【m-flo☆Taku Takahashi】が緊急参戦!音楽とネットの親和性とはいかに? ストリーミングの是非を問う!

――本誌でたびたび特集してきた音楽ストリーミングサービス。本稿では、一番の当事者であるアーティストに話を聞く。サービスのメリットとデメリット、国内で普及するか否か、そして未来を深く掘り下げる!

(写真/磯部昭子)

 このところ音楽ストリーミングサービスにまつわる明るいニュースが飛び交っている。しかしその一方で、昨年10月に発表されたLINE MUSICの具体的なサービス内容は公開されず、米ソニーがスポティファイと提携し、新たなサービス「プレイステーションミュージック」をスタートさせることを発表したものの、日本はサービス対象外――といったことも同時進行で起きていることは本誌前号でも既報の通り。かつてiTunesへの参入を長らく見送り、保守的な体制を貫いていた日本のソニー。プレイステーションミュージックのリリースに伴い、自社サービスであったミュージックアンリミテッドは3月下旬でのサービスを撤退。かねてから噂されていたスポティファイの日本上陸は、また先延ばしとなってしまった。

 これまでも本誌では音楽ストリーミングサービスの行方を追い、レーベル関係者や音楽ライターといった業界関係者に話を聞いてきたが、そこでは「業界の救世主になりうる」と前向きな声がある一方で、「CDの売り上げ減少につながる」という懸念も聞かれている。日本におけるストリーミングサービスの普及は、是なのか非なのか。では、こうした現状について音楽を生み出す側であり、本格的にストリーミングサービスが導入されれば現在の活動方針そのものが変わりかねない”アーティスト”はどう感じているのだろうか?海外ではレディオヘッドのトム・ヨークが相も変わらずストリーミングサービスに反対の姿勢を貫き、昨年末にはテイラー・スウィフトが「アーティストの努力を公正にまかなっていない」とスポティファイに対して不快感を露わにし、全楽曲を同サービスから引き上げたばかり。日本では、Mr.Childrenのほか、ジャニーズに所属する全アーティストなど、いまだにiTunesなどのデジタル販売すら拒否する者や企業も存在するなか、音楽ユニットm-floのメンバーであり、DJやプロデューサーとしても活躍し、長らく音楽業界を見渡してきた☆Taku Takahashiに、ストリーミングサービスに対する”本音”を聞いてみた。

リストラの恐怖に脅えず新たな業務を模索する時代

――アメリカやヨーロッパでスポティファイやビーツ・ミュージックなど、音楽ストリーミングサービスが広がっている一方で、日本はすでにいくつかのサービスが存在しているにもかかわらず、なかなか盛り上がりを見せませんが、その理由はなんだと思いますか?

☆Taku Takahashi(以下、☆Taku)海外でストリーミングサービスが広がったのは、CDやダウンロードの売り上げが極端に減り、”移行せざるを得なくなった”という背景があるからでしょうね。しかし日本は、いくら”音楽不況”と言われていても世界に比べたらCDが売れ続けている国です。チャートをアイドル勢が占めていることでもわかる通り、CDなどのパッケージメディアには、いまだユーザーのニーズがある。CDは最も利益率が高いので、レコード会社はそこに握手券や投票券といった”おまけ”を付けてでも売りたいわけです。この手法に関して賛否両論ありますが、僕はひとつの企業努力の結果だと感じています。

 とはいえ、そうした現在の「CDはまだ売れる」というシステムに依存してしまっているレコード会社にとっては、ストリーミングサービスの普及は死活問題にもなり得る。これまでのCDの収益が消滅する可能性があるわけですから。「その利益を減らさず、いかに新しいサービスに移行するか?」を考えるのは組織として当然なので、レコード会社が慎重になるのもわかります。ストリーミングサービスによって、CDに重きが置かれなくなれば、不要な業務がいくつも出てくる可能性は高い。その結果として大規模なリストラにもつながり、今のレコード会社の社屋は半分に縮小しても業務は可能かもしれませんよね。

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