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Udacity自動運転コースの講師にインタビューしてきた in シリコンバレー

自動運転のナカミ⑩ 【Udacity インタビュー編】

この記事の目的

事故や渋滞が無くなる!運送業が効率化する!時間が節約できる!…という明るい話から、事故の責任は誰が負うの?車がハッキングされたら?AIとかロボットに運転任せるの怖い…という心配になる話まで、色々な議論がされている自動運転技術。しかしそう言った自動運転が来る来ないという議論を盛んにしている一方、自動運転がどのようにして動いているのかなどと言った中身の深いところまで詳しい方は少ないのではないでしょうか。私はというと、数年前にこの技術を知って以来すぐに進路を変え自動運転研究室に入ったり、研究室入る前から有料オンライン講座(計約30万円…汗)で学んだりと、この業界のキャッチアップに勤しんできました。そこでこの記事を通して自動運転技術の中身を噛み砕いて紹介することで、より一層深い議論ができたり、この産業に張るか張らないかを考えて頂けたらなと思います。

最終回の今回第10回目は、恐らく日本で僕しか持っていないであろうコンテンツを放出します…それは、Udacity講師への直接インタビューです。

デイビッド・シルバ

僕がインタビューしたのは自動運転コースの講師であるデイビッド・シルバさんで、彼は教材動画の主役なので受講生からはお馴染みの先生です。他にも例えばUdacityのTEDxスピーカーなども彼が勤めました↓。

彼は現職に就くまで一切自動車やロボティクスの知識を持っていなかったそうですが、自動運転という技術に一目惚れして以降この分野に情熱を捧げ続けています。さてそんな彼に僕はシリコンバレーのUdacity本社にて直接インタビューしてきました。彼が自動運転に関わるようになった経緯から彼の想像する自動運転の未来像まで、色々と聞いている中で自分が抱いていた想いと重なるところもあり、非常に感慨深かったです。記事の最後には生音声データも置いときましたので、興味ある方は是非。

シリコンバレーにあるUdacity本社にて

いざインタビュー

僕:TEDx Talkを見させて頂きまして、現職に就くまでデイビッドさんが全く自動運転に関連するバックグラウンドを持っていなかったということに驚きました。転職前、自動運転に関してはオンラインコースだけで学習したのですか?

デ:そう、オンラインコースだけだよ。いやまあ誤解なく言うとすると、10年間ソフトウェアエンジニアをしてきたらプログラミングに関しては十分な知識は既に持ってた。だけど自動車工学やロボティクス、ましてやAIに関する知識なんて全くもって皆無だった。だからUdacityCourseraedXとかを使ってオンラインで学んで、それでから会社へ受けに行った。たくさんの会社にね(笑)。

僕:どれくらいの期間勉強したんですか?というより、前の会社辞めてから勉強始めたんですか?

デ:僕は小さなWeb会社を経営していて、それを売却したんだ。全然そんな大した額じゃないけどね(笑)。まあそれで6ヶ月間くらい勉強したかな。さっき言ったサイトで勉強して、今の仕事に転職した。

僕:6ヶ月間ですか。思ってたよい短い。

デ:まあちょっとラッキーだった面もあるんだ。フォードが、「君は自動車工学に関して未経験者だし、公式な教育を受けてもいない。正直君を雇う理由は見つからないんだけど、でもこの分野の事が凄く好きなようだしポテンシャルもありそうだから、インターンシップ受けてみる?」と言ってくれたんだ。もちろん「Yes! 自動運転に非常に興味あるので是非インターンシップに参加させて下さい!」って答えたよ。それでインターンシップが始まったら「君いいね、フルタイム社員にならないか」って誘ってくれてそれで今Udacityにいるって感じかな。まあ確かにあれはなんか内定を競争し合うようなインターンじゃなくて、別に”数百人の中から10人だけ選んで内定出します!”って感じでもなくて、ただ色んな人を受け入れて相性が合えば雇うしそうじゃなかったらお祈りするって感じの緩い制度だった。それで彼らは僕のことを気に入ってくれたんだ。

僕:なるほど。それではこの業界の何がデイビッドさんをそんなに駆り立てたのですか?

デ:2点あるかな。1点目としては、僕自身大きく成長する分野に行きたいっていうのがあった。10年間小さな会社で働き、まあそれはそれで良いんだけど”良い”ってだけで”最高”ではなかった。だからbig successな分野に行ってみたくなったんだ。
2点目は、自動運転に世界を変えるポテンシャルを見たから。人々の生活を根底から変えてしまいそうなものだった。また技術的にもとてもエキサイティングなもので、ソフトウェアだけじゃなく機械工学も混ぜていかなきゃいけないってのが面白そうだった。

僕:確かに。非常にわかります。では現時点で残っている課題は何だと思いますか?技術、コスト、法律、それとも規制?

デ:んー、全部だね(笑)。全領域にてチャレンジングな課題が残ってる。でも特に都会でのモーションプランニング(車体制御)とパスプランニング(経路設計)かな。ここはまだみんな色々なアルゴリズムを試行錯誤している段階で、これといった正解がまだ決まってない。例えば画像認識だったらみんなディープラーニングを使ってて、LIDARとRADARのセンサーフュージョンにはみんなカルマンフィルタを使ってる、といった具合に。センサーフュージョンにディープラーニングを用いようとしてる人達もいるけど、多くの人はまだカルマンフィルタ使ってる。でもパスプランニングはみんな違うアルゴリズム使ってるんだ。セバスチャンにWaymoはどういうの使ってるのって聞いたら「んー、もし障害物に出くわしたら5°曲がってそれでも足りなそうだったら角度を10°に増やすだけだよ」って言ってたよ(笑)。まあとにかくモーションプランニングは大きな課題だよ。
次は自己位置推定。なぜなら今は地図に凄く頼ってしまっているから。でも高精度地図をいつも最新の状態に更新し続けるのはとてもコストがかかる。地図なしで自己位置推定する方法がそりゃ好ましいし、その解決方法はSLAMなのかもしれない。これもでっかな課題だね。
あとフォードにいた時は、トランク内の車載コンピュータの発熱や消費電力に頭を悩ましてた。UberやWaymoなんて8個ものライダー使っていて、全てのセンサー情報が一気に入ってくるからね、それらをちゃんと処理速度が落ちちゃわないようにリアルタイムで処理できるようにするってのも一つの重要な課題だよ。
次は天気。雪は道路の様子をガラッと変えちゃうから、それに応じて自動運転のアルゴリズムも変えなきゃ。
それにインターフェイスも。人間対車もそうだけど、車対車、車対インフラ間の通信だって期待できる。

僕:もし世界中の車が全部自動運転になったらの話ですよね?

デ:そうだね、でも例えまだ全部が自動運転になってない過度期にも有効だよ。例えば自動運転車が読み取りやすい専用バーコードを標識に貼るっていう事をしている会社もある。そうすればそのバーコードを読み取るだけで何の標識かわかると同時に、今どこにいるのかもわかる。これは車対インフラ間通信の基本的な形だよね。他にも、信号機が(視覚的な色で発するのではなく)無線通信的に今の色が何色か発しちゃうとか。前の車が緊急ブレーキする時は同時に後ろの車にもその旨を伝えることで後ろの車は余裕を持ってブレーキを踏める、とかもね。これらのことは5年10年先の話に聞こえるけど、既に取り組みは始まってるんだ。

僕:そうだったんですね。自動運転が実現した後の世界はどのような未来になってると思いますか?

デ:人々は職場からより遠くの場所へ住むようになるかもね。

僕:今より遠く?

デ:そう。なぜなら”運転”が簡単になるから、車に乗ってる間は何してても良い。テレビ見ても良いし、食事しても良いし、もう何でも。セ* クスだって。それで人々はより都会に足を運ぶようになるだろうね。例えばShibuyaに連れてってくれて君はただ降りるだけで良い、駐車のことなんて気にしなくて良い。だから住む場所はどんどん遠くなるけど、活動場所はどんどん都会に集中してくっていう面白いことが起きるかもね。それで都会には駐車場が要らなくなるから、ビルや公園とかもっと違うものに土地を有効活用できるようになる。田舎ででっかな家とでっかな土地の中で悠々自適に暮らし、出かけたいときは自動運転車を呼んで行きたい場所ーーー例えばShibuyaにピンをドロップして車が来るのを待つだけ。あとは仕事帰りにショッピングでもして帰路に着く、と。自動運転車はコストが高いから、24時間フル稼働させて元を取りたいと考えてる企業が多い。だから最初はピッツバーグ、サンフランシスコ、フォエニックス、シンガポールといった人口密度の高い都会から始まるだろうね。問題はサービス拡大するのにどれくらい時間がかかるかってこと。例えば東京から始まって、千葉対応になってそしたら横浜も対応エリアになって、そしたらそこから都内へ通勤する人の助けになっていく。でも最初は東京からだろうね。

僕:千葉は僕が前住んでいたところです(笑)。東京に比べたらそんな家賃高くないですから、仕事は都会で住居は田舎にでっかく構える、って感じですかね。

デ:そうそう、良い生活でしょ(笑)

僕:今後、全ての自動運転車はライドシェア化するのでしょうか?

デ:正確な予測は難しいけど、それはとても先の話になる気がする。現在の自動車は平均11年くらい持つわけで、今新車買ってる人達のことを考えると2029~2030年くらいまで有人運転車両が残ってるわけで。だからまあいつか全部ロボットタクシー化するかもしれないけど、もしかしたら自分の自動運転車を所有するようになるかもしれない、もちろんわからないけど。さっきも言った通りコスト面の問題でどうしても田舎での普及は遅れてしまう。だから例えば北海道とかはまだ長い間自分で運転しなきゃいけないかもしれないけど、ニューヨークや東京で無人タクシー乗れる日はもうすぐだよ。

[終わり]

インタビューを終えて

Udacityの教材動画で見ていた通りとても気さくな方でした。そして何より、たった6ヶ月間のオンライン学習で(自分の会社を売ってでも)自分のキャリアをもっと心踊る分野に変更したその行動力、さすがです。

今の時代環境は非常に整っています。あと必要なのは時間の捻出と、そのために代わりに何かを辞める勇気じゃないでしょうか。生音声データはYoutubeにアップロードしましたので、興味ある方はこちらから↓。
(僕の英語の発音には目をつぶ…いや耳を塞いで頂けると幸いです ><)

全10回の本シリーズを最後まで読んで頂きありがとうございました。全10回のリストは以下の通りです。

1. スタンフォード大AIラボ、Google Xを率いた男の自動運転にかける想い2. 自動運転の歴史は1900年代にも登る
3. 自動運転は全部で3つの工程に分けられる 〜認識、判断、制御〜
4. 自動運転車の"目"となる特殊センサー達
5. 自動運転車はどうやって現在地を把握してるのか? GPSだけじゃない
6. 自動運転車のアクセルやハンドルはどうやってコントロールされてるのか
7. 自動運転はどのような形で実現されるのか
8. Udacityの自動運転コースを受講してみた 【前編】
9. Udacityの自動運転コースを受講してみた 【後編】
10. Udacity自動運転コースの講師にインタビューしてきた in シリコンバレー

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