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「少年法」ってどういう法律なの?

少年が犯罪行為や非行をしたときに「少年法」が適用されることは多くの方がご存知でしょう。しかし少年法とはどのような法律なのか、少年法にもとづく手続きや処分がどのようなものなのかについてひもといてみました。


「少年法」ってなに?

少年法とは、少年が犯罪や非行を行ったときの手続きや処分などの基本的な枠組みを定めた法律のことをいいます。

少年法の目的は?

少年法の目的としては、
「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」(少年法1条)
とされています。

少年は、人格形成が発達途上にあり、一度過ちを犯したとしても立ち直る可能性が十分にあり、成人と同じように刑罰を科すことが適当ではないという考え方に基づいている法律なのです。

|少年法の適用範囲と処分等

少年法における少年の定義等の違いについては以下のとおりです。

👉 少年の定義では「20歳に満たない者」
少年法における少年とは、「20歳に満たない者をいう」とされています(少年法2条1項)。
「少年」とは、性別は関係がなく、少年というが男子だけでなく女子も含むのです。

一方で20歳未満といっても年齢によって心身の成熟度は大きく異なり、事件の内容によっては保護処分よりも刑事処分が相当である場合もあります。
そのようなことから少年法では「14歳」を基準として、その取扱が異なるのです。

なお、民法の改正により成人年齢が18歳となったのですが、そのことで直ちに成年年齢が引き下げられるというものではありません。

👉 犯罪少年
14歳以上で罪を犯した少年をいいます。
犯罪少年の事件は、家庭裁判所に送致され、保護処分の対象となります。

ただし、死刑、懲役、禁錮にあたる罪を犯し、刑事処分が相当だと認められるときは、家庭裁判所から検察官へ送致され、刑事裁判を受けます(いわゆる「逆送」)。
また、故意の犯罪行為により被害者を死亡させ、罪を犯したとき16歳以上の少年原則として逆送されます。

👉 触法少年
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年です。
刑事責任年齢に達していないため刑事処分を受けることはありません。児童福祉法の措置または少年法による保護処分の対象となります。

👉 ぐ犯少年
性格又は環境に照らし、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがあると認められる少年です。
現実に犯罪行為をしていませんが、少年鑑別所に収容される場合や、少年審判を受ける場合があります。

👉 18歳以上の少年に関する法改正
令和4年4月から民法の成年年齢が18歳に引き下げられ、これに伴い少年法も令和3年5月に改正されました。

この改正において、20歳未満の少年を適用対象とするという基本は維持しながらも、18歳、19歳の少年を「特定少年」と定め、18歳未満の少年とは異なる取り扱いがなされます。

①  原則逆送対象事件
原則逆送対象事件は、家庭裁判所が原則として検察官に送致しなければならないとされている事件のことをいいますが、逆送対象事件が拡大され、従来の16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪、傷害致死罪など)のほかに、
 18歳・19歳の少年が死刑、無期または短期1年以上の懲役・禁錮の罪の
 事件
(強盗罪、強制性交等罪、強制わいせつ致傷罪、組織的詐欺罪など)が対象になりました。

②  起訴後の推知報道の禁止の解除
従来どおり、事件を起こした少年の氏名や顔写真など本人を推知できる報道が禁止されています。
しかし、特定少年に限り、起訴後(略式起訴を除く)の実名報道が容認されることになりました。

|少年事件解決までの流れ等

少年事件の手続きの流れと、少年の保護者がまずできることを解説します。

👉 少年事件の手続きとその流れ
犯罪少年は、警察の捜査を受けた後、罰金以下の刑にあたる罪を犯した少年は直接、家庭裁判所へ、それ以外の罪を犯した少年は検察庁へ送致されます。
必要に応じて最長20日間の勾留(または最長10日間の勾留に代わる観護措置)を受け、家庭裁判所へ送致されます。

家庭裁判所が観護措置を決定すると、原則として2週間少年鑑別所に収容されます。
例外として、収容継続の必要がある場合は1回更新できることになっています。なおほとんどの場合1回更新されるので、通常の収容期間は4週間といえます。

観護措置が終了すると少年審判が開かれ、
 「不処分」「保護処分」「都道府県知事または児童相談所長送致」
 「検察官送致」
のいずれかが決定します。

触法少年およびぐ犯少年は警察の調査を受けた後、行為の内容や家庭環境、年齢などに応じて児童相談所へ通告されるか、家庭裁判所へ送致されます。

👉 逆送事案は成人事件と同じ
最終処分で検察官送致(逆送)になった場合は、原則として起訴されて成人同様の刑事裁判を受けるため、有罪判決が下れば前科がつくことになります。
前科がつくと就職やその後の少年の人生に及ぼす影響も大きくなります。

|おわりに
少年法では少年の健全育成を目的としています。
そのための規定が設けられていますが、犯罪の種類や少年の年齢によって刑事事件と同様の処分を下されることがあります。
そのことも理解しておくことが必要ですね。

参考資料

少年法:https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000168#Mp-Ch_1