マガジンのカバー画像

バンクシー&現代(危)アート【2020年3月号第1特集】

14
¥500
運営しているクリエイター

記事一覧

ブームの「アート×教養本」じゃ教えてくれない! 社会と交錯し、美術史をも更新――現代アートの今がわかる書籍群

――西洋の名画のような“教科書的な読み方”では理解不能な作品が多く、「作品について調べてみたけど腑に落ちない……」と言われることもある現代アート。本稿では、そんな現代アートの本質的な面白さや革新性、そして現代社会との関わりがわかる書籍を関係者の声をもとに紹介していく。

自身の作品の前でポーズを取るオラファー・エリアソン。(写真:Judith Burrows/Hulton Archive/Gett

もっとみる

テレビ局も新聞社も、美術展の金ヅルにすぎない?――放送外収入には全然ならない? 美術展ビジネスに群がる既得権益

――現在、テレビ業界が力を入れているのが放送外収入。その事業のひとつが各地で行われる美術展への出資だ。確かに日本は世界でも有数の“美術館大好き国”といわれ、多くのファンがさまざまな美術展に足を運んでいるという。だがその裏には、数多の利権に絡め取られた世界があるようだ。

六本木ヒルズや東京ミッドタウンなど、独自の美術館がひしめく六本木。国立新美術館は押され気味かもしれない。

 テレビ局の主な収入

もっとみる

自由表現は不敬なのか?――眞子さまも卒論で取り上げた天皇肖像の含意とアート群

――婚約延期の結果が注目される秋篠宮眞子さまは、国際基督教大学の卒業論文で明治期の神話画を扱ったそうだが、天皇の肖像は戦前から戦中にかけて、神聖な価値を持たされてきた。そんな天皇の姿をモチーフとしたアート作品が意味していたものとは、一体何だったのだろうか?

山下菊二による『緋道』(提供/日本画廊)

 今年開かれる東京オリンピックのメインスタジアムとして完成した新国立競技場。神宮外苑にそびえるそ

もっとみる

あいちトリエンナーレ2019をめぐる政治家たちの(危)発言録

――あいちトリエンナーレでは、各政治家たちを巻き込んだ舌戦が繰り広げられた。彼らの発言を引きながら、この騒動を振り返ってみよう。

【1】「日本人の心を踏みにじる」
河村たかし(名古屋市長)

『不自由展』に対して「どう考えても日本人の心を踏みにじるものだ。税金を使ってやるべきものではない」と舌鋒鋭く批判した河村市長。10月には、この再開に抗議して会場となる愛知芸術文化センター前での座り込みを行い

もっとみる

【演出家・高山明×政治学者・中島岳志】あいトリ「不自由展」への 政治圧力と 「解放区」で見た希望

――従軍慰安婦や天皇をテーマにした展示作品を発端として、さまざまな件が話題になった「あいちトリエンナーレ2019」。炎上のさなかで前向きに問題への対処をみせた演出家の高山明と、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志が対談。これが今後、表現の自由、ひいては日本のアートにどう影響を与えるかを語った。

(写真/増永彩子)

【1】あいちトリエンナーレ2019の展示風景「表現の不自由展・その

もっとみる

竹島をテーマにした作品が200万円!――AI推進国・韓国では専門ギャラリーも誕生!

――日本ではAIの社会実装や、それを使ったアートと言われてもピンとこないのが現状かもしれない。だが、お隣韓国ではすでに、若者が多大な関心を示し、国家ぐるみでAIアートを推し進めているようだ。

前記事で紹介した、竹島の彩色で有名なパルス9の作品。

 人工知能を使ったアート作品の普及に一際強い関心を見せる国がある。それは隣国・韓国だ。韓国では数年前、囲碁界のトッププロでもあり国民的スターでもあるイ

もっとみる

高校生がアート市場を覆す!?――初出品作品が4800万円! どうなる? AIアートの真贋

――最新のAI技術を使って描いた絵画が、出現してきている。そんなAIアートがクリスティーズで約4800万円で落札されたことも話題になったが果たして、それらの作品は人類のアート領域を進化させていくのだろうか? すでに多数のアーティストがAIアートをつくりつつある中で、キーマンや作品を紹介しながらアートフォームの最新系を見ていく。

アーティスト集団「Obvious」。AIを駆使してさまざまな作品を生

もっとみる

市場規模の小さい国内美術に光明か?――オタクが展覧会に押し寄せる「刀剣乱舞」狂騒曲

――全国各地で「刀展」が隆盛している。日本刀を鑑賞する“愛刀家”といえば、それまで年配の男性が主な層だったが、ここに今、若い女性たちが流入してきているのだ。その火付け役となったゲーム『刀剣乱舞』と、ブームに至るまでの経緯を追った。

(絵/瀬崎百絵)

 すでに記憶が最新回で上書きされているだろうが、少し頑張って2018年の『紅白歌合戦』を思い出してみてほしい。派手な衣装を身につけて刀や槍を握り、

もっとみる

熊谷のならず者【舐達麻】が吐くラップとタトゥーのリアル

――本誌2019年2月号に掲載された舐達麻のインタビューは、多方面で話題をかっさらい、以降の獅子奮迅たる活躍は明々白々だ。本稿では舐達麻の3人をはじめ、クルーである〈APHRODITE GANG〉の面々、そして長野を拠点とし、メンバーに美しきタトゥーを刻む彫師・信州まなぶ氏にも同席してもらい、ヒップホップとタトゥーの在り方について問うた。

(写真/cherry chill will)

 俺は輩

もっとみる

ヌード、自傷、性別交換……レン・ハン自殺後も若手が台頭! 表現規制に立ち向かう中国写真

――2010年代、レン・ハンという中国の若手写真家がセンセーショナルかつユーモラスなヌード写真で世界的なスターとなったものの、最期は自殺してしまった。このことは日本でも一部で話題となったが、中国にはほかにどんな写真家がいるのだろうか? 表現規制と向き合いながら、新たなイメージを開拓する者たちに光を当てていこう。

『The Chinese Photobook: From the 1900s to

もっとみる

【石川真澄×くっきー!】芸術に学閥も肩書も必要ない!――「僕たち野良系ですからね」

――『スター・ウォーズ』やデヴィッド・ボウイとのコラボ作品で知られ、“現代の浮世絵師”とも呼ばれる石川真澄。そして、アートイベント『超くっきーランド』の大ヒットや『Artexpo New York』への出展も話題になった野性爆弾のくっきー!。日本のアート界の極北から世界に向けて独自の世界観を発信する2人の対談の行方は?

(写真/河野優太)

『スター・ウォーズ』やデヴィッド・ボウイなど、西洋カル

もっとみる

現代社会のタブーを暴き出す!――まるで、次世代のバンクシー! シニカルに社会を斬る美術作家

――バンクシーが一種のブームになっている。彼の社会風刺とユーモアが世に浸透しているということだが、こうした活動を行っているのは、何もバンクシーだけじゃない。ここでは、バンクシーブームの今だからこそ、現代社会のタブーを打ち破るようなアーティストたちを紹介していきたい。

東京都知事の小池百合子氏までも「バンクシーらしき落書き」に喜ぶ、今の日本。

 昨日の記事でも紹介したように、イギリスを拠点として

もっとみる

ブレグジットもシニカルに批判!――英国に残したアートから見えるバンクシーの矛先と日本の狂騒

――正体不明のグラフィティ・アーティスト、バンクシー。作品にトンデモない値がつくこの男に今、日本でも注目が集まっている。その作品らしき絵が見つかればニュースとなり、大規模な個展まで予定されている状況だ。では、本国イギリスではいかなる存在なのか? インタビュー経験があるライター・翻訳家の鈴木沓子氏が徹底解説!

「スタジオ・ボイス」2004年8月号におけるバンクシーのインタビュー記事。右の写真は“

もっとみる