
2023年 建設業が取り組む法改正対応 ~インボイス、電帳法、残業時間の上限規制のポイントをまとめて5分で解説
2023年10月 インボイス制度(適格請求書制度)
2024年1月 電帳法(電子帳簿保存法)
2024年4月 残業時間の上限規制(働き方改革関連法)
2023年、建設業が取り組む法改正対応は多くありますが、「ポイントと対策をまとめて解説して欲しい」というご相談がクラフトバンクには多くあります。インボイスだけ、電帳法だけを解説した記事は多いですが、一連の法改正をまとめて解説した記事は少ないです。
本記事では、建設業経営者が特に把握しておく必要がある、主要な法改正のポイントと対策を5分で読める範囲で解説します。
2023年の建設業にとっての法改正のポイント


ポイントを二枚にまとめました。箇条書きにすると以下の通りです。
2021年「郵便法改正による郵送物の到着遅れ」が既に事務面で影響しており、請求書、契約書など「紙」のやり取りが難しくなっている
「インボイス」「残業時間の上限規制」は経営に影響するので、経営者も取り組む必要があり、現場任せにはできない
2026年紙の手形が廃止になるなど、国全体で「紙の廃止」に向けた動き
いずれの法改正も「紙と電話とホワイトボード」の業務では対応に限界があり、業務のデジタル化のために社外の専門家に相談する必要がある
一人親方、一人親方と取引ある法人、特定建設業者のそれぞれの立場でのポイントは以下の通りです
一人親方:2023年3月末、手続き期限までにインボイス対応を
一人親方と取引ある法人:取引のある一人親方がインボイス対応済かの確認を急ぐ+自社のインボイス対応+残業時間の上限規制対応
特定建設業者:下請企業の法令遵守の指導が必要(建設業法第24条の6)
一人親方から中小企業、大手企業まで法改正は経営に影響します。法改正後に「知らなかった」では済みません。コンプライアンス意識の高まりから、法改正対応をしていない会社に発注を控える動きもあります。
大手企業を中心に安全大会や取引先向けコラム等で協力会社向けの情報発信を強化しているのはこういった背景があります。(弊社もご支援させていただいています)
以下、各制度を解説します。詳細は税理士、社会保険労務士等の専門家に相談ください。
①2023年10月 インボイスについて
詳細は上記のイベントレポートをご確認ください。経営者が把握しておくことは以下の通りです。手続き期限は2023年3月末まで(例外あり)ですので、本記事公開の2022年12月末から3か月しかありません。
2023年10月のインボイス制度導入後、インボイス対応をしていない一人親方と取引すると元請が消費税分損をするため、一人親方と取引を控える動きがある(発注者の1割は既に取引しないと回答)
50万人以上いるとされる一人親方の24%以上は65歳以上で、2023年以降に引退は進む(既に1割が廃業を検討)。一人親方と取引のある法人は「経験と人脈のある一人親方を採用」「若い職人を探し、育てる」ことを考える必要
事務面では一人親方を「インボイス対応済」と「対応未」で分けたり、請求書をインボイス対応後のものに変更する必要があるなど対応が必要
②2024年1月 電子帳簿保存法について
電子授受したもの(EDIや電子契約)は2022年1月から電子保存が義務で、猶予期間が終了するのが2023年12月末
請求書、契約書などの取引関係書類は紙をスキャン保存
電子取引した請求書を書面保存していた場合は税務調査時に指摘はされる(直ちに経費否認するものでは無い)
ゼネコン、商社、メーカー等でEDI(電子取引)や電子契約が進んでいます。各取引先の取引形態を確認し、これを機に「紙」の取引を見直しましょう。
③2024年4月 残業時間の上限規制について
詳細は上記の記事をご確認ください。ポイントは以下の通りです。
2024年4月以降、時間外労働の上限は原則、月45時間、年360時間まで
大企業は2019年、他業界の中小企業は2020年に適用済で、建設業は猶予されていた(2024年にその猶予期間が終了)
違反は罰則対象となり、企業名を公表されるなど経営に支障を来す恐れ
「勤怠管理が手書き」「予定管理がホワイトボード」など、「事務負担が重く残業時間が長い」会社は現実的にこの上限に引っ掛かり、労基署に指摘を受ける恐れ
建設会社の多くが「人手不足」に悩んでいます。今回の法改正は「他業界では既に対応済」の内容です。他業界に人材が流出している建設業の実態を踏まえると、放置はできない法改正です。
建設業が2023年に取り組む法改正対策
国全体で「紙の廃止」を進める動きがあり、一連の法改正もその中で進んでいる、と理解してください。法改正をきっかけに建設業も「紙と電話」の業務から脱する必要があります。
なぜ「紙と電話」の業務は問題なのでしょうか? 資材高騰で大手企業も「増収減益」決算になっています。また、有効求人倍率は6倍を超え、人手不足も進んでいます。各社「利益と人材の確保」に苦しんでいます。

建設業は「職人3人当たり事務員1人が必要」と言われるほど、事務コストが高いです。国交省の建設施工統計調査(令和2年度)を見ても、常勤雇用者412万人中、93万人が事務員、全体の23%は事務職です。資材価格が上がり、人手不足の中、膨大な事務コストを大手から中小まで負担しているのです。本来この93万人の事務員は「採用や育成」などの前向きな仕事に従事すべきで、大半は「紙の処理」に忙殺されています。
また、建設業最大のコストは「18%の資材費」ではなく「42%の協力会社に対する外注費」です。協力会社とのやり取りを大手でも未だに「複写式カーボン紙」「FAX」でやっているのが実態です。
「紙と電話」の業務を維持している限り、コストが下がらないままです。
なお、2021年中小企業白書の「建設業がデジタル化推進に向けた課題」を見ると、建設業のデジタル化が進まないのは「アナログな文化」「取引慣行」などの「人」の問題が大半で、「お金」は全体の1割ほどしかありません。

クラフトバンクにはこの「事務コスト」をデジタル化によって削減してきた実績が多数ございます。「人」の問題にも数多く対応してきました。お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。
クラフトバンクでは様々な工事会社の経営相談に乗っているほか、経営に役立つ成功事例のセミナー情報等をメールマガジン等を通じて配信、ご要望をいただけばコンサルティングも行っています。税理士法人、社会保険労務士法人、中小企業診断士、保険代理店など建設業に強い専門家の紹介も可能です。
この記事を書いた人:髙木 健次(クラフトバンク総研)

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