは『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』。80年代に渡米したことがあるんだけど、ちょうどその頃『サルバドル/遙かなる日々』や『プラトーン』(共に86年)、『ウォール街』(87年)『7月4日に生まれて』(89年)なんかが続々と公開されて、オリバー・ストーン監督の作風を気に入ったんだよね。『スカーフェイス』(83年)の脚本も秀逸で、フィルムメーカーとしてのセンスはもちろん、ジャーナリスティックでもあり、彼が作品を通して表現したいメッセージに感銘を受けた。

 この『もうひとつのアメリカ史』は、1930年代の末からオバマ政権までの長い期間を、オリバー・ストーン視点で淡々と描いたドキュメンタリーなんだけど、その頃には一般には知らされてなかった事実を暴き、独自の見解と分析を入れ込んで――例えば、冷戦が終結してから30年経ってるけど、いまだにアメリカは冷戦の状況下にあるよう錯覚させるとか――観る者に“疑う”ことを促している。アメリカ人であるストーン監督がアメリカ史を語るということは、まさに同胞の「アメリカ人のため」にこの映画を作ったんだよね。「果たして(第二次世界大戦中に)広島と長崎に原爆をどうしても落とさなきゃならなかったのか?」「戦後の領土分割や、来たる冷戦でのイニシアチブを握るため、米軍の強さを見せつけることを目的にしたのではないか?」「出来の悪いトルーマンは、ただ単に戦勝国の大統領になりたかっただけではないのか?」と、この映像を観て考えさせられた結果、アメリカ人であればアイデンティティに思い悩むことになるだろうし、自国の歴史の反省にもつながる。

ここから先は

914字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?