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サイボウズ式とわたし 「社会人歴14 年目、転職経験なしの会社員が、勇気を出して『サイボウズ式第2編集部』に飛び込むまでの話」

こんにちは。中村(にゃむら)と申します。
37歳男、会社員。既婚で、ツマと3人の子どもがいます。

私は2018年12月にサイボウズ式第2編集部に参加したばかりの新入りです。

このnoteでは私の体験談に基き、「社会人歴14年、転職経験なしの会社員が、勇気を出してサイボウズ式第2編集部に飛び込むまでの話」をご紹介します。

正直なところ……、少々、長いです。

ですが、以下のような想いを持つ方々に、ぜひ読んで頂きたいです。

・サ式第2編集部の活動に興味がある
・これまでとは違うことをしてみたいと思うけれど、新しい1歩を踏み出す勇気が出ない
・代わり映えしない毎日にうんざりしている
・「このままでいいのかな?」という漠然とした不安がある

「悩みはあるけれど、行動に移すのは難しい」と感じている方々の背中を、そっと押せるような、力になりたい。

そんな淡い希望を推進力にして、この記事を書きました。
興味のある方は、お付き合い頂ければ幸いです。

* * * * *

私が就職したのは2004年。就職氷河期の終わり頃でした。
大学では文学部の地理学科に所属しており、自然地理を専攻。
航空写真立体視で河岸段丘の痕跡を探したり、photoshopで河岸段丘図を描画する毎日でした。

卒業後の進路として、測量士の資格を取って測量会社に入るという同級生もいましたが、私はIT企業に狙いを絞って就職活動をしました。
ゼミや卒論でPCを使うことが多く、IT業界に漠然とした可能性のようなものを感じていたからです。

とはいえ、IT企業がなにをしているのかもよく分かりません。
基本情報技術者試験の勉強をしてみましたが、経験を伴わない知識がどこか他人事のように脳に蓄積されるだけでした。

就職氷河期の洗礼を受け、大手企業は軒並み落ち、書類選考に落ち、試験に落ち、面接で落ち、精神的にボロボロになりつつ、ようやく内定をもらった1社に、そのまま入社を決めました。

正直「内定を手にしたこと」より、「就職活動を終えられること」のほうが嬉しかったくらいです。それくらい、精神的に消耗しました。

入ったのは公共、金融、保険、流通分野を顧客に持つ中堅SIer。
新人研修を終えて配属されたのは、運用部隊。そこで帳票印刷のオペレータとしてシフト勤務を始めました。

初めての夜勤に体調を崩しながら大型プリンタと格闘し、3ヶ月ほどすると運用監視オペレーションの部隊に異動。
メインフレームにも少し触れましたが、当時は脱ホストコンピュータ、システムオープン化の波が来ていました。CSシステム、RedHat、PHP、Postgresql、JP1、Tivoliなど、知らない世界を少しずつ学んでいきました。

そして……。

気づけば、14年が経っていました。

14年。
生まれたばかりの赤ちゃんが、中学生になるほどの時間。

私は、同じ会社の、同じ部署で働き続けてきました。

もちろん、そこに様々な変化、成長がなかったわけではありません。
知識・経験を積み、人脈を築き、業務上期待される役割は少しづつ変わってゆきました。

結婚して、子どもが生まれ、共働きで育児をするために原則定時退社の働き方に切り替えて、必死に働いてきました。また、第3子が生まれたときには、男性社員で初となる半年間の育休も取得しました。

ただ、そういった働き方が上司の目には「仕事にフルコミットしていない」と映ったようです。

気づけば私は、いわゆる「出世コース」からは外れた道を歩んでいました。

一方で、入社してから14年間、残業・休出を厭わず会社に尽くしてきた同期たちはみな、管理職に昇格して活躍しています。それを横目で見ながら、私は時折ふと、こんなことを思うようになりました。

「このまま、この会社で、あと30年、働き続けるんだろうか……」

社会人になってこれまで過ごしてきた時間の倍以上の月日を、この会社で、この仕事を、同じように続けてゆくことが、自分にできるのだろうか。

なにか得体の知れない感情が、自分のなかで少しずつ大きくなっていくのを感じながらも、朝になればこれまで通りに出社して、変わらぬ日々を過ごしていました。

そんなある日、TwitterのTLにこんな記事が流れてきたのです。

「年収100万円の差」なんて意味がない。自分の名刺代わりになる仕事の方が大事――スタートトゥデイ 田端信太郎×サイボウズ 青野慶久

* * * * *

サイボウズが先進的な働き方を実践している企業であり、世に溢れる「”働き方改革”ならぬ”働かせ方改革”」に対して問題提起するような広告、ワークスタイルムービーの「大丈夫」、ワークスタイルアニメの「アリキリ」など、インパクトのあるアウトプットが注目を集めていることは知っていました。

TLに流れてきたのは、田端さんと青野さんの対談記事。初めは軽い気持ちで読み始めたものの、あっという間にぐいぐいと引き込まれ、なかば圧倒されながら、気づけば全4回の対談記事を夢中で読破していました。
(ちなみに私はこのときまだ、「オウンドメディア」という言葉の意味すら正確に理解していませんでした)

田端さんは揺るぎない自信に裏打ちされた、パワーみなぎる「強者」という印象。一方の青野さんはどこか泰然とした、例えるなら悟りを開いた修験者のような、なにかを超越した仙人のような、不思議な印象を抱きました。

記事のタイトル通り、対談の内容は非常に刺激的で、変わらない毎日のなかで思考停止に陥っていた私の心を強く揺さぶる力を持っていました。

「こんな面白い企画を考えて、作り上げた人たちがいるんだ。そして、これほどたくさんの参加者が、それぞれの問題意識を持って、このイベントに足を運んだのか……。ていうかこれ、サイボウズのオフィス? ジャングル? おかしいでしょ!(褒めてる)」

興奮醒めやらぬ私は、取り憑かれたように他の記事も読み漁りました。どれも文句なしで面白く、好奇心や知識欲の「かゆいところに手が届く」もの、「そうそう! そうなんだよ!」という頷きが止まらないもの、「この考え方と実践、めちゃくちゃカッコいいな」と憧憬と焦燥に包まれるもの、「へぇ~、こんな働き方をしている人たちがいるんだ」と思わず感嘆のため息を漏らしてしまうもの……。

尽きることを知らない豊富な記事量と、エッジの利いた、その内容の濃さ。
いくら読んでも、次から次へと、読みたい記事が出てくるのです。

「……なんやねん、サイボウズ式。すごすぎやろ!」

両手で頭を抱えて心のなかでそう叫びながら、
通勤の電車とバスのなかでサ式の記事を読み漁る日々が始まりました。

14年間、時折外へは出たものの、ずっと自社のなかだけで働いてきた私の目に、サ式の記事は……、そして、そこで紹介されている人たちの働き方はあまりに眩しく、どこか現実感のない別世界の出来事のようにも感じました。

読んでいる最中にふと自分のことを客観視して、
「これじゃあ自分はまるで、初めて明るい地上に顔を出したモグラだな」と、自嘲してしまうほどに。

それでも私は必死になってサ式の記事を追い、多様な価値観や働き方に関する情報を求め続けました。そしてサ式には今日も、また新たな記事がアップされてゆきます。

ちょうどその頃、私自身の働き方についても、大きな変化が訪れようとしていました。

入社以来14年間携わってきたチームの業務を、グループ会社にフルアウトソーシングするためのプロジェクトが進行中であり、残り3か月程度でそれを完遂できることが現実味を帯びてきたのです。

新人だった自分を育ててくれた、そしていつからか、自分自身の手で育て上げてきた現場と業務を、別の誰かに滞りなく手渡す……。

この1年間、私は、そのために奮闘してきました。

この仕事が終わったとき、私は、自分の居場所を失うことになるのです。

そして、新たな居場所を見出す必要に迫られているのだということを、
今さらながら、強く実感したのでした。

めまぐるしい毎日を送るなか、私の心のなかに、ある「ひとつの小さな決意」が芽吹いていました。

* * * * *

小さな決意。

それは本当に、ちょっとした気持ちの変化でした。

この先ずっと同じ会社で、今までと同じような毎日を過ごすことを、自分は良しとするのか?

答えは「ノー!」かと言うと、現時点でそこまで力強くは否定できない。けれども断じて「イエス」ではない。

そんな体たらくなので、
「現状に納得していないのなら、転職だ!」と、
すぐに行動に移すことまではできませんでした。

でも……、だったらせめて、今までとは違うことをしよう。

具体的には、

「会社の外に出てみる」
「会ってみたいと思う人に、会いに行ってみる」

まずはこれだけやってみよう、と自分に言い聞かせました。
そうすることで、新しいなにかが見えてくるかもしれないからです。

「まぁでも、そう上手くいくかも分からんから、『できる範囲で頑張ってみる』、ということで……」

なんて、言い訳めいた逃げ道を作っていたら、ある日、気になるイベント情報がTwitterのTLに流れてきました。

イクメン推進シンポジウム2018 | 厚生労働省

さらにこのイベント登壇者のなかに、

・駒崎 弘樹 氏(認定NPO法人フローレンス代表理事)
・小室 淑恵 氏((株)ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
・田中 俊之 氏(大正大学心理社会学部准教授 博士(社会学))

と、個人的に、気になっていた方々のお名前が並んでいたのです。

これは単なる偶然か、それとも必然なのか。

ひとつ言えることは、これまでの自分なら……、つまり、
「仕事と家事育児で十分。イベントに行く余力なんてあるわけない」と、自らの可能性を閉ざしていたような自分なら、TLに流れてきたこのイベント情報にここまで反応しなかったと思います。

「会ってみたいと思う人に、会いに行ってみる」

という、小さな決意をした今だからこそ、リアリティを持って、心に迫ってきたのです。

このイベントに行けば、尊敬するお三方のお話を、直接聴くことができる。
やっぱりこれは、自分にとって、千載一遇のチャンスなのかもしれない。

気づけば私はイベント参加の申し込みを済ませ、会社では、イベント開催日に午後半休を申請していました。

「たったそれだけのこと?」
と、笑われてしまうかもしれません。

しかし、日々波風を立てずに淡々と過ごすことに心の平穏を感じていた当時の私にとっては、自分でも驚いてしまうほど、積極的な行動だったのです。

* * * * *

システム運用監視という仕事柄、トラブルが起きると拘束されてしまい帰りづらくなることがままあるのですが、イベント当日、無事に午後半休を取り会場へ向かうことができました。

薄暗い会場に到着すると、イクメンプロジェクト推進委員会座長である、駒崎さんのお姿が!

我が家は共働きで子育てをしており、2歳の末っ子が体調を崩したときに備えて、フローレンスの病児保育を利用しています。
本当に何度、助けられたことか……。

そんなわけで、フローレンス代表の駒崎さんには、強い尊敬と、非常に大きな感謝の念を抱いていました。

イベントでは、

・イクメン企業アワード 2018 表彰式
・イクボスアワード 2018 表彰式

が順次進行し、受賞企業、受賞者の興味深い取り組みが紹介されました。

とくに、グランプリに輝いた株式会社サカタ製作所の取り組みはあらゆる角度から徹底されており、体力のある大企業でなくとも思想と施策次第で名実ともにイクメン企業になれることを体現されており、誇張なく素晴らしいものでした。

駒崎さんによる総評を感動しながら聴き終えると、10分間の休憩に入りました。どうやら駒崎さんは、続くパネルディスカッションには登壇されず、途中退席されるようです。

目で追っていると、出口付近で何人もの人が駒崎さんと名刺交換をしていました。それを見る私の心拍数が高まります。座ったまま全身を硬直させ、悩むこと数十秒。

私は名刺入れを掴んで、席を立ちました。

あと5秒決断が遅れていたら、私はサイボウズ式第2編集部に入ることもなく、今このnoteを書いていることも、なかったかもしれません。

とはいえ私はSIerのヒラ社員です。記者でもなければ編集者でもない。もちろん保育関係者でもありません。
差し出した私の名刺を見た駒崎さんも、ちょっと不思議そうな顔をしていました。(私にはそう見えた、というだけかもしれませんが!)

私は必死に、フローレンスの病児保育を利用させてもらっていること、そして、こどもレスキュー隊員さんに何度も助けて頂いたこと、感謝の気持ちを直接伝えたかったことなどを、早口でまくし立てました。
私なんかのために、多忙な駒崎さんが貴重な時間を割いてくれていることが、なんだか申し訳なかったのです。(どんだけ卑屈なんだ……)

感謝の気持ちを伝えると、駒崎さんは破顔一笑、
「そう言ってもらえるのが一番嬉しくて、毎日なんとかやってます」
と、本当に嬉しそうに笑うのです。

なんだこの人、めちゃくちゃカッコいいな。

そして最後に駒崎さんは、
「お互い、がんばりましょう!」
と力強く握手してくれたのです。

駒崎さんの背中を見送りながら、
「これって漫画とかなら、『憧れの先輩と会話できてポ〜ってなってる』、アレやな」
なんて考えながら、すとんと椅子に座り込んで放心したのち深呼吸を繰り返して、なんとか気持ちを落ち着かせようと努めました。

続くパネルディスカッションでは、パネリストとして小室さんと田中先生、コーディネーターとして日経DUAL創刊編集長の羽生さんが登場しました。
こちらも大変興味深く、なにより、尊敬する人たちがこうして目の前で喋っている、という事実だけでもテンションが上がってしまいました。

やっぱり、第一線で活躍している人たちは、纏っている雰囲気が違う。発する言葉ひとつひとつに、経験と自信に裏打ちされた確かな重みがある……。

帰りの電車のなかで余韻に浸りながら、私は自分の胸の奥に、小さな火種のような……、熱量を持ったなにかが生まれていることに気づきました。

* * * * *

イクメン推進シンポジウムに参加してからも、代わり映えのしない毎日は続いてゆきます。

ただ、これまで通り空き時間を見つけては、サイボウズ式の記事を読み続けていました。(本当に、凄まじい記事数なのです)

あるとき、サイボウズの青野社長が本を出されていることを知りました。

『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』
というその本を購入した私は、時間を忘れてページをめくり、一気に読破しました。

読後感を一言で表現するなら、まさに「恋に落ちた」がしっくりくるような状態でした。
立て続けに、青野さんの
『チームのことだけ、考えた。』
という本も購入。こちらもノンストップで読破しました。

サイボウズ創業期のエピソードから、経営が迷走し離職率が28%をマークしたこと。そして、そこからどうやって生まれ変わったのか。
「チームワークあふれる社会を創る」というビジョンを掲げ、それに共感する人たちが集まり、次々と新しい試みを続けていること……。

青野さんが語る言葉の端々からは、実体験に裏打ちされた唯一無二の哲学が、静かに、しかし圧倒的な迫力を持って立ち昇ってきます。

カッコいい。カッコよすぎる。
サイボウズはこうやって生まれ、成長し、この国の最先端を走りながら、今このときも劇的な変化を続けているのか。

ここまで来ると、もう、認めないわけにはいきません。

「……サイボウズで働きたい」

明確なビジョン、ミッションと、それを実現するための強力なプロダクト。そして「チームワークあふれる社会を創る」ために必要不可欠な「風土」と「制度」を築くための研修事業。

企業理念と事業内容という歯車がぴったりフィットして噛み合い、試行錯誤を繰り返しながらも、どんどん前進している。
控え目に言っても、COOLすぎる。

まさに、恋に落ちた思春期の若者のごとく、
「サイボウズのことを、もっと知りたい……」
と考え始めた私は、コーポレートWebサイトを隅々まで読み込み、採用ページにも注目するようになりました。

ちょうどその頃、サイトのトップページには、とあるイベントの開催通知が大きく表示されていました。

『CybozuDays 2018』

「楽しいは正義」を掲げるサイボウズ総合イベントであり、東京・大阪・福岡・松山の4都市で開催。
そのうち東京での開催が間近に迫っていたのです。

イベントは2日間にわたり、

 Day1 Product Academy
 Day2 Business Conference

に分かれています。

多彩なセッション、魅力的なゲスト。
圧倒されながらもプログラムとにらめっこをして悩み抜き、私はDay2に参加することを決めました。

決めればあとは一直線。すぐに参加の応募を済ませ、会社に有休取得申請を提出しました。

この頃、会社では業務上のトラブルが続いており、連日の障害報告、原因分析、再発防止対応などが続き、精神的にも消耗していました。
私は約1ヶ月後に控えた『CybozuDays 2018』に参加することだけを心の拠り所、生き甲斐にして、日々をなんとか乗り切ってゆきました。

そして、ついに訪れた2018年11月8日。
私は期待に胸を膨らませながら京葉線に乗り、幕張メッセを目指しました。

会場に辿り着いて入場列に並ぼうとすると、なんだか見知った顔の人が、隣を通り過ぎたような……。その人に気づいたみんなが、笑顔で挨拶したり、会話したりしています。少し離れたところから、そーっと観察してみると、なんとその人は、サイボウズ式の初代編集長、大槻 幸夫さんだったのです。

……すごい、本物だ!

サイボウズ式に”痺れている”自分にとって、それを作り上げた大槻さんは、それこそ芸能人のようなものです。遠巻きに眺めながら、
「ひょっとすると自分は、すごい場所に来てしまったのかもしれない……」
と実感していました。

けれどもそれは、ほんの序の口だったのです。

* * * * *

会場に一歩入るとそこは……、巨大なサーカスのテントでした。
あれ……? ここ、IT企業のイベント会場ですよね? 場所、間違えた?

いやいや、合っています。そこかしこに、『CybozuDays 2018』のロゴが。エントランスには大人の背丈の何倍もあろうかという巨大なボードがあり、動物たちのキャラクターが描かれています。照明を控えめに落とした場内には、巨大な樹や、月面を模したような巨大な風船のオブジェ。会場はサーカステントのような円形で、メインロードには紫色の絨毯が敷かれています。

縁日の屋台のようなミニゲームができるお楽しみコーナー、スタンプラリー、キッズコーナーまである!

子連れ歓迎で、実際にエルゴで赤ちゃんを抱っこしている人や、子ども連れでベビーカーを押しているパパもいます。
こんなITイベントがあったなんて! ワクワクが止まりません。

スタッフの方に誘導され、メインステージの座席に座ると、やがて音楽と共にオープニングムービーが始まりました。

「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう?」
「それはね、働かせ方革命になっているから」

……なんだこれは! 開始直後からもう、楽しくてしょうがないぞ!

続く圧巻のステージパフォーマンスを経て、ついに青野さんが登場。基調講演が始まりました。
おぉ……、動いて喋っている。本物の青野さんだ……。

青野さんの講演を惚れ惚れと聴いている、続いて幸福学研究の日本第一人者、前野教授が登壇。幸福学についての対談は非常に興味深く、必死でメモを取りました。
そして、タレントの眞鍋かをりさんも登場。私自身、子育て中ということもあり、眞鍋さんの育児や働き方のエピソードはどれも心底共感できました。

基調講演が終わっても、会場に複数あるステージでは、魅力的なセッションが次々と開催されてゆきます。
私が事前に悩み抜いて選んだのは、

1.『会社説明会 in Cybozu Days』
2.『「楽しさ重視」「超自由」なのにヒットを生み出す、サイボウズ式編集部のチームワーク術』
3.『トークセッション:働き方改革がうまくいかないただ一つの理由』

の3つ。

『会社説明会 in Cybozu Days』では、
実際にサイボウズに中途採用で入った人たちが登壇して、職場の雰囲気や働き方などを紹介されていました。サイボウズで働くことにますます憧れを持ったことは、言うまでもありません。

『「楽しさ重視」「超自由」なのにヒットを生み出す、サイボウズ式編集部のチームワーク術』には、
私を単調な日常から救い出し、ここまで連れてきてくれたと言っても過言ではないサイボウズ式、それを作っている人たちの話が生で聞ける! と、前のめりで参加しました。
ステージではあの藤村編集長がチーム運営の秘訣を語り(えらいイイ声やな……)、新潟を拠点に複業で働く竹内さんが、具体的エピソードを交えて、リモートワークの実体験を紹介してくれました。
繰り返しになりますが、自分にとってサイボウズ式の「中の人」というのは、芸能人のようなもの。尊敬の眼差しで壇上を見ていましたし、「周りの聴衆もみな、同じようにメディア運営やマーケティングに詳しい人たちに違いない……」と勝手に思い込んでいました。

すると私の頭のなかでは、
「自分のような運用エンジニアがサイボウズ式のセッションに参加するなんて、ひょっとすると、とんでもなく場違いなんじゃないか?」
という、わけのわからない自意識過剰が湧き上がります。

とはいえセッションは非常に興味深く、あっという間に終了時間に。
サイボウズ式のことがますます好きになりました。

『トークセッション:働き方改革がうまくいかないただ一つの理由』では、
副社長の山田さんとチームワーク総研の和田さんが、働き方改革について語られていました。まるで漫才かコントのような、軽妙な会話の応酬。ぐいぐい引き込まれます。もちろん内容も面白く、サイボウズの柔軟な働き方を支えるツール、風土、制度についての理解が深まりました。

そして夕方のセッションは、
サイボウズ青野社長と、南海キャンディーズ山里亮太氏の特別対談。

まさに今回のイベントのテーマである「楽しいは正義」を体現するかのような、笑いと興奮に溢れたステージでした。ライブ感に満ちたこの対談の楽しさは、正直なところ、文章で伝えることが困難です。
事前に『天才はあきらめた』を読んでいたのですが……、山ちゃんは間違いなく、不断の努力により、天才と呼ばれるべき人だと思います……。

『CybozuDays 2018』が終わって会場を出て、帰りの京葉線に揺られながら、私は決意を新たにしていました。
「完全に熱に浮かされていた」と、言ってもいいかもしれません。

そしてそこから1週間ほどかけて、履歴書や職務経歴書を作り、そのまま勢いに任せて、サイボウズのキャリア採用にエントリーしてしまったのです。

ちなみに希望職種は、
・コーポレートブランディング担当
・テクニカルスペシャリスト
のふたつ。

実際のエントリー画面まで進むと、コーポレートブランディング担当の応募には課題提出が義務付けられていることが分かり、必死で企画を考えて書き上げ、それを添付して提出しました。

結果を待つ間、平静を装いつつ平凡な毎日を過ごしながらも、気が気ではありませんでした。

……そして10日後、ついに選考結果のメールが届いたのです。

* * * * *

「ご提出頂きました書類をもとに厳正なる選考をさせていただいた結果、誠に残念ではございますが、今回はご希望に添えない結果となりました」

結果は、書類選考での落選。
当然といえば当然の結果だったのかもしれません。
ただ、心のどこかに「ひょっとしたら……」という、楽天的な考えがあったことは事実です。

しかし、落選通知のメールはそんな私の甘ったれた想いを完膚なきまでに打ち砕いてくれました。

そこからしばらくは、意気消沈の日々。憧憬や期待が大きかったぶん、落選による反動は想像以上に大きなものでした。

ぐらつく精神状態を必死で保ち、なんとかこれまでと変わらない日常を送ろうとする私を見かねたのでしょうか。ツマが私の背中をぽんと叩き、
「……ま、失恋みたいなもんやから」
と、なぐさめてくれました。

突如として「スイッチが入り」、イベントに参加した勢いでキャリア採用に応募し、落選する。

これは、社会人になってから14年間、ひとつの会社でひとつの仕事をしてきた私に突然訪れた、「恋」だったのか。

……たしかにそれならば、納得がいくかもしれない。
最初に、一瞬で感情を撃ち抜かれたような衝撃も。
ふとした瞬間に思い浮かべてしまう、淡い憧れのような気持ちも。
抱え切れなくなった想いを、自分らしくもない行動に転化することも。
そして、願いが叶わないと分かったときに味わう、暗い奈落の底へと真っ逆さまに落ちるような絶望も。

ようやく私は自分のことを、客観視することができました。
「そうか……、失恋したのか。だからこんなに、苦しいのか……」

ツマはいつでもこうやって、本質を捉えた短い言葉で、自らを見失っている私の目を開き、現実へと引き戻してくれるのです。

恋に破れたことを自覚し、少しばかり冷静になった私が、次に取った行動。
それは、
「転職エージェントに登録する」
ということでした。

……いやいや、順番がおかしくない?

というご指摘はごもっともです。

私もそう思います。
けれども「恋に落ちて」いる最中は本当に、そんなことに気づきもしなかったのです。

サイボウズのキャリア採用では、「再応募は過去1年以内に応募している場合は無効」とのルールが明記されています。この時点で、1年後の再チャレンジについて明確な決意やイメージがあったわけではありません。

しかし、今の会社で今の仕事を続けるという未来が受け入れ難いものである以上、転職という具体的な目標に向けて行動を続けるほかありません。そして、転職エージェントに相談する以上、職務経歴書を見直すことは必要不可欠です。

私は今さらながら職務経歴書の書き方を勉強し、改めて、ゼロからそれを書き上げていきました。そして、ようやく出来上がったものを見返して、ため息とともに実感したのです。

「……そりゃ、落ちるよな」

湧き上がった感情に翻弄され、自己を冷静に客観視して分析することすらできず、勢いだけで書き上げた応募書類が、選考を通過するはずがない。
私は、すさまじい羞恥に襲われました。

さらに追い討ちをかけるように、訪れた転職エージェントでは、自身の14年間のキャリアについて、
「チームリーダ、管理業務の経験があることは武器になるが、職務経験の幅が極めて狭いことについては、中途市場において不利に働く可能性がある」
との指摘を受けました。

仮に1年後の再挑戦を目標に据えるとしても、このまま日々を漫然と過ごすだけでは、ただ年齢を重ねるだけとなり、結果が変わるとは思えない。
今の会社に残るとしても、「新しいキャリアを広げるための具体的なアクションを考えて実行する必要がある」ことが分かりました。

一方で、新たな転職希望先についても情報収集を続けてみましたが、どれもピンときませんでした。
サイボウズのようにビジョンやミッションに共感でき、それを支えるプロダクトやサービスに魅力を感じるような企業や団体を、見つけることができなかったのです。

途方に暮れながら、私は同時に、漠然とした不安を感じていました。

1年後の再挑戦の日が訪れるまで、今の会社で今の働き方を続けて、自分は果たして、自我を保っていられるのだろうか。

出口の見えない、苦しい日々でした。

塞がり切ってもいない「失恋」の傷が開いてしまうことが怖くて、あんなに好きだったサイボウズ式を読むことも、止めてしまいました。

けれどもしばらくすると、「新しい記事がアップされていないかな」と気になって、読みたくなるのです。
それが辛くて、ついには、端末のブックマークからサ式を削除してしまいました。

忘れたいのに、忘れられない。
挫折を自分のなかできちんと消化して立ち上がり、新しい一歩を踏み出さなくてはならない。
気持ちばかりが焦り、空回りするような、内省と自嘲の繰り返しでした。

そんなある日、ひとつのニュースが目に飛び込んできました。
なんと、サイボウズ式がリニューアルするというのです。
いくら忘れようと努めても、SNSをやっている限り、そうした情報はインプットされてきます。

私は一種の諦めにも似た不思議な感覚を抱きながら、「せっかくだし、少しだけ見てみよう」という気持ちで、新しいサ式のサイトを開きました。

それは非常に洗練されており、デザインやレイアウト、読みたい記事へのアクセシビリティなど、以前に比べてあらゆる面で、より魅力的なサイトへと生まれ変わっていました。

「……やっぱり、すごいな」

という感嘆のため息とともに、
「これ以上見ていても辛くなるだけだから、そろそろ見るのをやめよう」
と、サイトを下までスクロールして閉じようとしたとき、それが目に飛び込んできたのです。

#サイボウズ式Meetup vol.12 大忘年会2018

* * * * *

どういう思考経路でそうなったのか、正確には思い出せません。あとからいくら考察して説明を付与しても、それは「もっともらしい理由」を探して割り当てているに過ぎない、と思うからです。

なにはともあれ、私は気づけば、『サイボウズ式Meetup vol.12 大忘年会2018』への参加申し込みをしていました。

開催日が近づくにつれて、期待と不安は膨らむばかり。
ただ、自らの行動を俯瞰して見たとき、こんな考えが頭をよぎります。

『フラれて失恋したのに諦め切れずに、付きまとうのを止めない』

……これって、もしかして。
いや、もしかしなくても……。

「ストーカーっぽくない?」
(あとでこの話をツマにしたときに、爆笑されてしまいました)

たしかにこれ、率直に言ってかなりキモいのでは?
なんていう自意識過剰が止まりません。

しかし、待て。落ち着け。37歳男の自意識に付き合ってくれるほど世間は暇じゃない。堂々としろ。胸を張って参加すればいいんだ。
という必死の自己弁護も虚しく、あっという間にやってきたMeetup当日。

緊張で変な汗をかきながら、日本橋にある憧れのサイボウズオフィスを訪れました。

エントランスを抜け、目に飛び込んできたのは、キリンやヒツジといった動物たち。天井には大樹の枝があり、そこには緑の葉が茂り、林檎のような赤い果実が実っています。

……なんだここは! これ、オフィスなの? 場所、間違えてないよね?
と、『CybozuDays 2018』のときと同じような一人芝居を経て、会場のBarへ向かいました。(オフィスにBar? どういうこと? ……あ、こっちには『アリキリ』のぬいぐるみがある! 可愛い!)

Barの扉をくぐると、そこは洗練された洒脱な内装の部屋でした。すでにたくさんの人たちが談笑しており、和やかでありつつ、静かな熱気に包まれています。

なんて思ったのも束の間、ようやく現実を飲み込めました。
部屋中に、「サ式の中の人」がいっぱいいるのです! (当たり前だ)

……あ、サウナ編集長! 『CybozuDays 2018』でも登壇していた竹内さん! あっちは明石さん! 森さん!

と、ひとしきりテンションが上がったところで、Meetupの幕が開きました。

・サイボウズ式編集部の振り返り
・ライトニングトークによる第2編集部の振り返り

に始まり、
Tシャツプレゼントゲーム大会(普段、クジ運は最悪ですが、今回は当たりました。信じられない……。ありがとうございます!)
があったり、編集長の藤村さんが来年の展望を話されたり、どこまでも濃い内容でした。

編集部、第2編集部の人たちの中には、インターン生がいたり、リモートで参加されている方がいたり。
参加者側にも、就活中の大学生がいたり、いろいろな業種の方がいたり。

場を盛り上げるのが上手な人、裏方でフォローする人、参加者に気を配って動き回る人。いろいろなタイプの人がいて、それぞれが、それぞれの温度感で、このコミュニティに馴染んでいる。
一言で表すなら、とにかく多様性に満ちているのです。

すごい、すごすぎる……。

こんなにも生き生きと、楽しそうにしている人たちを見たのは、いったい、いつぶりだろう。
14年間、ずっと自社内にこもってシステム運用監視の仕事をしてきたモグラにとっては、この空間と時間、全てが眩しすぎるものでした。

強い刺激を受けて、自分のなかでなにかが弾けるのが分かりました。
同じ空間にいることで自然と、自分もワクワクしてくるのです。

そして、懇親会の時間が始まりました。
普段交流のない業種の方々と話したり、具体的なエピソードを聞くことはとても刺激的で、勉強になります。
周りでも、いろいろな人たちが互いに交流し、どんどん新しい繋がりが生まれてゆくのが分かりました。

……これが、Meetupなのか!

懇親会の時間においては、「パックマンルール」が適用されました。
テーブルを囲む際、上から見るとパックマンの形になるように、必ずひとつは席を空けておき、他の人が参加しやすくするのだそう。
これが、非常に助かりました。
初めて参加するコミュニティですから、当然知り合いはひとりもいません。
このパックマンルールのおかげで、いろいろなテーブルを渡り歩き、たくさんの人と交流することができました。

そして、気づけば私は、第2編集部の寺田さん、編集部の森さん、そして編集長の藤村さんといった方々に、

「サイボウズ式のファンであること」
「第2編集部に参加して、一緒に何かやってみたいこと」

を、必死で伝えていました。

これがきっかけとなり、未だに信じられないことですが……、

私は、サイボウズ式第2編集部に参加させて頂くことになったのです。

最初は、正直実感が湧きませんでした。
ひょっとして夢かな? なにかのドッキリかな?
なんて思ってしまうほど、現実感がありませんでした。

「会社の外に出てみる」
「会ってみたいと思う人に、会いに行ってみる」

という、「小さな決意」をしてから、イベントに参加し、サイボウズやサイボウズ式に「恋」をして、想いに突き動かされるようにキャリア採用に応募して落選、失恋を味わう。
それでも諦め切れず、「どんな形でもいいから関わってみたい」という想いからMeetupに勇気を出して参加するまで、ほんの数ヶ月間の出来事でした。

こうして、社会人歴14年目、転職経験なしの37歳会社員は、これまで体験したことのない、新しいコミュニティに飛び込んだのでした。

(2019年は「飛び込んだあと」の体験談を中心に、noteに書いていきたいと思います!)

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