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「カポーティ」・・・何よりも君の死を恐れ、誰よりも君の死を望む。


  • 監督:ベネット・ミラー

  • 脚本:ダン・ファターマン

  • 出演者:フィリップ・シーモア・ホフマン / キャサリン・キーナー / クリフトン・コリンズ・Jr / マーク・ペルグリノ / ブルース・グリーンウッド

  • 製作国:アメリカ / カナダ

  • 公開:2005年9月30日(アメリカ) / 2006年9月30日(日本)


1959年に実際に発生した殺人事件を作者が徹底的に取材し、加害者を含む事件の関係者にインタビューすることによって、事件の発生から加害者逮捕、加害者の死刑執行に至る過程を再現した小説「冷血」。
いわゆる”ノンフィクション・ノベル”というものを初めて世に送り出した小説家、トルーマン・カポーティのお話。


キャスト


  • トルーマン・カポーティ (フィリップ・シーモア・ホフマン): 作家。

  • ネル・ハーパー・リー (キャサリン・キーナー): トルーマンの幼馴染の親友。作家。

  • ペリー・スミス (クリフトン・コリンズ・Jr): 殺人犯。

  • ディック・ヒコック (マーク・ペルグリノ): 殺人犯。

  • アルヴィン・デューイ (クリス・クーパー): 担当刑事。

  • ジャック・ダンフィ (ブルース・グリーンウッド): トルーマンと同棲中の同性の恋人。作家。

  • ウィリアム・ショーン (ボブ・バラバン): 編集者。

  • マリー・デューイ (エイミー・ライアン): アルヴィンの妻。小説好き。

  • ローラ・キニー ’アリー・ミケルソン): 事件の第一発見者。被害者の1人の親友。

あらすじ

1959年11月15日、カンザス州の町で農場主の一家4人が殺されるという事件が起きる。
「遠い声 遠い部屋」や「ティファニーで朝食を」を世に送り出し、天才作家と呼ばれていたトルーマン・カポーティは、この一家惨殺事件に興味を持ち、本にしたいと考えるようになる。

1960年1月6日、ペリー・スミスとディック・ヒコックが犯人として警察署に連行される。
カポーティはペリーと留置場で何回か話すうちに、幼いころに母親に捨てられた境遇と似ていることを知り、彼に対して友情なのか愛情なのか、何かわからない感情を持つようになる。

ペリーとディックの死刑が6週間後に決定する。しかし死なせたくないという気持ちとペリーから話を聞いて本を完成させたいという気持ちの両面から、カポーティは有能な弁護士を探し出し、控訴によって最高裁まで持ち込まれることになる。

カポーティはペリーとの関係を楽しみながらも、一方では本を完成させたい気持ちも強まっていく。しかし本を完結させるためには、ペリーが死刑執行されなければならなかった。

そんな時、最高裁での控訴が棄却され、ペリーたちの死刑が決定する・・・


感想

フィリップ・シーモア・ホフマンのカポーティ役の演技は、カポーティの特徴的な声や仕草を見事に再現しつつ、内面の複雑な感情を繊細に表現していた。

この演技は高く評価され、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンは第78回アカデミー賞で主演男優賞を受賞。

作品賞・監督賞・助演女優賞(キャサリン・キーナー)・脚色賞でもノミネートされ、多数の映画賞も受賞した。

「カポーティ」の中心テーマは、芸術創造と倫理の間で揺れ動く作家の姿である。カポーティは傑作を書き上げるために、犯人たちとの関係を利用し、時に彼らを裏切る。この葛藤は、芸術のために何を犠牲にすべきか、という普遍的な問いを投げかけているように思える。

カポーティとペリーの関係は、共感と利用という二つの側面を持っており、カポーティはペリーに共感しつつも、彼を小説の素材として利用する。この複雑な関係性は、人間関係の本質的な難しさを浮き彫りにしている。


主演のフィリップ・シーモア・ホフマンにとっては、カポーティのペリーに対する友情なのか愛情なのかわからない関係性をうまく表現しつつ、なおかつ本も完成させたいという相反した感情も出していかなければならないのは至難の技だと素人目には見える。それを上手く演じたことで主演男優賞を受賞したのは納得。


作品の中でも、カポーティの揺れ動く感情を表した第3者のセリフが印象的だった。

執筆活動のために事件の詳細を伝えるアルヴィン刑事にカポーティが、本の題名を「冷血」にしたことを伝えるシーンでアルヴィンは
「それは犯行のことか?それとも犯人と親しくする君のことか?」と、
カポーティに訪ねるシーン。

ラストでカポーティが幼馴染の女性作家ネル・ハーパー・リーに泣きながら電話をし、「彼らを救うために何もできなかった」と言い、
ネルは「そうね・・・でもあなたの本心は救いたくなかったのよ」と返すシーン。

なぜカポーティがその後、長編が書けなくなったのか・・・。
最初はただ本が書きたい一心でペリーに近寄ったのだと仮定すると、カポーティは周りには否定しながら、自分でもわからない内にペリーの存在が大きくなっていたのかもしれない。

それは友情だったのか愛情だったのかはわからないが・・・



そして彼を失った時にそれがわかり、彼を利用してしまった自分の罪深さを悔い、それを紛らわせるために酒に溺れた・・・・?

皮肉なことに主演を演じたフィリップ・シーモア・ホフマンもアルコールや薬物の依存症に苦しんだ。
そして2014年に自宅アパートでヘロインやその他の薬物の過剰摂取により死去、まだ46歳という若さだった。

大好きな役者さんだったので非常に残念。


ストーリーはもちろんだが、カポーティの心情を上手く表現した素晴らしい演技のフィリップ・シーモア・ホフマンを見てほしい。


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