電通グループのクリエーターが「CX Creative Studio」に集結。電通グループがCXにはクリエイティブが重要だと考える理由とは。
「CX Creative Studio」はCX領域(※)における電通グループのクリエイター集団です。
CX Creative Studio note編集部では、世の中の関心が高まっているCX(カスタマー・エクスペリエンス/顧客体験)に関する最新の知見と事例を、第一線で活躍するクリエイター一人ひとりの生の声でお届けしていきます。
2021年1月、電通はCXクリエーティブ・センター(CXCC)を設立し、同年7月には電通グループのCX戦略を担当する旧電通アイソバーが電通デジタルと合併するなど、電通グループは、これまでもCX領域の強化を進めてきました。
そして今回、電通グループのさまざまな部署やチームに点在していた500人規模の実力派クリエイターが「CX Creative Studio」で一同に集結。第1回のnoteでは、そのリーダーである並河と田中がCX Creative Studioの設立の背景と思い、今後の展望についてお話しします。
クライアントの価値をより高めるCX戦略をサポートすべくCX Creative Studioを設立
田中:出発点として、CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは具体的にどのようなことを指すのか、CX Creative Studioのスタンスについてお話しできればと思います。
並河:CX(カスタマー・エクスペリエンス)にはさまざまな定義がありますが、CXがカバーする範囲を私たちは広く捉えています。広告での認知から製品・サービスの購買、その後のリレーションシップまでというように、あらゆる顧客体験が私たちの考えるCXです。
電通グループには、クライアントのCXを形にする、実力のあるクリエイターが多数います。しかし彼らは別々の組織・部署にバラバラに所属しているため、どんなクリエイターがいるのか、どんなナレッジがあるのかが集約されていませんでした。それもあって、彼らができることについても、十分に発信されていない状況でもありました。
今回、CX Creative Studioの設立を決めたのは、組織・部署に縛られない横断的なCXチームにクリエイターを集める(※)ことで、クライアントに、より優れたCX戦略とそのクリエイティブを提供しようと考えたからです。
CXに大切なのはテクノロジーと人間らしさ
並河:電通グループがCX体制を強化する背景には、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が一巡して、世の中のトレンドがDXを基盤としたCXの向上に軸足を移していることがあります。
田中:DXによって論理と数値などのエビデンスで追い込める事柄も多くなりました。CXが求められるのは、それ以上の何かが必要なのだと企業が気づき始めているところにあります。CX Creative Studioでは、以下のステートメントで自分たちのスタンスを表明しています。
田中:Customer(顧客)とはもちろん、Human(人間)です。テクノロジーが目まぐるしく変化していると、テクノロジーばかりに気をとられがちです。
けれどもCX Creative Studioが提案するのは、テクノロジーを活用しつつも「人間らしい肌触り」を感じさせる世界観です。
CX Creative Studioのロゴには、「C(=Customer)である人間を、CX Creative Studioの発想の全ての中心に。そして、X(エクスペリエンス)は、Cと寄り添い、一体になっていくもの」という意思が込められています。CX Creative Studioのメンバーでもある電通アートディレクターの岡村尚美さんがこのロゴをデザインしました。CX Creative Studioの目指している世界観を色濃く表現しています。
人間らしさに満ちたCXを実現するのは、CX Creative Studioに所属する500人規模のクリエイター一人ひとりのクリエイティビティです。テクノロジーやエビデンスだけでは追い込めない大切な部分が必ずあります。それをクリエイティビティが担い、human CXを世の中に波及させていく動力となります。
シームレスなCXを支援する実力派クリエイターの存在
並河:CXの重要性に気づいた企業も変化しています。
今までは、広告・広報、デジタルマーケティング、コールセンター、セールスなど顧客との接点(タッチポイント)を持つ部署が別々に分かれているのが一般的でした。しかし顧客は各タッチポイントで一貫性のある体験を求めるようになっています。
そこで企業はそれらの部署をひとつのCXチームに統合して、顧客にシームレスな体験を提供することを意識し始めています。
田中:企業がそのような体験を顧客に提供できるようにするために、CX Creative Studioのクリエイターは大きく、3つの強みを持っていると言えます。
1. 電通:広告で培ったブランドデザイン力
2. 電通デジタル:データ起点のクリエイティブ
3. 旧電通アイソバー(※):UI/UXの設計およびCX戦略
コミュニケーションのスタートからファンになってもらう一連のプロセス、そこにグラデーションのように専門のクリエイターが存在します。クライアントのCXに関するあらゆる課題に柔軟に対応できるメンバーによってひとつのチームが形成されています。このようなチームができたのは、日本で初めてではないでしょうか。
クリエイター一人ひとりが多彩な個性や強みを持つ
並河:CX Creative Studioで成し遂げたいチャレンジはいくつかあります。そのうちのひとつがCXの世界におけるスタークリエイターの輩出です。
広告の世界でのスタークリエイターはわかりやすいですよね。アワードもたくさんありますし、表現もTVCMのように華やかでアピールしやすい。電通グループでも、これまで数々のスタークリエイターが広告領域で誕生しています。
CXのスタークリエイターをCX Creative Studioのチームから生み出したい。クライアントから「あの人にお願いしたい」と指名がくるくらい、メンバーの顔がどんどん見えるようになればいいと考えています。
田中:さらに言うと、クリエイティビティに対する評価軸も現代的なものにしたいです。目立っている、美しい表現である……それは当然目指しながらも、こうした従来の見方を超えて、愛着を生み出している、広く普及している、いつも選ばれている、というような。CXの役割は、無意識に選ばれ、生活に溶け込んでいくことだと思うからです。
私たちリーダーの仕事は、派手であってもなくても、手法や着眼点に新しさがあり、力強く効果を生んでいるもの、それらをピックアップして世の中に伝えていくことなのかもしれません。
noteでの情報発信も、その一環です。CX Creative Studioのクリエイター一人ひとりの個性や強み、考え方などを皆さんにもっと知ってもらいたいですね。
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テクノロジーの発展により効率化・省力化が進む中、CXにおいても人間が置き去りにされてはなりません。それを実現する方法がクリエイティブでした。次回のCX Creative Studio noteではこのCXに不可欠なクリエイティブについて深く掘り下げていきます。
プロフィール
CXクリエーティブセンター
電通エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター
人と社会と企業をつなぐソーシャルデザインやデジタルクリエイティブを数多く手がける。
2021年、カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター発足とともに、センター長に。
著書に、『Social Design』(木楽舎)、『Communication Shift』(羽鳥書店)他多数。
東京ビエンナーレ エクスペリエンス・クリエーティブ ・ディレクター。TCC会員。
※所属・役職は取材当時のものです。
執行役員 クリエイティブ領域および事業戦略室担当
電通クリエイティブ局のCMプランナーとして、多くのクライアントの広告制作に携わったのち、クリエイティブディレクターに。
主な仕事として、国内高級車ブランドの広告プランニングおよび全体ブランディング、大手化粧品会社の複数のブランドの広告プランニングや商品戦略立案がある。
広告領域を超えてクライアントのインターナルマーケティングやCEOのブランディング、事業コンセプト立案なども手がける。
電通の経営企画局を経て2017年より電通のグローバルネットワークでCX領域をリードする電通アイソバー株式会社にて取締役。2021年7月より現職。
※所属・役職は取材当時のものです。