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ホコリをかぶった景色

先日、ずいぶん前に校舎移転によって廃校となった学び舎に、再び足を踏み入れる機会があった。

かつて中学生として青い毎日を過ごした場所が、今は人の気配もなく、静寂に包まれて、ひっそりと佇んでいる。頭では理解していたものの、実際にその空間に身を投じると、様々な記憶が呼び起こされる気がした。

歩を進める度にギシギシと鳴る、年季の入った木造建築。教室には、あの頃とすこしも変わらず綺麗に並べられたままの机があり、ずっと向こうまで続くように思えた長い長い廊下は、ガタガタの窓から射し込む光を受け、白く光っていた。

ホコリをかぶったそれぞれの景色が、時を止められたまま、校舎の中に浮遊し続けている。それはまるで、運動会でみんなが外に出払っているだけのような、ついさっきまで賑やかな時間が流れていたような、そんな不思議な雰囲気だった。

人々が確かな永い時間を過ごし、様々な記憶や感情が堆積し続けた空間には、作っては壊しを繰り返す都会の商業空間とは、まったく異なる「質量」のようなものが宿っていると思う。そうした場所で大切に使い込まれた道具の数々、モノの数々は、生きもののように愛らしい表情をしている。

そりゃ、科学的な実証はないのだろうけれどさ。それでも、時間や想いが混ざり合って生まれる見えない何かを信じて、慈しめるようでありたい。よね。

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Project Design / STITCH INC. / 音楽家たちや山形県のじゅうたんブランド「山形緞通」などと、プロジェクトに取り組んでいます。鎌倉が好きで、住んでます。https://stitch-inc.jp/
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