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40-Wさんの話

 その頃、福岡に住んでいる僕の母が要介護認定を受けることになって、僕は月に何回か熊本と福岡を往復し、市役所の方と面談したり、母が入院している病院を見舞ったりしていた。

 基本的には高速道路を使っていたのだが、その時はうちの奥さんが仕事先の研修旅行でいなかったので、なんとなく下道からゆっくり行ってみようと思い、国道3号線を通って福岡まで行った。そして福岡県の春日市のあたりまで来た時に、トイレに行きたくなって、ドラッグストアに寄ってトイレを借りた。その後、しばらく走ってガソリンスタンドに寄った時に財布が無いことに気付いた。記憶をたどってドラックストアだろうと思い、そこから引き返した。時間はちょうど夕方のラッシュ時で、ドラッグストアに戻るのに30分くらいかかった。つまり、トイレに財布を置き忘れてから、そのトイレに戻るまでに約1時間かかっていたわけである。でも財布はちゃんとトイレのタンクの上にあった。財布には現金が10万円くらい入っていたが、それも無事だった。これがポンコツ事件①

 その後実家のマンションに帰って、父と今後のことなど話し合っている時に、ささいなことから父と口論になり、生涯最高くらいの激しい口喧嘩になった。これがポンコツ事件②

 その次の日、母を見舞ったあと、熊本に帰ろうとしたら、父が別れ際に交通費だと言って1万円札を手渡しでくれ、僕はそれを素手で受け取ったまま荷物を車のトランクに入れたりしていたら、いつのまにか車のそばに落としてしまい、父が拾ってまた渡してくれた。これがポンコツ事件③

 車を発進させてからしばらくして、もらった1万円札を財布に入れておこうとして、ポーチを開けたら、さっき病院に母を見舞った時に預かっていた母の保険証をポーチに入れたままだったことに気付き、そこから引き返して父に返した。これがポンコツ事件④

 これら一連のポンコツ事件について話していたら「それは生霊の仕業だね」と、霊感の強いうちの奥さんが看破した。生霊が近づいて来ると物忘れをしたり、精神的に不安定になって人とトラブルを起こしたりすることがあるそうだ。「誰の生霊かじっくり考えてごらん」と言われ、お風呂の中でここ数日の事を思い出していたら、多分あの人だろうという心当たりのある人物が思い浮かんだ。

 その人は僕と奥さんの共通の知人だが、霊感の強いうちの奥さんに対して苦手意識を持っているようで、ここ数年は疎遠になっていた人だ。どうもうちの奥さんがその人から僕をガードする結界になっていたようで、うちの奥さんが旅行に行っているタイミングに僕に攻撃をしかけて来ていたようだ。

 後にFacebookの書き込みで知ったのだが、その人は50歳を過ぎてから結婚して、お子さんも生まれたのだが、その人の奥さんの書き込みで、最近お2人が離婚していたということを知った。そのことで悩んで僕に会いたいと思っていたが、連絡を自分から取るような人ではなかったので、僕に生霊を飛ばしていたのだろうということになった。

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