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#37 忘れられない味/くろさわかな

【往復書簡 #37 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈「ブルーベリーソースがのったヨーグルトムースのケーキ」との再会を目指す人生〉
水曜日:泖〈じいちゃんのお味噌汁、ばあちゃんの天ぷらまんじゅう〉
金曜日:くろさわかな〈今日は甘いかしょっぱいか〉

今日は甘いかしょっぱいか

ばあちゃんのたまごみそ

ばあちゃんのたまごみそ
いつもしっぱいする
さとうをいれすぎた
あますぎたまごみそ

ばあちゃんのたまごみそ
いつもしっぱいする
みそがおおかった
しょっぱすぎたまごみそ

ばあちゃんのたまごみそ
いつもしっぱいする
たまごがこげた
こげこげたまごみそ

ばあちゃんのたまごみそ
レシピなんてない
せいこうりつ3割
どきどきたまごみそ

ばあちゃんしんじゃったから
ときどきつくるのわたし
しっぱいするのもいっしょ
だからこんなにおぼえてる
めちゃくちゃたまごみそ
ばあちゃんのたまごみそ

インスタに上げてた詩です。
わたしの忘れられない味は、この「ばあちゃんが作ったたまごみそ」。

ばあちゃんは料理が得意ではなかったみたいで、泊まりに行ったときもお昼はカップラーメン、夜は出前とかが多かったです。そんな中、朝ごはんによく作ってくれたのが卵と味噌と砂糖をまぜて炒り卵状にしたご飯の友。

レシピを検索すると卵、味噌、砂糖、酒で作るのが基本のようですが、ばあちゃんは酒を入れないからポロポロしたそぼろ状で、色ももっと赤味噌色。ぱっと見は、肉そぼろのよう。

材料を混ぜて火を入れるだけの簡単料理のはずなのに、いつも目分量で砂糖や味噌を入れるから、しょっぱかったり甘かったり。さらには火力も適当だから焦げてしまっていることも。
それを、「今日は甘いね」とか「ちょっとしょっぱい」とか感想を言いながら、もりもり食べていました。
残った分はおみやげにと、ネスカフェ・ゴールドブレンドの空き瓶に詰めて持たせてくれたのも、いい思い出です。

そんなばあちゃんの遺伝子はきっちり受け継がれておりまして、わたしも料理がうまくない。だからたまごみそも、全然美味しくつくれません。普段のご飯作りは、基本的に旦那がやってくれています。(ほんと感謝)

だけど、自分が料理を失敗したとき、情けないと思う中に少しだけ愛おしいという気持ちが顔を出すことがあります。ふとしたときに出てしまった訛りを、直したい反面大事にしたいとも思う矛盾する気持ちと似ていて、それって自分の中にばあちゃんの存在を感じられるからなんですよね。
もう亡くなってから10年近く経っていて今さらですが、わたしはばあちゃんが大好きだったんだなあと思いました。

わたしがばあちゃんの年齢になるまでには、何かしらの料理を空き瓶に詰めて持たせられるくらいの料理の腕か、失敗なんぞ気にしないで提供するポジティブな思考を身につけたいです。


くろさわかな

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