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ゲームデザイナー新澤大樹インタビュー:カードゲーム「すべてがちょっとずつ優しい世界」のつくりかた 前編

-自己紹介をお願いします。
 新澤大樹と申します。ゲームデザイナーです。ゲーム制作サークル「倦怠期」で電源を使わないゲームを作っています。20以上の作品があります。代表作はOink Games(オインクゲームズ)から発売されている「マスクメン」です。マスクメン - Oink Games

-ゲームマーケット2021の新作、カードゲーム「すべてがちょっとずつ優しい世界」はどんなゲームですか?。
 日本人になじみ深いゲームでいうと、百人一首カルタを使って遊ぶ「坊主めくり」です。
 失敗するまで、何枚でも山札をめくることのできるチキンレースのゲーム。山札をめくって「カードを獲得するか」「もう一枚めくるか」を選択して、カードを集めていきます。めくったときに特定のカードが出るとドボンで、次の人の手番になってしまう。
 今回のゲームでは同じ種類のカードが出るとドボンです。プレイヤーは勝利条件は7種類のカードを集めるか、自分の役割カードに合った条件を満たすことです。

-このゲームの工夫点は何でしょうか?
 山札の一番上のカードが公開されているというルールです。
 坊主めくり系のゲームのほとんどは「1枚目のカードは確実に獲得できる」というルールが採用されています。リーチ状態の人が1枚目めくって、それが勝利条件を満たすカードだったら、特に失敗することなく勝つことができます。
 このゲームでは、あらかじめ山札の一番上のカード(プレイヤーがめくる1枚目のカード)が公開されていて、そこからめくるので、1枚も獲得できないかもしれない。

 また、いま止めるべきなのか、めくるべきなのかを考える判断材料になっています。相手の集めているカードを見て、欲しくなさそうなカードで手番を渡すことができます。ここは失敗してもいいとか、ここで勝負とかけようとか、自分の手番に行うアクションはカードを1枚めくるだけなんですが、自分の戦略を考えることができます。

-1枚目から失敗するかもしれない、1枚目を確実に獲得できるとは限らない、というルールを採用した理由を教えてください
 ひとつは、ゲームがすぐに終わってしまう可能性を低くする役割があります。
 もうひとつは、勝利条件を満たすカードで回ってきたとしても失敗するかもしれないというルールにしたかったからです。このルールにすることで、「このゲームは、どうせ一枚ずつ獲得していればいいでしょ」と投げやりになっている人が勝ちにくくなっています。「こうすれば絶対に失敗せずにカードを獲得できる」という方法が無いということです。1枚は確実に獲得できるルールだと、ゲームに消極的な人がいた場合、1枚だけ獲得する行為を繰り返してしまう可能性があります。
 めくって一喜一憂するということが、一枚目から発生します。1回目から「失敗するかもしれない、成功してほしい!」という気持ちでカードをめくることになります。

-このゲームのアイディアはどのように生まれたんですか?
 僕はテーマからゲームを作ることが、ほとんどありません。システムからゲームを作る人なんですね。
 システムから作る場合にも2種類あります。

 ひとつ目は、全体的にこういうものにしたいからそれに合わせて考える場合。
 今回だと「一回目から確実に成功する、というものにはしない」ということが、念頭にあって作っています。

 もうひとつは、面白いシステムを思いついたからそれをまとめる場合。
 例えば「セブンセグメントトリックス」というゲームをつくりました。マッチ棒パズルの方法で、チップを置いて、とある数字を別の数字に変更することができる。この操作って面白いなと思いついて、トリックテイキングにして、得点方法を工夫して、完成させました。

 「新しい車を作るために、どうやって材料を集めるのか」
 「新しいエンジンを作ったから、どういう車にするのか」
 というような考え方です。

 今回のゲームは両方の発想です。
 「一回目から成功しない坊主めくりを作りたい」という全体の方向性。
 「自分の手番が来る前に、カードがめくれていて情報が分かっていると楽しい」というシステムの面白さ。
 この二つを合わせて作り上げました。

-新澤さんは、ゲームのアイディアを思いついたらすぐにゲームを作るんですか?
 アイディアを思いついて、それがまとまっていればすぐに出します。まとまっていなければ寝かせます。
 「面白いシステムを思いついてそれをまとめる」パターンの場合は、システムを思いついてもそれを活かすゲームが考えつかなければ寝かせます。
 基本的にシステムから作っているので、ボツになるアイディアはないです。

-今回は西島大介さんの原作に合わせたゲーム制作でしたが、いかがでしたか?
 制限がかかっていたほうが、ゲームが作りやすいんですよ。全体からこういうゲームを作りたいというのに、いい方向に働く。ゲーム作り全体の目標になります。
 より合わせたものを作るというか。制限という言い方も良くないのかな?何か与えられると、それに合わせる形で特化できる。そういうことはよりゲーム作りの幅を広げる。尖らせることができるんですね。

(後編に続きます。後編では、「原作にあったルール作り」「数値調整やテストプレイ」などについて語ります)

ゲームデザイナー新澤大樹インタビュー カードゲーム「すべてがちょっとずつ優しい世界」のつくりかた 後編

https://note.com/curryyylife/n/n6f7f5731c5ca

双子のライオン堂書店のWEBサイトにて、カードゲーム「すべてがちょっとずつ優しい世界」を販売中
https://liondo.thebase.in/items/36600524

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