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朝の風景、於静岡県

朝の空気がレースのカーテンをゆらす
窓のそばのフローリングから、テーブルまでのびた網目状の光が
干渉縞をふくざつに変容させながら
ゆっくり呼吸する

飛翔体化する予感にはりさけそうな
子一声
まれびとのように
跡を濁さず部屋を斜行した

あとには、レディオからかすかな音に変換された
韃靼人の踊り
ふるぼけた美術館の収蔵庫みたような色調で
しずけさの深度を測っている

NAn + De + yaneN !!

声もなく
ことばだけが
かぎりなく希薄な
ことばだけが

ちょっと同時刻
かんたんな病気を
ひどくくるしんで
生きるのを止めた生物あり

ぐんにゃりとしたみずからの重量を
どうにか重力に拮抗して
ギリギリと支持するだけの構造体となった
動物どものあいだで

NAn + De + yaneN !!

こんな無害な空想で
いったい
与えよ
与えよ!

NAn + De + yaneN !!

与えることもまた罪という
そんな責任の網目から、まっくろな光のようにやむにやまれず逸脱して
与えよ、というかぼそい声

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