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【ライブレポ】リルネード 2nd Anniversary Live 「Rirune! Rirune! Rirune!」

2021年1月にリリースされた「フォークソング」のイントロには、横並びになったメンバー3人が左右にステップを踏みながらそれぞれの肩に手を置き、一番下手側の桐原美月さんが右手を斜め上に掲げる振り付けがあります。

結成3年目にZeppでワンマンライブを開催」とは、この日結成2周年を迎えたリルネードが掲げる目標です。
桐原さんがこの振り付けで指さす先には、結成当初にはもやがかっていたであろうZeppまでの道のりがはっきりと見えているのではないでしょうか。

7月31日(土)、渋谷。
相も変わらず人通りの多い交差点の喧騒にまぎれ、どこからかアイドルっぽい曲が、湿気をまとった風に乗って聴こえてきました。
タワーレコードでライブでもしているのでしょうか。
駅から会場までの道中は10分程度ですが、乗っていた電車の冷房で冷え切った身体は、梅雨も明けて本格的になった夏の熱にものの10分で書き換えられました。

スペイン坂を上り切ったところにある会場の目の前には何本か街路樹が立っており、道に数少ない影を作っていました。
日陰を求めてその下に入ると、木に止まった蝉の声がじりじりと聴こえ、この音は開場を待つまでの焦燥感にもかわっていきます。

この日の会場はWWWX。

WWWXは、東京パフォーマンスドールというグループがかつて月一回の定期公演を開催していた会場でもあり、個人的には3年前のその公演以来でした。

入口から外階段を上り、上がったところにある溜まりのような所で整理番号順に入場、そこからワンフロア分降りたところにメインホールがあります。
入ってみるとメインホールまでの道のりは記憶どおりでしたが、フロアについては当時の記憶と少々食い違いがあり、後方のPAが思っていたよりも前にせりだしていたことに驚いたのですが、とはいえこの3年間で大きな改装はなかったでしょうから単純な記憶違いなのでしょう。

懐かしさにまかせてぐるりと見渡してみると、中央には三脚つきカメラ、上手には上下自在に動くクレーン付きカメラを見つけました。
三脚のほうは恐らく常設ではないでしょうから、もしかしたら後々の映像化を示唆しているのかもしれません。

この日、3人組アイドルグループ・リルネードが結成2周年記念ワンマンライブ「Rirune! Rirune! Rirune!」を開催しました。

リルネードはこの春、メンバーの地元を巡るツアー「春の北関東ツアー 2021 ~ここがわたしのHome Town~」を開催しており、そのファイナル公演が先月6月27日に渋谷 TSUTAYA O-WESTにて開催されました。
リルネードを観るのはこの公演ぶりでした。

記憶をたどってみると、ファイナル公演の日は開演前からワクワクするような装飾がステージに施されていました。
白い風船の数々が浮かんでいたり、天井にはお姫様の部屋にでもありそうな白く可愛らしい垂れ幕がしつらえられていたりと、「2020年代のオシャカワ」を掲げるリルネードらしい装飾です。

一方この日は、開演前のステージ上には装飾はなく、前回の公演で華やいだステージを目にしていただけに、機材だけがむき出しになった真っ暗なステージはこれが本来の姿とは分かっていてもことさらに簡素に見えました。

そして定刻。
場内BGMの音がやおら大きくなり、メンバーの登場を予感します。
Overture」が流れるのかなとおもっていたのですが、聴こえてきたのはそれとも違うメロディーでした。
間髪明けず、真っ暗なステージ上にスクリーンが展開され、グループ名の由来である「海の神」”リル”をモチーフとしたであろうロゴが、白く点灯した画面に映し出されました。

ファンシーな世界観に乗っかり、桐原美月さん、栗原舞優さん、蔀祐佳さんそれぞれのショットが順番に流れます。
最新シングル「フォークソング」のMVのアザーカットでしょうか。

大きい画面で綺麗な画質で観ると、リルネードのキラキラ感はより伝わってきます。
当初殺風景だと思っていたステージは、メンバーの登場を前にしてすっかりきらめきだしました。

最後にメンバー3人が集合し、本公演「Rirune! Rirune! Rirune!」のロゴが。

そしてスクリーンが捌け、ここでようやく「Overture」です。
フロアからの裏拍の手拍子に合わせてメンバーが登場してきました。
Overtureのリズムに合わせて手拍子が鳴らされる、この光景はたいていのアイドルで見られることですが、この日はovertureが鳴り終わって立ち位置についた後、いかにメンバーの登場を待ち望んでいたかを示すように拍手が響きました。
これは他ではあまり見ない光景です。

初披露となった衣装を着たリルネードメンバーは、序盤ノンストップで曲を披露していきました。

印象的だったのが、3曲目「ラッタパリニャ」から4曲目「東京プリンセス」への繋ぎでした。
「ラッタパリニャ」では情熱的なメロディーとメンバーの情感あふれるダンスによって息を飲むような雰囲気が立ち込めていたのですが、4曲目「東京プリンセス」の歌いだしは栗原さんの「可愛くなっちゃいます」という甘さ全開のパートです。
MCも挟まず、「ラッタパリニャ」から間髪入れずに披露された「東京プリンセス」は落差が余りに大きかったですし、その切り替えを瞬時にしてみせるメンバーには脱帽でした。

少しだけ総論的な話ですが、リルネードの曲は、アレンジを全体的に寄せているのか、どの曲をとっても雰囲気が似ています。
ベースやドラムの音が下から支え、ブラス隊が賑やかさを味付けし、鍵盤の音とメンバーの声とがマッチする、という構成は大体の曲に共通してあり、身体が動いてしまうようなリズム感の良さを生んでいます。

先述したOvertureしかり、リルネードの曲の多くには、ファンが裏拍の手拍子を打って盛り立てるパートがあるのですが、これこそそんなアレンジが効いているところだと思います。

コロナ禍になってからというもの、手拍子は会場と演者を繋ぐ要素として存在感を増しています。
声が出せないだけに、手拍子の力を感じる機会は確かに多いのですが、一方で手拍子過多を感じてしまうことも少なくありません。
別に手拍子しなくてもいいのではないかという場面でも鳴らされ、曲の流れにそぐわないように感じることが、あくまで時たまですがあります。

しかし、リルネードの場合は先に書いたノリの良さから、クラップも違和感なく入ってきますし、どちらかというと自然発生的に起こって気が付いていたら定着した、という感じが強くあります。

ここからは、メンバーの各論に入っていきます。

高めの音に振れる栗原舞優さんの歌声からは強いアイドル性を感じるのですが、地に足をずっしりと踏み下ろしたような芯の太さも同時に見出せます。
この日ひときわ存在感を放っていたピンク色の衣装も、栗原さんが纏ってこそです。

桐原美月さんの歌声は、腹の真ん中から絞りだされるような響きとして聴こえます。
聴くたびに、他の何にも分類できない独特な歌声だなと思うのですが、今回フォーカスする場面はそんな特徴ある歌声が出される直前、そこでの表情です。

記憶に残っているのが、「オトメ・オルメタ」のAメロ「無駄遣いすらオシャレであれ」でのソロパート。
桐原さんがセンターに立って歌うのですが、その直前、気持ちを入れるかのように下を向いていました。
例えるなら、本番前にコンセントレーションを高めるスポーツ選手の様にも見えます。
歌声を受け止めるこちら側としても、それを目にするとある種の緊張感に似たものに包まれました。

ハッとしたような顔や真面目な顔、さらには「東京プリンセス」のラストで見せるウインクなど、桐原さんの豊かな表情については見るべきところが多いのですが、こうした点も見逃せないところなのではないかと思います。

桐原さんはダンスでも一人手数が多く、彼女なりのアレンジを凝らしていることが伝わってきます。
動的なダンスも魅力ですが、その激しさについては、新衣装の手首のあたりについていたファーから白い羽毛みたいなものがひらひらと舞っていたり、MCで大きくお辞儀をしたときに汗が飛び散っていたのが見えた、という描写だけで少しはお伝えできるのではないでしょうか。

蔀祐佳さんはセンターに立つ時も丁寧な歌い方で、地声から裏声に切り替わるところで情緒を感じます。

裏声に変わる音、いわゆる「ピッチブレイク」ですが、ここの音を無理して出している感が無いのが素晴らしいです。
比較のしようがないことはあらかじめお断りしておきますが、前回観たツアーファイナルよりも歌声の揺れが少なく安定感を増しているようにも見えました。
蔀さんはまた、歌っているときにフロアをよく見ているようにも感じて、この日もフロアの左右はもとより中央に置かれたカメラも相当意識して見ていました。
もし映像化されれば答え合わせができるかもしれません。

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リルネードは8月18日にニューシングル「夏のレコードがまわりだす」をリリースします。ここには、「今夜、ロマンチック劇場で」と「Sweet Second Date」というこれまた録りおろしの曲も収録されているのですが、「今夜~」のみ前回のツアーファイナルで初お披露目となったものの、「夏のレコードがまわりだす」「Sweet Second Date」はこの日のライブまで解禁されていませんでした。

この日ようやく初披露となったのですが、驚くことに、ライブ前日に振り入れ、ダンスやフォーメーションのインプットを初めてしたとMCで明かされました。

遡ってこのライブ前夜、メンバーはツイッターで「最終調整レッスンをしてきた」とツイートしていました。

本番直前ですから、立ち位置の再確認などそれこそ「調整」レベルにとどまったのかと思いきや、もちろんそれらもやったのでしょうが、よもや振り入れをしていたとは思いませんでした。

曲の雑感を書いてみると、「夏のレコードがまわりだす」で印象的だったのは、サビ前でソロを歌う蔀さんの後ろに重なるように立った桐原さんと栗原さんが、伸ばした腕を90℃の角度から頭のてっぺんまで動かす振り付けでした。
時計の針を示しているのでしょうか。

他にも、タイトルになぞらえて回りだすレコードを模したような振り付けもありました。
具体的なメロディーまでは忘れてしまいましたが、「ファンのみんなは好いてくれるだろう」と栗原さんが語っていた通り、これまでのリルネードの曲調を踏襲していて、2番に入るころにはすっかり乗っていました。

「Sweet Second Date」ではタイトル通り2回目のデートを歌ったド直球の恋愛ソングでした。桐原さんの早口パートがあったような気もします。

この日はこれら新曲含め、持ち曲全てが披露されましたが、終わってみればアンコールなしで60分程度の時間に収まりました。
MCにも十分な時間を取ったのに15曲がこの枠内に収まったというのは、セットリストの半分ほどが2番無しの短縮バージョンで披露されたからでした。
リルネードの楽曲にはその統一性の高さから、一曲でも好きであれば他の曲も大抵好きになる傾向が強いのではないかと勝手に思っているため、時間と曲数の制約があるとはいえ、いわゆる「捨て曲」がない持ち曲はフルで聴きたかったというところは心残りでしたが、これはさすがに贅沢な話でしょう。

さて、レポの冒頭で、リルネードについて「Zeppまでの道のりがはっきりと見えているのではないか」と書きました。
それは、ライブの完成度の高さを目にし、さらにはこの日発表となった3つのお知らせを聞いたからでした。

MCにてその内容が伝えられました。
最後にこれに触れてライブレポを終えようと思います。


発表の一つ目、二つ目が今冬の「東名阪ツアー」開催、そのツアーに先駆けた「ご挨拶ツアー」の開催。そして三つめが1stフルアルバムのリリース。
ツアーファイナルの東京公演は、恵比寿LIQUIDROOMでの開催です。

ここで、リルネードがこれまで歩んできた道のりを概観してみます。

リルネードは2019年7月31日、渋谷WWWXにてデビューしました。
同事務所で同じくデビューした別グループ(虹のファンタジスタ、meme tokyo.)との合同お披露目です。
当時を振り返ったこの日のMCで「2年前はここで写真を撮った!」とコメントしていたまさにその位置にリルネードが立っている写真が、下のライブレポに納められています。

デビュー一周年の2020年8月にはWWWXアニバーサリーライブ・・の予定でしたがコロナの影響で無観客ライブに切り替わりました。
悔しさは確実にあったのでしょうがそれ以降も活動は精力的に続け、「もうわたしを好きになってる君へ」や「フォークソング」など、ライブアイドル界に数ある曲の中でも人気投票で上位にランクインする(であろう)出色の曲もついてきました。

諸々の事情が多少は緩和された2021年の春には、メンバーの凱旋公演である北関東ツアーを開催、そのファイナルの東京公演ではTSUTAYA O-WESTが埋まりました。
そしてこの日。デビューからぴったり2年後の二周年ライブ。
デビューの地であり有観客ライブがかなわなかった場所でありと、因縁めいたWWWXでしたが、この日は満員の客入りだったそうです。
そして初の東名阪ツアー開催とアルバムのリリースが発表となりました。

冒頭の繰り返しですが、リルネードのグループとしての目標は「結成3年目でZeppでワンマン開催」です。
この目標までかなり現実感をもってステップを上っていることが分かります。

デビューした日は」この日のMCで栗原さんが切り出しました。
楽屋がなくて廊下の椅子が楽屋代わりだった」と。

そんなデビュー日の裏話を踏まえると、リルネードの雰囲気も相まってなんと美しいシンデレラストーリーでしょうか。

メンバーのMCをさらに引きます。
「3年目の桐原は違う」とたんかを切った桐原さんを初めとして、リルネードメンバーは口々に「突っ走る」「ついてきてほしい」と繰り返していました。

この日のアニバーサリーライブを区切りとし、リルネードは加速度を増して三年目を迎えていきそうです。
勝負の年と意気込むこの一年、この間どんな姿を見せてくれるのでしょうか。

見出し画像:リルネード公式ツイッターアカウント画像(@rirunede)を改変


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