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こどもの話を奥深くする「タイトル」のちから

こんにちは。コンテンツストラテジストの小山純です。
わたしは普段、企業や教育機関、官公庁といったクライアントのコミュニケーション活動支援に携わり、戦略立案やコンテンツ開発に取り組んでいます。
また、わたしは小学生のこどもをもつ親でもあります。この記事では「Content×Life」、コンテンツ開発に携わる身であり、かつ、親としてのちょっとした工夫についてお話ししてみたいと思います。

こどもの話、あちこちにいってしまう問題

こどもとの日常の会話は、ときに取り留めのないものになることがあります。

例えば、帰宅時でのワンシーン。学校から帰宅し、その日にあった楽しかったこと、面白かった授業や読んだ本の話、疑問に思ったこと、果てはこんな夢を見たという話。話があちこちにいってしまうことはありませんか? そんなとき、親は親で、残った仕事や夕飯の準備でバタバタしていて、十分に耳を傾けることができず、結局、「楽しかった!」くらいしか記憶に残らない。なんだかごめん。よくあることです。

こどもとの生活あるある「取り留めのない会話」。いっぱい聞きたいけど、深く聞けないのがもったいない。

会話のなかの「タイトル」とは?

そんなとき、「なんの話をするか、話のタイトルを教えて?」とお願いすると、会話をより意味深いものに変えることができるかもしれません。タイトルは、取り留めなく話が移り行ってしまう前に、より話したいことにフォーカスをすることに機能します。

「何を話したいか、タイトルを聞かせて?」と言うと、こどもは少し考えて「○○の話なんだけど」と語り出します。タイトルをつけることで、そこに向かって自分の気持ちや伝えたいことを整理し、相手に伝わりやすい形にすることに意識が向きます。また、聞き手としても「的」ができるため、当人が何を感じたのか、何を伝えたいのかを掘り下げるための質問を投げかけやすくなり、深く話を引き出すことができます。
例えば、「今日は楽しかった!」だけではなく、「放課後、◯◯で遊んだよ。◯◯はカードゲームで、初めて遊んだんだけどルールをすぐに覚えられたよ。勝つか負けるか、探り合いのようでドキドキして楽しかった!」と、話に深みを生み出してくれます。

タイトルを意識することで伝えたいことを整理して、相手にも受け取りやすく。 会話の魅力を引き出す手段としても機能します。

タイトルを定め、こどもの困りごとに迫る

また、こどもが何に困っているのかを引き出すことにも応用ができます。

ある時期、連絡帳(次の日の持ち物)を書き忘れてしまうことがよくありました。はじめは、「忘れないでね」「うん!」という会話だけで、連絡帳を忘れてしまいがちな状況は変わりませんでした。「どうして連絡帳忘れちゃうんだろう?」と聞くと「わからない」と言います。
うーん、きっと何か理由がありそう。そこで、タイトルと小見出しをつけていくような要領で、理由にせまってみます。そのときわたしが頭に思い浮かべていたタイトルは「連絡帳をジャマするいくつかの理由」でした。

親:「連絡帳、書けない理由がある?」
子:「うーん。急いじゃうんだよね。」
親:「なんで急いじゃうんだろ?」
子:「みんな急いで用意してるからさ。」
親:「急がないでゆっくり帰り支度したらいいんじゃない?」
子:「違うよ、朝だよ」
親:「え、連絡帳って朝書くの?」
子:「そうだよ。朝、教室に着くと黒板に書いてあって、うつすんだよ」

ここまでの会話で、わたしは帰宅前のホームルームで連絡帳を書くタイミングがあるものと思い込んでいました。朝、書くのか。なるほど、登校から始業までの間に書きなさい、ということですね。

親:「じゃあ、朝学校についてから時間が足りない感じがする?」
子:「ううん、早くも遅くもないと思う。」
親:「うーん、じゃあ、ほかのことに気を取られて忘れちゃう?どうしたら思い出せそう?」
子:「メモするとか?」
親:「じゃあ、プリントを入れるファイルに、連絡帳を書くこと、書いたらしまうこと、ってメモ貼ってみる?」
子:「やってみよう!」

この作戦。残念ながらうまく行ったりいかなかったりという結末でした。しかしその後、自然と連絡帳は書けるように。こどもは自分で成長できるんですね。
わたしは、心の中でタイトルを持つことで、会話を深めることができると感じています。親子のコミュニケーションにおいて、共有できることに深みが出る、こどもの話題により深く関われる、幸せなことだと思いませんか?

メッセージに魅力を持たせる、「タイトル」のちから

タイトルをつける工夫は、メッセージを魅力的に見せる効果もあります。
ある日、日記を書く宿題がありました。書き上がった日記を見せてもらうと、日記のタイトルは「おじいさんとの初めての待ち合わせ」
何の話かはかえって不透明になっていますが、惹きのあるタイトルです。これは傑作と呼んでいいでしょう。タイトルを通じて感情や想像力が刺激されることもある、一つの例です。

日々のコミュニケーションは、私たちがどのように伝えるかによって大きく変わります。タイトルをつけることは、伝えたいことをより明確にし、相手にも受け取りやすくするだけでなく、会話や文章の魅力を引き出す手段としても機能します。ぜひ、親子のコミュニケーションに取り入れてみてください。