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Plastic Tree Live Chronicle全部聴く(7)

Disc 12-13 「メジャーデビュー二十周年“樹念”特別公演 於 パシフィコ横浜 第一幕【Plastic】things/1997–2006」(2017年7月29日@パシフィコ横浜 国立大ホール)

[Disc1]
Intro
May Day
リセット
絶望の丘
幻燈機械
「ぬけがら」
本当の嘘
monophobia
クリーム
3月5日。
サーカス

[DISC2]
理科室
グライダー
ガーベラ
散リユク僕ラ
蒼い鳥

メジャーデビュー20周年の"樹念"にファンからのリクエストが最も多かったアルバムを再現するという公演の前半戦。1位は誰もが納得というかそれはそうだろう(1stも3rdも既にやっているし)の『Puppet Show』。Disc2は次点だった『トロイメライ』を中心としたセットリスト。

プラスティック・トゥリー初期の、或いはヴィジュアル系史に残る名盤として強い存在感を放ちながらもこの『Puppet Show』というアルバムは決してポジティブなだけではない影をバンドに落とし続けてきたと言えるだろう。だからこそアルバムの再現公演もこのタイミングを待たねばならなかったのではないかと考えてしまう。

メジャーデビュー20周年というタイミングで若書きとセンス、気迫としか言えないものに支配されたアルバムの再現に手を付けるのは簡単なことではなかっただろう。ドラムに至っては当時とメンバーから違うのだし。

1stアルバム『Hide and Seek』や3rd『Parade』の『Rebuild』的な再現公演も含む本ボックスセットだが、やはり今作に関しては特別な気迫を感じられる、ように思う。バンドにとってのひとつのテーマ曲とも言えるであろう「サーカス」をアレンジしたイントロダクションから「May Day」に入った瞬間の昂りはなかなか得られるものではない。

同封のインタビューに於いても語られているが、90年代当時にUKロックと呼ばれるものの耽美性、ゴシックだけでなくUSのオルタナティヴ、グランジの質感をも内包し、それでいて日本のロックとして高いレベルで結実した独自のサウンドは今聴いてもユニークであり新しく、またスタジオ録音はどうしても当時の録音による質感から逃れることができないが(この点に関しては好みも分かれるところだが)実演であることによってより生々しく届くところもポイントだろう。

演奏がパワーアップした一方でそのメッセージ性、当時の心情を吐露したであろう痛々しいまでにナイーヴな歌の説得力もまた失われることがなく、これはシンプルに有村竜太朗という表現者が軸を見失わないまま今なお(誤解を恐れずに言うならば)若くあることの証明なのだと思う。

2部はアルバム『トロイメライ』からの抜粋。シングルでありながらあまり演奏されていなかった「散リユク僕ラ」が採り上げられているのが興味深く、様々な要因によって入手が難しくなっているこのアルバムの魅力がその片鱗だけでも相当なものだと理解できる演奏と言える。

メンバーにとって、ファンにとって、90年代にヴィジュアル系という文化を愛したものにとって特別なアルバムの実演ライブとして、こうして記録に残ったことの幸運さとともに未だ失われることのないその衝撃に思いを馳せるため聴いても良いのではないだろうか。ボックスセットの一部に対してこんなことを言うのもなんだが、お薦めだ。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。