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【独白】世界の仕組み

 この世界の水の量は決まっているらしい。

 例えば雨が降る。
雨は雲から降る。
雲は水蒸気の塊で、多くは海から蒸発したものだ。
陸地に降った雨は、川を伝って海へ出る。
水は水として巡る。

 例えば一人、人が産まれる。
乳を飲む。
乳は血液から作られる。
血液は母が飲んだ水から作られる。
母が飲んだ水は、陸地に降った水を濾過して作られる。
母に取り込まれた分の水は、川には流れず、海にもでない。
ひとの体は7割水らしい。
体重の7割。
母が50キロとして35キロ。
子供が3キロとして2.1キロ。
水が水として世界を巡らなくなる。

 水が水として世界を巡らなくても、世界にある水の絶対量は変わらない。
何らかの形で、なにかに取り込まれて、世界のどこかにある。

 世の中の分子も原子も、そんな感じで巡る。
どの形でこの世にあるか、減ったように見えて変わらない、増えたように見えて変わらない。

 人の心はどうだろう。
痛みはどうだろう。
神経伝達物質が脳を刺激する。
原子と分子が結び付く。
化学反応。

 今揺れ動いた君の心は、本当に君のものだろうか。
今、不安になる私の心は、本物だろうか。
本物かもわからないもので、私は苦しんでいるんだろうか。

 なにもかも、この世界にあるものの本質の量は変わらない。
化学反応で何を産み出すか、何をもとに戻すか。
それだけ。


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