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CD Review : 豊崎愛生『Caravan!』

豊崎愛生『Caravan!』
(SMCL-716) ※通常盤
RELEASE DATE:
LABEL:ミュージックレイン
CD:3100円
DOWNLOAD (iTunes):2139円 単曲255円
Track-List
01.それでも願ってしまうんだ
02.MORNING:GLORY
03.ハニーアンドループス
04.Cheers!
05.ランドネ
06.マイカレー
07.ライフコレオグラファー
08.walk on Believer♪
09.TONE
10.March for Peace

日本の声優による4枚目のアルバム。21年発表。

これはちょっとすごい。リードトラックである「それでも願ってしまうんだ」から聴こえてくるのはいつものようにオールドロック志向のポップス……かと思いきやサビのドラムは思い切ったEDM以降のデジタルなビート。フュージョンやディスコ、ブリティッシュ・ロックといったエッセンスを軽やかに取り入れつつもあくまでモダンなリズム感によって広がりを持たせた様はかつてのAmy WinehouseやTaylor Swiftを思わせる。

The BeatlesにThe Rolling Stones、Aretha Franklinといった存在に憧れつつも、あくまで今のアーティストである、という、豊崎愛生の音楽的な芯というか、哲学が音として鳴らされている。

たとえば2ndの頃にあった痛々しいまでのドキュメンタリー性も、3rdやカバー・アルバムの風通しの良さもすべてを引き受けた今作はそれまでの集大成のようでいて、しかしその、下品になるすれすれで心地よく鳴らされるビートが印象的なようにまだまだ野心で満ちている。豊崎愛生自身は、ベストアルバムのリリース後、カバーアルバムという企画を挟んで久しぶりのリリースとなることについて今作を『新しくファースト・アルバムを作るような』と形容していたが、豊崎愛生というアーティストがここからもう一段ギアを上げて活動していくスタート地点として完璧なものに仕上がっているのではないだろうか。

あくまでJ-POPとアーシーなサウンドへの憧れを軸足に持ちながらEDMやエレクトロスウィング以降を感じさせるビート感が新鮮に映る一枚。今年も声優ポップスの話題作が多数リリースされているが、なかでも飛び抜けてユニークなものであり、それでいてあまりに注目されていないのがもどかしくてならない。生まれながらにしてレア・グルーヴになるようなサウンド、ではあまりに勿体ない。お薦めよりももう少し強く出たいような作品。聴け。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。