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記者発表レポ【後編】|辨野義己先生基調講演|腸内フローラでつなぐオープンイノベーション

サイキンソーは6月14日に創業以来初となる記者発表を開催しました。

記者発表レポ【前編】では、代表取締役 CEOの沢井による事業戦略発表と新たに開設したサイキンソー新木場ラボのツアーの様子をお届けしました。

後編では、サイキンソーの特別顧問であり、腸内フローラ研究の世界的権威である辨野義己先生の講演の内容を紹介いたします。

テーマは「腸内フローラでつなぐオープンイノベーション」

辨野先生の研究成果と社会実装にかける想い。サイキンソーとの出会いについてお話いただきました。

辨野義己
一般財団法人辨野腸内フローラ研究所 理事長 農学博士
一般財団法人「辨野腸内フローラ研究所」理事長。理化学研究所名誉研究員、細菌学者、獣医師。1948年、大阪府生まれ。酪農学園大学獣医学科卒業。東京農工大学大学院獣医学専攻を経て理化学研究所動物薬理研究室研究員。2003年、同所・バイオリソース研究センター微生物材料開発室室長。2009年に定年退職後、同所・辨野特別研究室特別招聘研究員となる。1982年、東京大学農学博士号を取得。およそ半世紀にわたって腸内細菌の分類と生態に関する研究を続けてきた世界的権威。テレビ、新聞、雑誌、講演などでも活躍し、原著論文350報以上、総説・解説550報以上、単行本(共著も含めて)190冊以上を発表。2021年、一般財団法人「辨野腸内フローラ研究所」を設立。国内外の後進を育成しながら、より深く腸内細菌の研究に努めている。

腸内細菌の重要性

人の便は、主成分である水(80%)と残りの固形成分で構成されています。その固形成分のうち30~40%が生きた腸内細菌で、わずか1gほどの大便に1兆個もの腸内細菌が含まれています。

腸内細菌は私たちの体に約1,000種類も住みついており、総重量は1~1.5kgほど。臓器に匹敵する重さです。

腸内フローラ研究では、便に含まれる腸内細菌のDNAを解析し、個人の腸内フローラの状態を調べるのです。

では、良い腸内フローラとは何か?

その条件の一つに多様性があります。

多種多様な菌がいる状態が良いとされ、そのバランス(どの菌が多くいるか)は人それぞれ

食生活や生活習慣が乱れると腸内フローラのバランスが崩れてしまい、有害菌が増殖します。

この有害菌が発がん物質や発がん促進物質、細菌毒素などを産生すると言われており、有害菌が増えることで免疫力や腸粘膜のバリア機能が低下し、病原菌が腸を介して血中に移行したり、直接腸管に障害を与えます

こうして内臓に障害が起こることで、ガン、免疫能低下、自己免疫疾患、肥満、糖尿病などの病気の原因になるのです。

また、腸脳相関(脳腸相関とも)という言葉の通り、腸と脳は密接に関係しており、うつ病などとの関連性があるとも言われています。

このように腸内フローラは全身の健康にとって大変重要な役割を持ちます。
腸内フローラの機能を解明し、医療に活かせないか。

年齢・性別・家族構成といった属性情報、生活習慣や健康状態と腸内フローラの関連性を読み解くことで、疾病リスクを識別したりその人その人に合った対策や治療を提供できると考え、日本人の腸内フローラの大規模解析を実行しました。

これが社会実装に向けた第一歩となるのでした。

理化学研究所での研究成果

日本全国の健常人腸内フローラの大規模解析

2010年~2017年の7年間にわたって、全国の健常人17,291人(男性:5,379検体、女性11,552検体)の腸内フローラを分析しました。

被検者には以下のような質問に回答いただくことで、健康状態や生活習慣と腸内フローラの相関性を調べました。

・属性:年齢、性別、BMI、家族構成、排便状況
・環境:居住地域、食生活、生活習慣、運動習慣、心理的・精神的状態
・健康状態:便秘、肥満、アレルギー、腸疾患、糖尿病、高血圧

すると、日本人の腸内フローラは、1~9の階層(クラスター)に分類されることが分かったのです。

研究から見えたこと

各クラスターには性別と年代で様々な特徴が見えました。

  • 性別の特徴

・4,5,9:男性の割合が高い
・6,7,8:女性の割合が高い
・1,2,3:性別に大きな特徴が見られない

  • 年代の特徴

・1,8:20代の割合が高い
・4,5,6,9:中年層の割合が高い
・7:70代の割合が高い
・2,3:年代に大きな特徴が見られない

さらに、クラスターごとに生活習にも特徴があることがわかりました。

社会実装にかける想い

日本全国の健常人腸内フローラの大規模解析から、腸内フローラと生活習慣の特徴が9つのクラスターに分類されることがわかりました。

さらに広範にわたってデータを収集し、大規模なデータベースを構築することで、腸内フローラを指標とする疾病の予測やリスクを検知する仕組みが出来上がると考えました。

超高齢化社会に突入した日本では、総額42兆円以上に膨れ上がった国民医療費が社会的な課題となっています。

国民医療費を削減していくには、国民の健康維持・増進、早期予防が必要です。

若年層の生活習慣病の罹患やメタボリックシンドロームも増えているように、健康と日々の食生活・生活習慣は切っても切れない関係にあります。

その人その人にあった形で習慣の改善から予防に切り込んでいく。

解決の糸口を腸内フローラに見出し、サービス化による社会実装への想いが日に日に強くなりました。

サイキンソーとの出会い

しかしながら、研究成果を社会に還元するには、アカデミアの力だけでは限界もあります。

現に辨野特別研究室では、民間企業から資金を募り研究を実施していました。

とりわけ腸内フローラを指標とする健康管理法を世の中に広めていくには、その元となるデータベースを構築するために迅速かつ安価な腸内フローラ検査キットを開発し、ビジネスとしてスケールさせる必要がありました。

しかしながら、自分にはビジネスを行う時間もエネルギーもない・・・・・。

そのような折、一通の連絡が私のもとに届きました。

それが、後のサイキンソー 代表取締役 CEO 沢井さんとの出会いだったのです。

次世代シーケンサーを用いた個人向けの新規事業を立ち上げたい。
その中で『腸内フローラ』と生活習慣に着目しているが、
第一人者である研究者の知見が不可欠です。

沢井から辨野先生に宛てたメールの内容
  • 腸内細菌の知見を応用した新しい健康診断法・管理法を作りたいという私の夢

  • 自分自身の腸内細菌叢の変化がわかる検査サービスを提供したいという沢井さんの熱意

両者合致し2014年にサイキンソーが設立され、私は特別顧問に。
翌年2015年にはサイキンソーが理研ベンチャーに認定されました。

写真右:辨野義己 先生/写真左:サイキンソー CEO 沢井悠

最後に

研究機関には、世の中の役に立つ研究成果や技術がたくさん転がっています。また公的な機関であるがゆえ、中立的な立場で企業の人たちから支援を受けることもでき、人の役に立つ研究を推進することもできます。

必要なのは、夢と熱意

組織の垣根を越えてそれらが結集することで、社会へ価値あるサービスや製品を提供することができます。
敷居はないので、気軽にご相談ください。




以上、2回にわたってサイキンソーの記者発表レポをお届けしました。

今回の発表は多くの媒体に掲載され、サイキンソーのこれまでとこれからを世の中に発信する機会となりました。

サイキンソーでは「細菌叢で人々を健康に」というミッションを共に実現する仲間を募集しています。

また、以下のフォームからカジュアル面談をお申し込みいただくことが可能ですので、お気軽にお申し込みください。

その他、Twitter(@cykinso) でも相談を受け付けているのでお気軽に DM などでご連絡ください。

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