クラウドリアルティに出向してます
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クラウドリアルティに出向してます

水井大/弁護士

2020年7月末で弁護士法人淀屋橋・山上合同を一旦退職し、8月からクラウドリアルティに入社しました(期間限定付きの転籍ですが、外向き出向と説明しています)。CRは、不動産を対象事業とする投資型クラウドファンディングを提供しているフィンテック事業会社です。

弁護士5年目の大きな転換期になるので、淀合での仕事内容や専門分野の確立に関する振り返りと、今後のことを記したいと思います。もう少しで今年の司法試験も終わる頃なので、受験者や合格者の方にも参考になれば嬉しいです。

1.淀合にいた頃の振り返り

淀合は大阪を本拠とする法律事務所ですが、東京四大法律事務所との対比で、いわゆる大阪四大事務所のひとつとされています。大阪と東京の二拠点があり、2020年8月現在で弁護士63名(外国法弁護士含む)、事務局67名が在籍しています。 

淀合の大阪事務所は珍しいことに午後11時で強制的に事務所が閉まってしまうので、私の弁護士業務のスケジュールは、だいたい午前8時には事務所に来て午後11時頃までの集中が切れたタイミングで帰宅し、12時くらいまで仕事をするといったものでした。他の先生方も朝方の人が多く、朝10時にもなれば皆さん事務所にいらっしゃったと思います。

お休みですが、私は特段の用事がない限り、土日も、また年末年始やお盆なども基本的にリズムを変えず、結局5年間もそのような弁護士生活を過ごしました。「趣味が仕事」で「仕事が趣味」という感じで、それでもストレスフリーな状態でした。歯磨きのように習慣化してしまっているので、むしろそうしないと落ち着かない気持ちになります‥。優秀な同期には「仕事量だけは負けない」と、こっそりと自分と約束していましたのですが、土日には溜まった仕事の他翌週の打ち合わせや裁判の予習やドキュメントなどをしてしまうようにしていました。

繁忙のイメージですが、淀合では大規模なプロジェクト案件を同時に複数件担当し(そして、それが一気にはける)まるでジェットコースターに乗っているかのような繁忙の浮き沈みはなく、私の場合には例えるなら「いつもおなか一杯」の繁忙イメージでした。案件規模の違いや顧客層も多分に影響していると思いますが、大阪事務所ではよくも悪くもミドルレンジの案件が多いため、案件数でいえば3年目までは常時40件程度、5年目にもなると常時20件くらいだったと記憶しています。 

2.業務内容と専門性の確立

淀合では、とにかく自由闊達な風土を大事にしています。基本的に協調性がないといえば確かにそうで(遠からず動物園状態)「サラリーマンはいらない」と公言しています。ですので、専門分野の確立の仕方に関して、決められたルールは特にありません。3年間をかけて半年ずつ専門部を異動していく緩やかなローテーション制を敷いていますが、それを回り終えた3年目以降も、3年目までもの期間も、専門分野の確立に関して誰から指示を受けることはありません。自分なりに、日々の案件を通じて、徐々に得意分野を確立していきます。そして、最終的に、淀合ではやや早い印象もありますが(その是非はともかく)実働6年目にはいわゆる経営者弁護士として「パートナー」になります。

私の場合、出向前直近1年の業務内容は、①いわゆるジェネラルコーポレートを常時担当しつつ、重点的に、②M&A、③伝統的金融機関や暗号資産業者をクライアントとする金融関連業務を取り組んでいました。稼働時間の比率でいえば概ね3:4:3のイメージでしょうか。そのうち交渉・訴訟は1,2年目には常時20件程度あったと記憶してますが、4年目以降にもなれば、常時10件あるかないかで推移し、所内の中ではかなり少ない方でした。  

重点的に取り組んでいたM&Aでは、クライアントに恵まれ数多くの仕事をご一緒させていただきました。大阪本拠の事務所だからこそですが、良くも悪くもミドルレンジの案件が多く、調査パートを何分割にも分け担当を割り振り各々細分化した業務のみを取り組むのではなく、連絡窓口はもちろんのこと、スケジュール管理からスキームの決定、DDや最終契約の交渉・締結、クロージングまで、一連の流れを窓口として担当していました。ですので、バイサイドの法務アドバイザもですが、セルサイドの法務アドバイザも多数経験することができました。弁護士登録以後出向までに、数億~数百億のミドルレンジ・ディールで50件程度はクロージングしたかと思います。今後も、重点的に取扱っていきたいと考えています。

どうして(どうやって)この専門性を確立したのかですが、(専門分野の確立の仕方は淀合の中でも本当に人それぞれだと思いますが)私の場合は完全に所内・所外の「縁」に恵まれました。縁といいますか「運」とも呼べますし外部的要因といった方が正確かもしれません。つまり、パートナーやクライアントとの相性、タイミングといった自力の範囲外の要因を指します。

まず入所時にM&Aを専門にしようという気持ちは全然ありませんでした(倒産と渉外とお伝えしていた記憶があります)。ある大きな案件にかなりコミットしたことをきっかけとして、「これは最高に面白い」となり、それ以後案件を重ねるほどに得意になりました。そして、所内外で取扱い経験を公言し、自ずと「では次も」と自然にループに入っていきました。他の分野の仕事を断ることによって専門業務分野の「選択と集中」をしたこともありません。このように、狙ってではありませんでしたが、おそらく淀合と似たような中規模事務所での専門性確立プロセスとしては、多かれ少なかれ同じようことが妥当するかと思います。

3.フィンテックとのかかわり 

もうひとつ業務分野である金融領域の業務に関しては、もともと伝統的金融機関の業務は日常的に行っていました。暗号資産やその技術的基礎となるブロックチェーン技術には弁護士3年目に初めて触れ、事業者側でもそうでない側でも携わることが多くなりました。両極端ではありますが、伝統的金融機関のいわゆる中央集権型金融の仕事もしつつ、その対極にある分散型金融の世界観も身をもって体感した形です。

ご存知の方も多いと思いますが約3年前といえば暗号資産価格の乱高下、訳の分からないICO(イニシャル・コイン・オファリング)プロジェクトや明らかなポンジスキーム案件が、散見されました。それらをイノベーションを阻害させまいとしつつ、適切に規制運用するため頭を悩ます金融庁をはじめ自主規制団体など、多くのステークホルダーが登場しました。なにより、時代の濁流にのみこまれて翻弄された事業会社も大変だったと思います。「カオス」という表現以外あてはまらない状態だったと思います。

当時アドバイザーの立場として、この黎明期において身を置く機会に恵まれ、またとないほどのイノベーションを体感することができました。今振り返ると「抜群に面白かった」のが率直な感想ですが、あくまで振り返るとであって、当時は一緒に濁流にのまれてました・・。 

また、案件以外でも、大変ありがたいご縁をいただきました。中央総合LOのT先生が金融庁のフィンモニ室から戻られたタイミングで大阪弁護士会研修「暗号資産の基礎と諸問題」と題し、研修講師をご一緒させていただきました(とても懐かしい写真を貼り付けます)。続いて、大阪商工会議所のSさんのご尽力で「法律面から見た暗号資産の今」というタイトルでBLOCKCHAIN MEETUPでもお話しさせていただきました。

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その後も、具体的な事案を通じて、「なりすましによる暗号資産流出事案における対応」(金融法務事情No2134)や「STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の実務上のポイント」(旬刊経理情報No1580)の各寄稿もさせていただきました。

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徐々にですが暗号資産に関するプラクティスを確立している感覚もあって、とても充実していたと思います。ここでもやはり、事業者や同分野を扱う先生方などとのご縁に恵まれたというほかない、と思っています(執筆などはLinkedinでも整理しています:linkedin.com/in/dai-mizui)。一方でそれと同時に、暗号資産にかかわる案件を担当する度に自分の力不足を痛感していました。ひとつの要因として、暗号資産に関しては資金決済法から金商法への規制のアーキテクチャの大きな変化があります。そこで、金商法をはじめとする資金決済法や犯収法などの「金融規制」を、本質からしっかり勉強したいという気持ちが強くなっていきました。

 4.クラウドリアルティへ  

そうした思いを強くもっていたところ、ちょうどマザーズ上場を果たしたスペースマーケットに出向をしていた先輩弁護士からFintech協会理事でもある鬼頭社長が率いるクラウドリアルティを紹介していただきました。事務所のクライアントというわけでもなく初めてそのとき知りました。

クラウドリアルティが足元で行っているサービスは「不動産を対象とした投資型のクラウドファンディング」です(「株式投資型」クラウドファンディングではありません。また、不特法上のいわゆる不動産型クラファンとも異なります)。

それと並行して、軸足をBaaS/Embedded financeのいちプレイヤとして、プライマリーのシステムをAPIで提供する事業への転換も予定していました(その後、BaaSをローンチしました)。また、国内ではまだ概念レベルに留まる「レグテック・スプテック」(その後、金融法務事情No2150で論考として掲載頂きました)、更にデジタルデータのキャピタライゼーションなどにも、実現に向けて一緒にチャレンジしていきましょうと面談時にお話し頂きました。  

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私としては、いわゆる(伝統的資金調達の手段とは区別された)オルタナティブファイナンスの事業者の中で色々チャレンジしていくことは、これまで伝統的金融機関と分散型金融の両極端しか経験したことのない自分にとって、この上ない機会だと思いました。

また、もうひとつ大きな決め手となったのは、既存クライアントによるM&Aと(暗号資産・ブロックチェーン事業をはじめとする)Fintechにかかわる弁護士業務について、出向中も、引き続き行うことをご快諾いただけたこともあります。意図として、既存クライアントには迷惑をかけられないこともありますし、私個人としても、これらの弁護士業を継続することで最新情報へのタッチポイントや信頼関係が切れてしまわないようにしたいと考え、こうした形を希望していました。淀合の弁護士の力も借りつつ、出向先の業務を5割程度行いつつも、既存の弁護士業務も5割程度、継続的に行っていけたらと考えています。

自分は芽が出るのがすごい遅いタイプだと自覚しているので、こつこつ勉強してフィンテック領域を自分なりに咀嚼していきたいと思います。脈絡ありませんが、社内外のみなさまにおかれましては、ご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願いいたします!

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水井大/弁護士
フィンテックベンチャーに出向中の弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)