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【3D Print New Normal】Stratasys J8シリーズ3Dプリンタを利用した表現研究概要

導入

建築や医療・ファッションなど様々な分野で3Dプリント技術が活用されるようになって久しい現在、日々世の中には様々なテクノロジーを駆使した3Dプリンターが登場している。その中でも、多様なマテリアルの種類とその組み合わせにより新たな質感を表現・形にするデジタルマテリアル技術を持つ3DプリンターとしてStratasys PolyJetシリーズが挙げられる。

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PolyJetテクノロジーとは、ストラタシス社の3Dプリンティングテクノロジーです。14μmという極めて微細な積層厚で液状のフォトポリマー(光硬化樹脂)を噴射し、紫外線ライトにて効果させるその技術は、あらゆるテクノロジーに利用可能な幅広い材料を取り揃えており、単一材料のみならず、複合材料でも、その高精細でなめらかな仕上がりの造形が特徴です。(―Stratasys Japanより)

PolyJet 造形イメージ

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今回、縁あってStratasys社のご協力のもと、PolyJetシリーズの最新機種J8シリーズ3Dプリンターを活用した、3Dプリンティングにおける新しい表現に関する研究を行なう機会を頂いたので、アーカイヴも兼ねてnoteにまとめていこうと思う。

僕が所属しているTakramではラボ機材としてStratasys社の3Dプリンター「objet30pro」を導入しプロトタイピングに活用している。特にobjet30proの特徴として、高精度での出力はもちろんのこと、カートリッジ式のマテリアルで液体が手に直接触れないため利用がしやすいなど中規模な3Dプリンターの中でもオフィスでの活用がしやすいという点が挙げられる。この機材は基本的に単一のマテリアルのみ利用できる(マテリアルを変更することはできるが、合成することは出来ない)ため、データの作成も安価な3Dプリンターに利用される.stlデータを利用できるシンプルな構成になっている。

プロジェクト対象機材

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今回取り扱うJ8シリーズは透明マテリアルや軟質マテリアルなど複数のマテリアルの利用、3色のカラーマテリアルを利用したフルカラー印刷、3Dモデル上のカラーテクスチャの再現機能など様々な特徴を備えている一方で、データの作成方法が複雑多様であり、初めての人では少しとっつきにくい部分もある。
そこでまずは各機能の中から1つを取り上げ、そのデータの作成方法や性能評価を行なうことで、表現研究の前段階として3Dプリンターの活用方法をまとめ、またそのノウハウを公開することで多くの人がStratasys社の3Dプリンターを活用できるようになることを目指す。

透明カラーマテリアルを使った表現研究

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J8シリーズのいくつかの機能のうち、僕が着目したのは高透明度のフルカラー3Dプリント技術だ。透明マテリアル使用は他社の3Dプリンターでもいつくか見受けられるが、CMYの3色をインクジェットプリンターのように混合し、様々な表現ができる機能を持つものは少なく、透明樹脂中にカラー透明マテリアルを封入し、カラフルな液体の入ったガラス瓶のような表現も可能にするのはStratasysy社の3Dプリンターの大きな特徴といえる。

ちなみに今回のJ8シリーズ表現研究を行なうにあたり、多摩美術大学職員をしているクリエイターの浜田卓之くんと多摩美術大学学生の森井裕史くんも同様に研究を行っており、そちらの研究対象と成果もどこかでシェアできたらと思っている

このフルカラー混色できる機能を用いてできる表現の探索にあたって、”既存の表現・製造方法の代替手段としての3Dプリンター”から、”これまでの製造手法では実現が難しかった新たな表現や活用事例”の示唆を得られるようなものになることを理想とし、プロトタイピングしていければなと思っている。

これから複数回に渡ってJ8シリーズの3Dプリンターでの表現方法についての試作検討を進め、それをまとめた記事を公開してゆく予定だ。

次回の記事では透明マテリアルを使った表現の可能性を検討するにあたっていくつかのアイディアを実際にプロトタイピングし、その中で出てきた課題点やその対処法の検討を行なう予定なので、興味を持っていただけた方がいたら次回の記事にも目を通してもらえるとありがたい。


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