虫に愛される私の十数年

私はアホほど蚊に刺される。本当にアホほど。
実家にいた頃から誰と一緒にいても私がいちばん刺されていた。「あんたの血ぃがおいしいんやろ~~」とか言われて納得出来る訳がなかろう。美味しい血ってなんやねん、一体私の血に何が溶けだしとんねん。
そんなに美味しいなら是非蚊の皆様方には私宛に幾ばくか報酬などお支払い頂きたいところでありますがいかがでしょうか。どうぞご検討下さい、口座番号はこちらに。

しかし血とか関係なく虫に好かれる性分ではありそうなのが悲しいところである。自習室でテスト勉強してると私の顔の周辺にだけデカめのハエが飛び、蜘蛛は机を駆け抜ける。この前まで研究室のデスクには常に死んだハエが乗っていた。何もこんな所で死ななくてもいいのに、いくらエアコンの真下だからってあんまりじゃないかなどと思いつつパソコンの上を闊歩するアリを睨んでいた。
1週間ほど前、駅のホームにただ立っているとゴキブリが一目散にこちらへ駆け寄り足に飛び乗った時は流石に失神を覚悟した。しかしこれでもし線路に落ちたりとかして死んだら死因がゴキブリになってしまうので何とか耐えて全力で振り払った。死んでまでそんな恥を晒してたまるか。

こんな虫嫌いの近くに寄って何が楽しいのか。もしや嫌がらせなのか。こんな愛情表現があっていいのか。
もう私にはこいつらを好きになるしか道は無いのか。こいつらを…好きに………??(ここでめくるめく死闘の日々を回想)

いや無理だろ。普通に。

こんなの断っても断っても告白してくるめんどくさいやつみたいなもんじゃないか。とりあえずアタックしとけば好きになって貰えると思ったら大間違いだぞ。そういうの結構迷惑なんだぞ。
いやそんな熱烈なアタックとかされたことないから知らんけど。悲しいこと言わせんなよ。
こちらとしてはあくまで毅然とした意志を示すまでである。

根負けして告白を受け入れてみたらめちゃくちゃ大事にしてくれて幸せ、みたいな話も聞くけれど。
よそはよそ、うちはうち。おいお前ら甘ったれるなよ。
いつまでもタダで吸わせてやると思ったら大間違いだ、あっかんべー。
赤く腫れた虫刺されに薬を塗りたくりつつ、もう十数回目にもなる夏の決意を固めた。

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