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2019年3月の記事一覧

その手は何時も見えない

朱色に染められた命を
還す時が来たならば
静かに眠りたいけれど
其れは叶わないだろう
法を守らない者達は
掟にのみ従い生きる
その手は何時も見えなくて
気付く事すら間に合わず
永遠の死に抱かれてしまった

エメラルドに似た瞳から
涙が滲んだのなら
開演の赤い幕が開くのさ
鳴り止まない歓声に
包まれたなら始めよう
僅かな嘘はポケットに
折り畳みそっと隠して

さらば愛しき日々よ

蜘蛛の糸を手繰り寄せた先に
幸せが待って居るなら
少しだけさよならをしよう
何も出来ないと気付き
絶望して膝を抱えた夜や
愛しき人がそっと掌から
すり抜けて行った朝を抱えて

T500

次の季節を見れないと知り
T500に跨るパンクス
契れないチャンバーが奏でる
割れそうな音を奏でる為に
特攻ブーツで踏み下ろすペダル
何もかもが色褪せて
自分を忘れる日が来ても
借り物の命は揺れて
安い躯に真っ赤な夕日が流れた

薔薇と毒薬

薔薇と毒薬に溺れた親愛なる姉

美しい時は過ぎて唯取り残される

時を神は選ばずに私は孤独を彷徨う

他人の幸せを願いはしない

人は皆独りなのだから

コイントス

コインの裏表で決まる生と死
其処に理由はない全てが定め
彼はコイントスをして占う
確率で揺れ惑う命に何を思おうが
答えを外せば唯死ぬだけだ
彼もまたコインに魅せられた
傀儡でしかないのだから
その命が土に還る刹那まで
危険な遊戯は終わらないのさ

眠れないハリネズミ

簡単な道に迷わないで
ほら照らしてあげるから
誰かの言葉に嘆かないで
そう貴方は前を向けるわ
眠れない辛さは誰とも
分かち合えないけれど
内気なハリネズミの心を
如何か持ち続けて欲しい
其れだけを願っているから

賭けぐるい

紫の煙をくゆらせて
むせ返る夏の日の午後
確かめた命の鼓動が
止まるまで今は燃やそう
揺れ惑う言葉より
賭けぐるいたいのさ
札束に何を込めようが
そんな願いは叶わない
残骸を引きずられるより
一握の灰すら残らない程
枯れてしまいたいんだ

願いは叶わない

煙草が小銭で買えた頃
煙と共に吐き出した憂鬱
上手く生きれない俺を
受け入れてくれる枠はなく
傷で埋め尽くされた手を
隠す事すら叶わなかった
はした金で跳ばした単車を
買い戻す事さえ出来ずに
火酒で紛らわした気持ちが
淡々と夜を終わらせて
見飽きた朝日に揺らされる

あの娘は死んだ

あの娘は星の無い夜に死んだ
ダダリオの弦を胸に仕舞い
あの娘は遺書を残さず死んだ
月で作った服を着たまま
あの娘の名前を俺は知らない
太陽に遮られたから
今日も何処かで誰かが死んだ
狂いそうな風に吹かれて

冷たいアイドル

今日も同じ顔をして笑う
其れが仕事さ当たり前だろ
御機嫌を取り続ければ
飽きられるのが遅くなる
明日も同じ顔をして笑う
和やかに穏やかに
彼女は冷たいアイドル
捨てられる日に怯え
明後日も同じ顔をして笑う
腰掛ける椅子がある限り

命の鬼火

突っ掛けの儘で歩く街は
何時もと変わらぬ喧騒に塗れ
擦れ違い際に因縁を付けて来た
半端者を地面に蹴り倒し転がす
不器用な奴は何処へもいけない
俺達は何かに負けたのかな竜二
お前もただ気に入らない事を
飲み込めないだけだった筈だろ
燦々と揺れ惑う命の鬼火が
お前をまたヤクザ者に戻した
もう後が無いと知りながら

狭い箱庭

狭い箱の中に抱かれた
ニートは外から目を伏せる
いなたい夜を繰り返し
行き場も逃げ場も探せずに
削られる命がやがて
完全に擦り切れるまで
見えない明日に怯えても
最後は骨すら残らない

欲望

優しい言葉ばかりを
口から零す貴方の
その手をそして躯を
求めずにいられない
卑しい人だと私を
どうか軽蔑して欲しい
確かな許しと
溢れそうな欲望を
離れ逝くのが定めなら
如何か美しい刹那に