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2019年12月の記事一覧

黙示録

予言された未来に
辿り着いたあの男は
自分の国を立ち上げて
王として君臨した
あの国は自国を離れ
権力を持つ事を許さない
圧倒的な戦力を傘に
爆撃機で全てを焼き尽くす
森も川も街も人も
跡の形が無くなる迄
平坦な残骸が拡がる中
黙示録は風に舞い
何処かへと消え失せた

灰に為れない

黒曜石のナイフが
夜を連れて来る頃に
8頭のトナカイは
コークを売り捌いてる
凌げない半端者は
社会でも落ち着けず
番号を付けられた檻で
処分される日を待つ
灰に為れないと嘆いて

虹の盗賊団

人を人と成しえているものが
例え何であろうとも
定めからは逃れられないと
虹の盗賊団が解き放つ闇
ささやかな自由を求める者に
喜々として訪れる老いと病
彼らは死すら平等でないと言い
新たな希望を奪い続ける
名前を無くしたこの国の片隅で

ファントム

奇跡を望む少女の
願いは叶わずに砕けた
外は幸せに包まれて
誰もが楽しい振りをする
幻想に浸らなければ
生きられない人の中で
本当の事を話したならば
全て壊れてしまうから
打ちのめされた少女は
雑居ビルの奥へ消えたよ

テネシーワルツ

ジャズを知らない僕は
月の河を泳げずに渡れない
それが悲しみなのよと
黒猫は僕を静かに宥める
キングレコードから流れた
テネシーワルツに合わせ
黒猫は街の雑踏へ僕を誘い
手を繋いで共に踊った
夜が擦り切れてしまうまで

生まれ変わるならば

青が青で無くなった日に
君と永訣の時を迎えた僕は
這い寄る混沌に変わり
全ての希望を塞き止めた
口元から零れた朱色が
純白の雪を燃やしても
それを止められる者はなく
僕は炎に包まれてしまう
生まれ変わるならば
次は貴方に言えるだろうか
その心とささくれた唇さえも
本当に欲しかったのだと

雪国でピアノを

凍結した路面を
走り回る子供達は
ピアノを弾いたりしない
楽しみは他にあるから
雪国で生まれた人攫いは
アーケード街が眠る頃
独りでピアノを弾く
楽しみなんて探せずに
罰を受ける事しか叶わない
己から視線を逸らして

マジシャンズイエロー

黄色いテープを手首に巻いて
楽しそうに貴方は笑う
もう自分の事も名前さえ
分からなくなっているんだね
僕に魔法が使えたならば
数多の時を巻き戻して
貴方が太陽だった日々に
二人で帰る事も出来るけど
嘘しか吐けない僕には
貴方を騙す事しか叶わない
此処は天国なんだよと

潮時

本当は分かっていた
これ以上は無いと
それでもしがみ付こうと
あらゆる手を尽くした
要らない者は捨てられる
神と称えられようが
全ては過去でしかなく
革張りの椅子から落とされ
名も知らない誰かが座る
ゴッドファーザーは絶望を掴み
燃えるトマト畑で命を絶った

セドリックを転がすヤンキー
不安を隠せない富豪
点と線が繋がる様
罠を回収するエリシア
この狭い街は何時も
見えない不安に蝕まれ
皆何処か苦しそうだ
それでも手を合わせて祈る
全ては許されると信じて

悪魔と踊れ

鉄の月が欠けて
明かりは届かない
見失う物ばかりで
自分が誰か分からない
遠景から囁くあの
悪魔と踊れ
そうすれば全てが
この手に収まり続ける
さあ手を取り合って
悪魔と踊れ
二度は生きれないならば

帰還

あり触れた季節が終わり
誰もが幸せな振りをする夜に
鹿を狩りに行くハンター
夕日が落ちて溶けたあの日
志願して向かった戦場で
延々と続くシシリアンルーレット
仲間達は命を落とし続けて
自分だけが取り残された
賭けの対象でしかない存在に
価値があると言うならば
其れは唯一つ生きている事
それ以外に意味はない
帰還して置き去りにされた心は
次の戦場を求めて昂る
何処にもいない敵を求め
彼は今日も鹿を撃

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カモメ

夜にフードを被る引き籠り
揺籃には帰れないと知り
後悔の涙を零して泣いた
暗闇に紛れるカモメの様だと
時計の針を何度巻き直しても
生まれる前には戻れない
諦めて進める事は出来ると
死を自らの意思で掴んで消えたよ

夢現

出来もしない事を
何時も思い描き
現から目を逸らして
夢を見ると言うならば
もう狂って終えば良い
誰も貴方を気に掛けず
老いさらばえ消えて逝く
黄昏の中を沈みながら