
母のお洒落
「〇〇様、この度はご来店、またお買い上げいただき、誠にありがとうございます。」
突然、名指しでメールが送られてきた。
「お買い上げいただいたお品物のコーディネートやお手入れのご相談をはじめ、お気づきの点がございましたら、どうぞお気軽にお申し付けください。 〇〇店 スタッフ一同」
どうやら「私」はスカートを買ったらしい。
それも某百貨店の、30代から40代の女性が購入しそうなブランドショップで。
いや、身に覚えはないんだけど・・・。
可能性はただ一人、ひとり暮らしの81歳の母だ。
母と私はこの百貨店の家族会員カードを持っている。
でもメールは百貨店からではなくて、ブランドショップから購入のお礼とポイントが加算されたお知らせだった。
このブランドショップのカードは私しか持っていない。
カードを持参し忘れた時は、電話番号から会員情報を検索してもらい、ポイントをつけてもらう。
はたして81歳の母がそこまでするだろうか。
・・・というか、独りでそのお店で買い物するだろうか。
母にメールしてみた。
返事がない。
翌日になっても返事がない。
「ん?生きてる!?」
そう思い電話してみた。
「あー、そうそう、スカート買ったのよ(”バレたか”口調)。
いやぁ、もぉ、着て行く服もないしね、
高かったんだけどね、お店に入りにくかったんだけどね、
〇×▲・・・・。」
饒舌に、まるで言い訳するかのように一方的に話し出す母。
別にお買い物は自由にすれば良いではないか。
私「なんかさ、ショップのポイントが加算されたメールが来たんだけど・・・」
「あっ、それね、店員さんがお店のカードを持ってるか聞いてきて、私は持ってないけど、娘は持ってるかもって言ったら、検索してみましょうってなってね、アナタの携帯番号では見つからなくて、自宅番号で検索したらあったのよ~。」
母よ、元気そうでなにより。
ここのところ、足が痛くて歩けないと言っていたし、
ご飯を食べるとむせて飲み込めないんだと、
食欲もガタッと落ちていたので心配していたんだ。
お洒落したい気持ちがあるって、とてもイイ。
「おふくろさん、独りでその若々しいショップで服買ったんだ。
・・・エエね。安心やね。」
と夫がつぶやいた。
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