嵐の夜と焼き菓子のこと。
八月に入った酷暑の合間を縫って、眠れないほどの激しい雨が今年も私たちを襲うように。
先日は豪雨だけでなく、雷の勢いや数そのものも
想像を超える物凄さでした。
これほど雷がいつまでも落ち続けるなんてこと、昔はあったでしょうか。
稲と雷とが交わることで稲穂が実る、と信じられ稲妻と呼ばれていた頃の気候とは、
明らかに変わってしまって
その激しさと勢いも、年を経るごとに増しているように思えてなりません。
雷鳴轟く中、
白く光る部屋の隅で眠れないままに
子どもの頃の気候はどうだったかな、なんて懸命に思い返しているうちに
なぜか心の奥のほうからスルスルスル、と
初めておやつをひとりで作っていた時の情景が、
滑り出て来ました。
それは、多分小学3.4年生くらいの頃。
一人で留守番している夕暮れ時に、
卵と砂糖と粉を適当にガチャガチャ、と混ぜて
トースターでレシピも名もないお菓子を焼いていました。
1人でまごまごと立ち働いていた台所の風景、
部屋に差し込む西陽の淡い茜色、
焼き上がりの香り、
薄ら寂しかった気持ちまでが
鮮明に思い浮かびます。
よほど思い出深いのか、以前にも何度か思い出したことがあり、ひとつの原風景とも言えるような思い出なんです。
当時作ったものそっくりのブルン、とした食感を持つおやつを、あるフランス菓子のお店で「見つけた!」と感じたことがありました。
その名は、ファーブルトン。
プルーンを焼き込んだブルターニュのおやつです。
フランのような、固めのカスタードクリームのような独特の食感です。
今日は小麦粉の代わりに米粉を使ったので、
ふるう手間もいりません。
ものすごく簡単で素朴ですが、
大好きな もっちりとした味わいの
このファーブルトン。
雨のおかげで暑さも緩み、オーブン予熱も嫌でないのは、夏には稀有のチャンス。
午後のおやつにこしらえてみました。
米粉のファーブルトン
材料ー4個分
卵2個、牛乳150cc、生クリーム100cc、米粉50g、粗製糖50g、プルーンの赤ワイン煮適量、粉砂糖.バター.グラニュー糖各少々
作り方
1.オーブンは170℃にあたためておく。
プリン型などにバターを薄く塗り、グラニュー糖をまぶしておく。
2.牛乳を人肌に温め、溶き卵を混ぜ、生クリームも混ぜる。
3.米粉と粗製糖を2.に混ぜる。1.の型にちぎったプルーンを入れて、上から生地を流し、オーブンで30〜40分、しっかり膨らむまで焼く。
※プルーンは赤ワイン煮でなくても、熱い紅茶で柔らかく戻したものを使われても構いません。
ポップオーバーのように盛大に膨らんでから、しゅん、としぼみます。
冷やしても美味しいデザート。
見た目は地味ですが、一度作るとまた食べたくなるシンプルデザートの一つです。
お盆前の忙しさでくたびれ気味の私。
投稿も、心身が欲しているのでしょうか、
おやつが続いています。
仏教のことばに、「毒薬変じて甘呂となる」というのがあります。
辛く苦しい経験をしても、それがひいては自分の栄養や心の糧になる、ということなのでしょう。
甘いものは健康の敵、のように言われることも多い現代ですが、
忙しさのすきまにかんたんおやつを作りながら
1人でほっとひと息つくのも、心の栄養なのだと感じています。
もちろん1人だけでなく、夏休みにみんなで作り、ワイワイ頂くのもまた楽し、ですね。
あともう少しで休みの方も多いのでしょうね。
気候は甚だ不穏ですが、
それぞれに思い出深い夏をお過ごしください。
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