海の戦火は魚を起こす(右)

主戦場はいつの頃から海となり一発の火で数百の命が消える
きりきりと戦艦のビスが熱を持ち勇みを立てて腸まで潮の香りに染まっている
「凪ですね。東曹長」「全くよ。暑いったらないよ。女将さんは元気か?島守少尉さん」
「寝顔だけ見て来ましたよぉ。お腹の子も帰ったら出てるはずですよ」
『我ら日本国海軍は太陽を背に戦うべし』我らは笑い死の恐れを
踵を鳴らし脇を締めた敬礼で祓う(死ぬことは怖くないと思っていた)
ーー旗が揺れ、敵国艦隊が重火器を用いたと軍船全体が張りつめる
「敷島少佐から伝令です。戦闘開始。戦闘開始。繰り返します。戦闘開始。戦闘開始」
反歌
海に死す覚悟は凪の汗一つ戦火に魚の腸寒し

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