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LIFE TUNING=ヨガ×CXクリエイティブ。コミュニティを強くする「翻訳」の力

Vol.4となる今回のnoteは、ヨガを起点とするトータル・ウエルネス・プラットフォーム「LIFE TUNING DAYS(ライフチューニングデイズ)」のサクセスストーリーを紹介します。

コロナ禍で、ローンチイベント中止というスタートを切ることになったLIFE TUNING DAYSは、いかに協力者を巻き込み活発なコミュニティを育んできたのでしょう。 

今回話を聞く、LIFE TUNING DAYSでコピーライティングを担う上遠野(かとおの)は、「コミュニティへの共感は『翻訳』によって引き出せる」と語ります。  

ここでの翻訳とは一体どのような意味を持つのか。コミュニティ・ドリブン・マーケティングの事例としても興味深い、LIFE TUNING DAYSの歩みを振り返ります。  

ヨガを起点としたトータル・ウエルネス・プラットフォーム  

— まずはLIFE TUNING DAYSが生まれたいきさつを教えてください。  

上遠野:LIFE TUNING DAYSは、アパレル発のスタートアップ企業B-connect社と電通の新規事業として、共同で制作委員会を作り運営している、ヨガをはじめとするトータルウエルネスプラットフォームです。   

百貨店でリアルな店舗をもちヨガウェアの販売やウエルネス関連のイベント・展示会を開催されているB-connect社の高橋社長と打ち合わせを重ね、「日本人の平均寿命を0.5歳伸ばしたい」というビジョンから、新たなデジタルプラットフォームの立ち上げを推進しました。プラットフォームでは、コミュニティを中心に、デジタル・リアルでのイベント開催や、EC運営・ウエルネス情報の発信などを行っています。 

なおこの事業は、企画制作費をB-connect社からいただく「受注型」だけではなく、一緒に事業を成長させ利益をシェアする「レベニューシェア型」という、電通としても新しいモデルを取り入れながらご支援しています。 

— 知見をこれから必要とする生まれたてのスタートアップに、電通が提供できる価値はたくさんあるでしょうね。LIFE TUNING DAYS設立時、具体的にはどのような話し合いが行われたのでしょうか。  

上遠野:先ほども触れた、高橋社長が掲げる「平均寿命を0.5歳伸ばしたい」というビジョン。一見、たった半年かと思うかもしれません。でも、ヨガをする人たちだけのマーケットでモノを売るだけでは達成できない。発想の転換が必要でした。  

そこで、約5000年前からつづくヨガの価値と現代人が置かれている状況をフラットに捉え直しました。ヨガを、心と体へのトレーニングから、「LIFE TUNING(生き方を整える)」という普遍的なテーマへと「翻訳」したんです。

その結果、ヨガ以外の領域からもLIFE TUNING DAYSを自分と関係のあるテーマだと感じた人が、コミュニティに参加して、協力してくれるようになりました。

インフルエンサーの前向きな協力は思想への共感から生まれる 


— まさにその「翻訳」こそCXクリエイティブなんですね。参加者も含めた大勢の人々が共感してくれるテーマをきちんと提示できるのは、電通クリエイターならではの強みです。
  

上遠野:そうだと思います。LIFE TUNING DAYSを通じて、思想のつながりはお金のつながりよりも強いということを身にしみて感じます。正直、この事業は実験的な取り組みの側面が強く、予算がたくさんあるわけではないので、コミュニティ参加者が共感を軸に前向きに協力してくれるのは、活動を続けるためにとても大切です。  

LIFE TUNING DAYSでは、いつも根幹にこの思想があります。イベントではインフルエンサーの方々にも出演や協力をいただいていますが、LIFE TUNINGという考え方に心から共感してくれています。  

例えば、著名な総合アンバサダーや各ジャンルのリーダーの方々も、LIFE TUNINGの思想を説明したら、「まさに私がやりたかったこと。ぜひ協力したい」とおっしゃってくださいました。  

他にも、エピソードがあります。LIFE TUNING DAYSのローンチイベントが2020年2月に予定されていたのですが、コロナ禍で中止になってしまったとき。普通でしたら、参加予定のタレントさんは「あ、そうですか。じゃあ帰ります」となりますよね。  

ところが、福田萌子さんを中心とした出演者の方々から、今やれることをやろうよという声が自然に上がってきて、翌月にインスタライブ配信をすることができました。  

単なる出演者ではなく、一人ひとりがコミュニティのメンバーとして主体的に協力してくれる。CXクリエイティブが果たせる役割は、本当に大きいと実感しています。  

— 近年では、インフルエンサー・マーケティングという言葉がよく使われます。LIFE TUNING DAYSのようにインフルエンサーをもっと巻き込みたいと考えている企業は多いのではないでしょうか。  

上遠野:そうですね。LIFE TUNING DAYSコミュニティでは、ADVOCATE(提唱者)と呼んでいる「マイクロ・インフルエンサー」のヨガ講師4名をとても大切にしています。    

彼女らは、それぞれが自分たちのファンコミュニティを持ち、影響力があるだけではなく、いち生活者として物事を考える視点を持っています。LIFE TUNING DAYSコミュニティは彼女たちの協力があるからこそ成立しています。  

とはいえ、私たちが特別なことをしたわけではありません。彼女たちの自己実現が、LIFE TUNINGの思想と自然な形で共鳴したんです。ADVOCATEのみなさんは、毎回イベントに出席してくれるだけではなく、運営を交えたミーティングにも顔を出してくれています。

LIFE TUNING DAYSを事例として紹介するとき、コミュニティ・ドリブン・マーケティングという表現で説明をすることもあります。コミュニティの核となる思想をいかに見出し、マネジメントすることができるか。それがCXクリエイティブのチャレンジになると思います。  

イベント体験をモノの売り上げにつなげる難しさ

 
— LIFE TUNING DAYSの取り組みはCXの事例として、とても成功しているように見えます。ECサイトの売り上げも順調に伸びているのでしょうか。  

上遠野:正直なところ、ECでの成果に関しては道半ばです。   

その要因はいろいろあるのですが、個人的には、巨大なECプラットフォームが多く存在する中で、他ではなくLIFE TUNING DAYSでモノを購入する理由がまだ薄いことや、ヨガ体験(コト)を期待してコミュニティに参加したユーザーたちは、モノを購入するというモードに転換しにくいこと、そもそも扱っている商材がヨガグッズや中〜高価格ウエルネス商品のため、購入頻度が低いことなどは大きいかなと思います。ECサイトのUI/UXも、限られたリソースの中で試行錯誤を続けています。 

過去には、EC誘引のために、ヨガ講師の方々にライブ配信で商品を紹介してもらうという試みも行いました。ですが、彼女たちはモノ売りのプロではないので、ユーザーからの共感は得られてもなかなか売り上げまでは結びつきづらい。また、あまりにも頻繁にプロモーションを行ってしまうと、彼女たちへの信頼感を損ねるリスクもあると思いました。 

— なるほど、確かに難しい問題ですね……。モノを売る以外の選択肢も検討していますか。  

上遠野:コミュニティコンテンツの一部を有料化するなどの案も出ました。しかしそれでは、ヨガをもっと広めたいというLIFE TUNING DAYSの方向性とは矛盾します。 

現時点では、アイテム・ナビゲーターと呼んでいるモノを販売するプロフェッショナルの方々に販売の実演を行ってもらい、インフルエンサーやヨガ講師がそれに対して自分の実感に基づきコメントをするという策をとっており、効果は少しずつ現れてきています。 

また同時に、LIFE TUNING DAYSのサクセスストーリーの知見を体系化・抽象化して、他のプロジェクトへと展開する可能性も模索しています。      

ヨガには幸いにも、LIFE TUNINGという普遍的な思想をつくる源となる素晴らしい哲学がありましたが、これが他の業界や商材になったとき、同じようにみんなが共感する思想へ昇華できるテーマがあるかどうかは、まだ未知数です。 

優れた思想の提示がコミュニティ作りを成功させる 


— コミュニティ・ドリブン・マーケティングにおいて、CXクリエイティブが果たすべき役割とは何でしょうか。
  

上遠野:一つひとつの活動を丁寧に「翻訳」して意味を響かせることです。LIFE TUNING DAYSも、みんなでヨガをするだけのコミュニティだったら、参加者に共感してもらい、さらに協力までしてもらえることはなかったと思います。

例えば同じイベントや物販でも、「LIFE TUNING」というテーマに翻訳して意味を与えることで、コミュニティに命を宿すことができるのではないでしょうか。  

インフルエンサーあるいはスポンサーの方々に協力を依頼するときも、通常でしたらイベント概要を簡潔にまとめたセールスシートを作成します。ところがLIFE TUNING DAYSでは、LIFE TUNINGという思想への共感こそがプロジェクトの要なので、コピーライターが書いたステートメントをあえてそのままセールスシートに入れ込んで、まずはその意味を感覚的に訴えかけるようにしています。  

— LIFE TUNING DAYSは、CXクリエイティブの可能性を示すとてもいい例だと思います。今後LIFE TUNING DAYSで実現したいことはありますか。  

上遠野:CXを考える上で、ユーザーやコミュニティメンバーたちといかに持続的な関係性を作っていくかは非常に大切です。その点、ヨガは持続を是とする普遍的なコンテンツということもあり、相性はいいと思います。 

CXクリエイティブによる「翻訳」でコミュニティに共感者を集めるということはできました。それでも、コミュニティが進む先の道筋、ストーリーを描き続けることはクリエイターとしての責務です。  

例えば今描いている夢は、渋谷を拠点に「1万人ヨガ」を開催することです。老若男女問わず気軽に楽しめるヨガの良さを、もっと多くの人に広めていきたいと思います。  

なんとなく生きづらさを感じている人も多い今の世の中で、LIFE TUNINGという考え方を浸透させて、みなさんが少しでも本来の自分らしさを取り戻せるような体験をこれからも作っていきたいと思います。  

 *   *   *

Vol.4のCX Creative Studio noteでは「LIFE TUNING DAYS」のサクセスストーリーについて、話を聞きました。LIFE TUNING DAYSの事例は「翻訳」がキーワード。もちろん、翻訳と一口に言っても、誰もが真似できることではありません。 

LIFE TUNING DAYSでは、全ファネル一気通貫で思想があり、イベントへの参加を入り口に、コミュニティへの参加、ファンになるまでのジャーニーがとてもなめらかです。現代的なCXクリエイティブの事例として参考にできることは多いでしょう。  

プロフィール  

電通デジタル:上遠野 茜(かとおの・あかね) 

電通入社後クリエーティブ局でコピーライター/CMプランナーとして6年経験を積み、その後営業局にて2年間、営業兼プランナーとしてコーポレートコミュニケーション等に従事。2018年から再びクリエーティブ局、CXCC局を経て、現在電通デジタルACRC出向。コピーライティングを軸に、コンセプト作り、フルファネルのクリエイティブ、D2Cや新規事業のサポートなどなど何でも挑戦中。 

※所属・役職は取材当時のものです。


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