禍話リライト 無題(「血まみれトイレ」前置き)
まず公園っておかしい公園が多いんですよ。北九州なんか特におかしい。
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北九州のとある住宅地の中に、小さな公園がある。
家と家の間に挟まれた形で、ある。
絶対にここは昔は家だっただろう、という場所に、ある。
その住宅地の周りには大き目のディスカウントショップなどがあるため、コインパーキングを作ればそこそこ儲かりそうな立地で、ただ遊ばせておくには若干もったいない。
でも、わざわざ公園にして潰してある。
公園内で投げられたボール等が周りの家や道路に飛び出さないように、高いフェンスが作られている。
なのに、遊具が全然無い。
そもそもが家一軒分程度しかない狭い土地だ。例え何かを置くとしても砂場とちょっとした滑り台やベンチぐらいしか置けない。
そして地区の住民がその公園を利用している様子も、全く見たことがない。
かぁなっき氏はそこを通る度に、気持ち悪い場所だな、と思っていたという。
ある日、かぁなっき氏はなんとなくその公園の裏の方にある通りを歩いてみた。
くだんの公園のちょうど裏側にあたる土地は、公園としての整備すらされず、空き地の状態で放置されていた。
家が建っていたことを示す名残だろうか、地面にはコンクリートが敷かれている。
そのコンクリートの上には駐車場か何かにしようとしたのか、描きかけの白線と思しき痕跡が辛うじて見受けられたが、その計画も途中で放棄されたらしく、それ以上の整備は一切されていない。
劣化したコンクリートに走った深い亀裂から、長い雑草が伸びている。
二つの通りに挟まれた、かつてちゃんと活用されていたあろう家二軒ぶんの土地が、なにも建てることができない状態に潰してある。
うわあ、気持ち悪いなあ、と思いながら、もう一つ裏の通りに行ってみることにした。
するとそこには、とても大きな公園があった。
広い敷地の中に様々な遊具が置いてあり、子供が遊びに行くとしたら絶対にこちらだろう、と思わされる。整備も行き届いていて、トイレもきれいに掃除されていた。
後で調べたところによると、実際、その地区で行われる祭りなどの行事には、こちらの広い公園が使われるらしい。
いよいよあの小さな公園は「ダメな場所」なんだな、と悟ったという。
北九州のどこか。住宅街の中。封じられた状態の家二軒ぶんの土地が、ある。
◇この文章は猟奇ユニット・FEAR飯のツイキャス放送「禍話」にて語られた怪談に、筆者独自の編集や聞き取りからの解釈に基づいた補完表現、及び構成を加えて文章化したものです。
語り手:かぁなっき
聴き手:加藤よしき
出典:"ザ・禍話 第十九夜"(https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/630626112)より
禍話 公式twitter https://twitter.com/magabanasi
☆高橋知秋の執筆した禍話リライトの二次使用についてはこちらの記事をご参照ください。