見出し画像

【若手対談】いまどきの若者が求める「社会とお金を育てる投資」vol.3 ~ファイナンシャル・インクルージョンのための共創関係~

「最近の若者はまったく・・・」などと言われていたのは昔の話。10代後半や20代、30代前半といった現在の若い世代の方たちは、「社会全体をより良くしたい!」という社会貢献や「将来を見据えて資産形成したい!」といった投資に対する地に足の着いた関心、意欲が高まっています。それでは、実際にいまどきの若者は、どのような考え方で、社会や会社への想いを持ち、また、自身のライフスタイルを望んでいるのでしょうか。

そこで、この『【若手対談】いまどきの若者が求める「社会とお金を育てる投資」』シリーズでは、クラウドクレジット株式会社、株式会社丸井グループ(グループ会社含む)それぞれの20代~30代前半の若手社員を対談者として、「社会とお金を育てる投資」をテーマに、本音トークをしてもらいます。

本シリーズ第3回目の対談者は、持田智裕さん(クラウドクレジット株式会社)と森下雄斗さん(株式会社丸井グループ)です。なお、以降は敬称略といたします。

注:本対談は2021年1月27日に収録したものです。現在の社会情勢を踏まえ、リモート対談形式を採用しました。

対談者紹介

持田智裕
クラウドクレジット株式会社 商品部副部長
1989年生まれ。東京大学経済学部金融学科卒業。第一生命保険にて外国債券、新興国ソブリン債の信用リスク分析を担当。同社在職中には政府系金融機関に出向し、アジア地域のプロジェクトファイナンス案件の審査等にも従事。その後経営コンサルティング会社を経て、クラウドクレジットに入社し、商品部にて海外資金需要者との折衝や企業審査などのファンド組成業務を実施。

森下雄斗
株式会社丸井グループ 共創投資部 投資担当リーダー
1992年生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語専攻卒業。丸井グループに入社し店舗勤務を経た後、本社営業部でイベント開発やテナントリーシングを担当。2019年4月より現職。主たる担当先に、同社ほか途上国向け小口融資サービスを展開する五常・アンド・カンパニーなど。趣味はサウナとゴルフ。

1. 丸井グループが取り組む「共創投資」

持田:丸井グループさんのFinTech(フィンテック)事業というと、エポスカード関連のキャッシュレス決済やポイント運用などが思い浮かびます。たとえば、御社のグループ会社であるtsumiki証券さんでは「ポイントで投資(※1)」の取組みを実施されていますよね。そういった領域のフィンテック事業とあわせて、当社のようなフィンテック企業への投資も行っていらっしゃるのですか?

※1 tsumiki証券の「ポイントで投資」について、詳しくはこちら( https://www.tsumiki-sec.com/point_toshi/ )をご覧ください。

森下:それは私たちが取り組んでいる「共創投資」とは何かという話につながると思います。その点を簡単にご説明いたします。大きく分けて3つの領域に投資することを私たちは考えています。

1つ目は、共創ビジネスとして、リテールテックやD2C(※2)系の会社などを投資対象としています。会社が持つ世界観をお客様に訴求して、お客様が「この会社はこういうところが素敵だな」と思ってそこの商品を買ってくれるといったビジネスが昨今とても注目されています。そのエコシステムを私たちも推進し応援するために、直接小売り事業にかかわる分野として投資領域にしています。また、約1年前にはこのエコシステム支援のため、D2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)という子会社も設立しました。

※2 D2Cとは“Direct to Consumer”の略で、小売店などの仲介業者や店頭に商品を出すことなく、メーカーがECサイトを構築し、直接ユーザーに販売するビジネスモデルを指します。

2つ目は、サステナビリティ(持続可能性)の領域です。脱炭素化や廃プラもサステナビリティの領域ですね。私たちはこの領域で「30年後、50年後の日本、世界、地球において、私たちは何をメッセージとして、バトンとして残せるだろうか」ということを考えています。その意味でたとえば、「将来世代」と呼ばれる2000年代生まれの起業家などの未来を担っていく方々への支援についても、持続可能な世界をつくっていく文脈で私たちは掲げています。

最後の3つ目が、ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂、※3)です。私が主に担当させていただいており、クラウドクレジットさんに出資したのもこの文脈になります。実は私たち丸井グループは、日本で初めてクレジットカードを発行した企業です。私たちは「信用の共創」をコアバリューとして掲げております。この背景には、私たちのビジョンである「二項対立をなくす」があります。世界でも、日本国内でも所得格差が問題となっています。そのなかで、私たちは「国内外を問わず、若者を中心にすべてのお客様に対して、平等に金融へアクセスする機会を提供したい」という想いが強くあります。

※3 ファイナンシャル・インクルージョンについては、以下もあわせてご覧ください。

持田:スケールの大きい話で羨ましいです。

画像1

         森下雄斗(株式会社丸井グループ)

2. 丸井グループが共創パートナーを選ぶ決め手

持田:当社を含めたフィンテック企業への投資の是非を決定される際、その判断軸や視点は何がありますか?

森下:はっきり1つ挙げられるのは、私たちの目指したい世界、将来のビジョンと親和性がある会社かどうかという点です。クラウドクレジットさんへの出資を具体例にすると、御社は「社会的インパクト宣言(※4)」を出し、社会的に意義のある事業への投資に注力しようとされています。これは私たちが考えるファイナンシャル・インクルージョンの実現、かつ、サステナビリティ社会の実現と同じ方向性で、世界観が合うと思いました。

※4 クラウドクレジットの「社会的インパクト投資宣言」について、詳しくはこちら( https://crowdcredit.jp/about/declaration/ )をご覧ください。

丸井グループの理念として2050年までに実現したい社会を『VISION BOOK 2050(※5)』というかたちで発刊しております。このなかで、たとえば2030年までに投資を通じたファイナンシャル・インクルージョンを世界20カ国以上で展開することや、2050年までに1,000万人以上の世界の方々への金融サービスの提供することを目標として掲げています。ただ、丸井グループが実際に海外でそういう事業をしようとしても、現実問題として言語や文化の壁を乗り越えるのにコストが大きくかかり、0(ゼロ)から実施するのはかなり大変です。そこで、私たちの理念を代替して実行いただける共創のパートナーとして投資する側面もあります。

※5 丸井グループの『VISION BOOK 2050』について、詳しくはこちら( https://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/pdf/s_report/2018/s_report2018_a3.pdf )をご覧ください。

3. クラウドクレジット、ファンド組成の旅路

森下:持田さんは御社の商品部でファンド組成に携わっているとのことでしたが、たとえば、御社のHP(※6)に新しい貸付先、「こういった会社に貸し付けますよ!」というのが、世に出るまでに、どのようなプロセスを辿っているのでしょうか?

※6 クラウドクレジットのファンド情報について、詳しくはこちら
https://platform.crowdcredit.jp/fund/ )をご覧ください。

持田:ファンド販売に至るまでのプロセスは大きく4段階に分かれます。最初の段階は貸付先候補の発掘です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する前は定期的に海外に出向いて案件を発掘していましたが、徐々にコネクションができてきたこともあり最近は既存の貸付先から紹介をいただくことも多いです。2段階目は、貸付先候補との交渉です。どのくらいのお金を借りたいのか、現在の事業の状況、利益がしっかり出ているか、バランスシートは健全かなどの確認を行ったうえで、実際に貸付に至った場合の金利交渉を行います。この段階が最も時間がかかり、大体4~5ヵ月間ほどになります。

3段階目は、コロナ禍の現状では難しいですが、現地訪問です。実際に現地で貸付先候補の経営陣と面談し、細かい点を確認するというプロセスを踏んでいます。コロナ禍のなかでは、オンラインミーティングを開催することで代替しています。ただ、規制上の話などもありますから、事前に通知してもらった貸付先候補やその経営陣の登記簿やパスポートをその場の画面上で確認するなどしています。

最後の4段階目として、当社の投資委員会の審議と社内準備です。当社の投資委員会の審議では、「その貸付先候補に貸付を実行するために、ファンド組成を行うかどうか」を判断します。担当者の独断で意思決定することはできないため、社内共通の与信判断ツールを用いて合議で組成の可否を判断しています。そこでファンド組成が決定した場合、当局への届け出や当社投資家へ訴求するためのウェブページ構築といった社内準備になります。

森下:やはり厳しい組成プロセスを踏んでいらっしゃるのですね。

画像2

       持田智裕(クラウドクレジット株式会社)

4. ファイナンシャル・インクルージョンのための社会的インパクト投資

森下:御社はどういうところに着目して貸付先候補の会社と対話されているのか教えてください。

持田:たとえば、昨年(2020年)12月に「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズ(※7)の販売を開始しました。組成にあたって、その裏側にはお断りをした貸付先候補がありますから、一定以上の厳密な判断軸があります。このファンドの場合、当社のなかでは【社会的インパクト重視ファンド】(※8)という位置付けになりますので、リスク・リターン・社会的インパクトの3軸です。このファンドの貸付先はリスクとリターンのバランスが取れており、加えてペルー国内の女性の方に融資を行うことでファイナンシャル・インクルージョンにつながるという社会的インパクトも認められました。これら3軸からの判断を決め手として、ファンド組成につながり、日本国内の投資家の皆様に提供することになったというわけです。

※7 クラウドクレジットが提供する「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズについて、詳しくはこちら( https://crowdcredit.jp/info/detail/info-1364/ )をご覧ください。

※8 クラウドクレジットの【社会的インパクト重視ファンド】を中心とした社会的インパクト投資の取組みについて、詳しくは以下もあわせてご参照ください。

森下:社会的インパクト投資としてファイナンシャル・インクルージョンにつながるというのは、私たちの「共創投資」からしてもまさしくといったところですね。最近、「ファイナンシャル・インクルージョン」の共創チーム(※9)が丸井グループ社内で立ち上がっていまして、私もそのメンバーですので一生懸命取り組みたいと思っています。一緒に良い世界をつくりたいですね!

※9 丸井グループでは投資先等との共創をより推進していくため、執行役員をリーダーとする「共創チーム」を組成し、本業とのシナジーを加速すべく、業務を推進しています。

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?