47 通帳
47【絶縁】
僕のおばあちゃんは、娘を盗っ人扱いした上に、お母さんに一切、謝らなかったらしい。
盗っ人扱いする時は、みんなの前で恥をかかせ、濡れ衣を着せておいて、勘違いが発覚後、まったく謝らない態度に、周りの大人が詰め寄った。
「それは、謝らなあきまへんで!いくらなんでも!」
口々に言う大人たち。
すると、おばあちゃんがひとこと。
「謝りました!」
どんなウソやねん(笑)。
まあ、こんな、おばあちゃんだったわけである。
そのことがあって以来である。
お母さんは、おばあちゃんを絶縁すると僕たち家族に宣言した。
そして、今まで言わなかった虐待の事実を、わあわあと、喚くのであった。
それは、我慢していた僕が初めて反抗して、死ね!と連呼した時に似ているのかもしれない。
それが、かなり遅れてやってきた形である。
お母さんの場合は、おばあちゃん本人に直接ではなく、自分の子供達や夫に、自分がされてきたことを洗いざらいぶちまけ出したのである。
僕は、それに関しては、聞いてあげるだけの度量があった。シンプルにかわいそうだなとも思ったし。
お母さんはおばあちゃんの家の電話を着信拒否した。正確には、番号が表示されるナンバーディスプレイ機能を電話につけ、絶対に電話をとらない措置をした。
何か食べ物が送られてきては、それを毎回、送り返した。
宣言通りの絶縁である。
面白い話がある。
そんなことがあってから、まだ間もない時期である。
赤ちゃんの夜泣きがあった。
赤ちゃんではない。
大の大人であるお母さんが、悪夢を見たようで、夜中に突然ギャーッと喚いている。
「殺される!おばあさんに殺される!」
とりあえずみんなで落ち着かせて、夢やから!夢やから!を連呼した。
聞き苦しいノイズを省略して、お母さんのセリフを小学生の作文風に簡潔に書くと下記のようになる。
「おばあさんは私に、『お前を呪い殺す』と言いました。楽しかった。
そして、そのあと、おばあさんは、『お前の家族も呪い殺す』と言いました。楽しかった。
そして、そのあと、おばあさんは『お前を三番目に殺す』と言いました。楽しかったです」
僕たちは五人家族である。なんで三番目やねん、と僕はちょっと内心面白かった。一番目か五番目やろ。
殺すとしても。
とりあえず、虐待は連鎖を生む傾向にはあるのだ。