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【続いてる写経 1600日め】『般若心経は間違い?』ですって??

淡々と日々書き続けていたら、おかげさまで遂に1600日めとなりました。

いつも応援してくれる皆さま、支えてくれる家族、そして写経を続けさせてくれる大いなる存在に、改めて感謝いたします。

さて、そんな毎日親しんでいる般若心経について、スリランカ旅行の下調べを通じ、気になるタイトルの本を発見しました。

『般若心経は間違い?』

筆者はスリランカ上座部仏教の大長老・アルボムッレ・スマサラーナ氏

書籍『怒らないこと』で有名なお坊さんです。

早速『般若心経は間違い?』を手にし、前書きを読んでみました。

じつは『般若心経』は、わからなくて当たり前なのです。それはお釈迦さま、正等覚者である釈迦牟尼ブッダその人が語った経典ではないからです。
『般若心経』をはじめとする大乗仏教の経典は、お釈迦さまが涅槃に入られてから数百年後、その直接の教えから一部を抜き出して、その人なりの能力で深い意味を表現しようとした宗教家たちの文学作品です。それを、私たちはいろいろと頭をひねって解釈しなければならないのですが、私たちもお釈迦さまが説いた真理を知っているわけではないので、納得いかないのです。
 このジレンマを解決する方法が一つだけあります。
『般若心経』を読んで、わからないところは、直接、お釈迦さまに聞くことです。
 お釈迦さまは誰でも理解できる言葉で、真理、すなわち「普遍的で客観的な事実」を完全に語りました。

アルボムッレ・スマサラーナ著『般若心経は間違い?』より抜粋

上座部仏教のスマサラーナ大長老からすれば、釈迦の言葉と教えを語っていない大乗仏教経典『般若心経』は異端なのです。

「般若心経」の、写経のタイトルにも「仏説」と入っているものがあります。特に密教はつけているようですね。

ただし、前書きの通り、本来は直接釈迦が語った話ではありません
成立はずっと後。ゆえに「般若心経」は筆者不明です。

また、パーリ語の経典をインドから持ち帰り、漢訳した玄奘(三蔵法師)によって、内容はさらに縮められております。

それが、今多くの日本のお寺で毎日唱えられ、写経の経典として広く伝わっているものなのです。

本の内容に戻ると、この前書きだけで

えー、そうなの?

とびっくりする人も多いかもしれません。

この事実、ワタシは仏教研究者の大家・中村元先生のご著作『般若心経・金剛般若経 (岩波文庫) 』を通じて知りました。

この本には、原典と忠実な翻訳も紹介されており、玄奘訳の般若心経とずいぶん印象が違うことに驚きました。

スマサラーナ大長老は、内容にも色々鋭いツッコミを入れられております。

かの有名なフレーズ、

色即是空 空即是色

についても、前者の「色即是空」は成立するが、後者の「空即是色」は成立しないと書かれております。

本来「空」の概念は多数あり、初期仏教においては「空」の観察が数十種類あるそうです。「般若心経」では、「空」の概念が狭いようです。

色即是空」、すなわち「肉体は空である」というのは仏教的に正しいのです。肉体には実体がなくて空なのです。
(中略)
わかりやすい例をあげましょう。「リンゴは果物である」というのは正しいのですが、「したがって、果物はリンゴである」というのは間違いなのです。
(中略)
同様に「肉体は空である。実体がない」というのは正しいのですが、したがって「空は肉体である」とは言えないのです。だから「色即是空」で止まるべきなのです。

出典同上

うむ、なるほど、確かに言われてみればそうですね…。
他の部分も、まだ消化しきれてはないですけど、納得の論理展開です。

では、こうした矛盾点などを踏まえて、ワタシたちは「般若心経」について、どう捉えれば良いのでしょう。

(つづく)




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