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2020年10月の記事一覧

レインコート

雨の降らない午後に
彼女は立っていたんだ
レインコートを着て
流星が落ちた様な
不思議な顔をしてさ
確かに吹雪の中を
裸で歩いても良いし
誰も気にしないだろう
皆が麻痺しているから
何時の間にか彼女は
視界から消え去った
レインコートを残して

アイスニードル

他人の精神に入り込む
サイコダイバー
深く沈んだその先は
闇も光も無い空白だった
人に心があったなら
きっと美しいだろう
そう思いながら無数の
氷の針に貫かれて
そのまま深淵へ埋もれ
存在を失くしてしまった

ノヴァヤジェットシティ

許されざる者達が
集まって徒党を組み
造られた街の中で
唯一つの正義は
純粋な暴力なのさ
何時しかジェット団と
言われるようになった
彼らは何も信仰しない
神は今も見当たらないから
強かに輝いて煌めく
ノヴァヤジェットシティ

アンダーシャークシティ

吹き溜まりが集まり
この街を支配する
危険なシャーク団
流れ者達が立てた掟を
破る事など叶わない
だから派手にかまそう
命は平等なのだから
武装した手を空に掲げ
争いは延々と続く
何れ終わりを迎えるなら
叫んでくれその名前を
アンダーシャークシティ
此処が俺達の居場所
夢の欠片すら残らない

眩し過ぎる程の

乾いた夜の中に
隠そうとした秘密は
暴かれて醒め切った
眩し過ぎる程の
他人の視線が苦しくて
逃げ惑う弱き者
消えない月に追われ続け
限りある命を散らした

ローティーン・ガール

秘密の場所に隠れて
太陽を作った少女
何もかも気に入らない
世界を作り替える為
都会の片隅に現れて
太陽を投げ捨てた
何一つ灰には為らず
刻々と時を刻んで
彼女は退屈な日々へ帰る
頭を抱えたくなる様な

斑の蝶

最果ての地で
ロックンロールを
奏でる少年
気に入らない事は
沢山あるけど
大切な事すら
まだ見つからない
何処からか現れた
斑の蝶はきっと
疑問など持たずに
飛び続けるだろう
その羽根が千切れ
羽ばたけなくなっても

踊り子ルシア

ナイトクラブに集う
悪人は夢を見ない
彩られた現実が
色褪せてしまうから
スポットライトの下
踊り続けるルシア
ささやかな夢を抱き
今日をやり過ごす
何時か光を浴びる
その日を心に仕舞って

私が好きだった事

雨に濡れたアスファルト
この夜は私だけの物
誰にも見えやしないなら
全て包んでしまいたい
閑散とした街の中に
手を入れてかき回せば
色と音とが混じり合い
世界に虹を掛けるでしょう
遠くの丘で眺めた空は
美しい程残酷だった

軽薄

僕は適当なジョークを
流せずに怒り出す
上手く演じられない
軽薄な道化師の様に
貴方は適当にいなして
今日をやり過ごす
同じ明日が続いても
淡々と機械みたいに
息を吐き続けるだろう
まともな振りをして

遠い朝日

しがない夜を
幾つ越えても
変われない為らず者
手を伸ばそうが
届かない物ばかり
追い掛けて見失う
虚しさは埋まらずに
遠い朝日を待つ
それが来なくても

ピエタ

磔にされ躯を晒し
母に抱かれた切人は
神に為る事を知らずに
息絶えてしまった
12体の天使達が吹く
ラッパの音で目覚め
新しい體を手に入れる
望んではいなくとも
それが定めならば
受け入れるのだろう
否応も無い儘に

オパール

山猫は眠らない
少し夢を見るだけ
そう教わった
嘘か誠かは
知らないけれど
オパールの首飾りを
何時も付けていた
彼は此処にはいない
星を探しに逝くと
話して消え去った
凍れるこの雪国から

麗しき絶望

細やかな願いは
叶わずに消えて
地にまみえる夜が
砕け壊れたよ
確かに見えた光すら
もう二度と探せない
麗しき絶望の中へ