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2020年1月の記事一覧

羊と沈黙

弱い者は踏み倒されて
その顔を地面へ手向ける
強い者は踏み付けた後
その足を緩めたりしない
群れる羊が祈るのは
身代わりの山羊を探す為
それが藁でも構わない
盾になるなら気休めでも
札束を叩き買い占めるだろう
救えない自分に気付けずに

ドラッグクイーン

薬が見せる幻から生まれた
まがい物の蝶を眺めて
楽しそうに笑っていたね
君が望むのならTDLの
王女にも為れるだろう
大丈夫さ誰が演じても
この世界は巧く回るから

メイファ

おどけてばかりで
本当の事は話さない
悲しみは何時も
僕に見えやしないから
メイファ
君は優し過ぎる
自分から進んで泥を
被る事すら厭わない
それは時に大きな
誤解や軋轢を生み出す
メイファ
何時か君を思い出す時
僕は泣けるだろうか

観覧車はもう回らない

初めだけ持て囃されて
直ぐに皆いなくなる
あの街に立つ観覧車は
もう二度と回らない
錆び付いた月明かりに
目が眩み泣いたりもする
僕は時にそう思う
ロマンティックなこの夜に

素敵な彼女

キョクトーのエンジンを積み
組み直した単車を飛ばして
ミルクホールへ向かう不良
走る景色が歪んだならば
全てがここから始まるのさ
愛しい人を迎えに行くには
少し服が汚れているけど
あの娘はそんな事を気にしない
とても素敵な女の子だから

ラストダイブ

錆びて朽ち果てた鉄を
彼は延々と打ち直す
鉄がどれだけ貴重か等
使う側には如何でも良い
幾らでも買えるのだから
切れ端を歯牙には掛けない
最下層の中で焼け爛れた
鉄を淡々と打ち延ばす
それは生きる辛さの様に
纏わり付いて離れない
平等な死が隣に訪れるまで

ギャランGTO

色褪せない物を見せてやる
狂おしいギャランGTOが
そう僕に話しかけて来た
道も街も国も空さえも
置き去りにして加速する車体
君は公道を支配するだろう
そう囁かれ僕は王に為った
使役される定めと気付けずに
全てを自由に動かせると信じて

無音

年老いて枯れて逝く
虚しさから目を逸らし
遠くで笑っていたね
罪無き迷い子見たいに
都会の交差点はまるで
当てなく彷徨う老人の様だ
皆が何処かへと向かい
何時の間にか消えてゆく
貴方は違うのかと
問い質しても届かずに
音の無い孤独が
死にたい夜を虚飾する

辛い噂を聞いたんだ
直ぐに黙らせるから
耳を塞いでいてくれ
匿名の嘴に刺され
壊れちまうのは御免だ
酷い噂を聞いたのさ
見せられない事をするから
目を閉じていてくれ

紙吹雪

壊れたワルプルギスの夜
見えない何かに背を押され
地下鉄に飛び降りる少女
狂った夕日が安い胸を
貫いて何処にも逃げれない
舞い落ちる紙吹雪の中で
無垢な少女は魔女へと変わる
誰にも傷付けられない様に

偽りの命を

老いさらばえる事の無い
貴方は時すらを超えて
永訣を歩み続ける
それがどれ程の苦痛か
蜉蝣の様な命しか持たない
私には見えなかった
その悲しみに触れようと
何度も頬に手を伸ばしても
触れる事が叶わずに
無力な私は偽りの涙を零す
人の真似さえ上手く出来ずに

ボーンナイフ

アダムの背骨とイブの心で焼いた
ボーンナイフを握りしめて
僕は異国の戦場へと向かう
鉄の月から差し込む明かりに
照らされたゲリラ兵を狩り続ける
荒れ果てた未開の土地と罠を
巧みに操る彼らに僕達は
少しづつ削られて病んでしまう
負ける事を許さない祖国が
全てを枯らす雪を降らせて
皆がその場で笑いながら狂い死んだ
骨すら蝕まれ十字を切る暇も無く

カーバイトランプ

隠し切れない秘密を秘めて
姉と僕は遠くへ逃げ出した
夜の道は暗くて怖くて
気が狂いそうに為ったけど
カーバイトランプの炎だけが
僕達を包んでくれたね
体と心を分け与えてくれた
あの日の父と母の様にさ
これからはまだ見えないけど
出来るだけ離れないで
たとえ二人が間違っていて
罰を受ける時が訪れようとも

人形使い

道を踏み外すエリート
急な坂を転げ落ち
誰かの笑い声が響いた
灰色で染まる街角に
遠くから操られてる人達で
社会は回っているのなら
彼の生も死も同じく
決められてしまうのだろう
心無きあの人形使いに