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『展示のドアを開ける必要はあるか?』ー前文

新型コロナウィルスを巡る感染防止施策のため、計画していた展覧会の中止が告げられた。あらためて何をしてはいけないかのラインをすり合わせたところ「展示は構わないがドアを開けてはいけない」そうだ。

この通告を伝えられる前から「もしかしたら中止になるかもしれない」ということは聞いていて、公開できないのならば別の機会にやるなりするか、と考えていた。しかし、通告されて辞めるという判断をすれば辞めた主体が自分で、まさに「自粛」になってしまう。僕も作家の東地も「この展示って自粛していいんだっけ」、そんな考えがあったように思う。

その結果として、展示『VARY』は会場のドアを開けることなく開催することを選択した。


これから始まる展示『VARY』がドアを開けずに開催する思いを、3月15日(日)のトークイベント『展示のドアを開ける必要はあるか?』でお話しすることになるだろうと思うが、ここからはその前段として、あくまで僕がcrevasse側から見ているストーリーを書き留めておきたいと思っている。それがイベントに足を運んでもらうきっかけになれば、と思うしまたそれ以上に、僕にとってこの2020年という今を感じずにはいられないトラブルだったから。



今年の1月crevasseは香港のアートブックフェアに3日間出展してきた。参加募集と選考は去年の10~11月の時期で、香港では正にデモが苛烈してた時だったので、直前まで開催が危ぶまれていた。しかし、12月に主催者から送られた開催案内のメールは、渡航の危険に迷っていた僕を考え直させるのに十分すぎる熱量があった。


香港滞在中にも、今のところ最後に記録されてるだろうデモ隊と警察の大規模な衝突があった。フェアで知り合った写真家は「無事に空港に着いたか?」と僕が空港に着く時間を見計らってメールしてくれた。フライトを待つ間、空港のテレビではずっとそのデモの様子を放送していた。

そして日本に帰国したその日、中国政府は武漢でのコロナウィルスの感染について発表した。


時を一週間戻す。
中国の北京からアートパブリッシャー・da 大 in printが横浜・黄金町レジデンスに入った。目的は東地の本の滞在制作。今回の展示『VARY』では彼らの制作物も展示されているが、実は彼らも僕と同じく香港のフェアに参加し、一緒に食事したりする仲だった。

2月に入って日本の状況は悪化。横浜港にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊しているその時、彼らは成果展『プロジェクト展示「1/3 distance」by da 大 in print』を開催した。観に行った僕は彼らに中国へ帰るならばとマスクひと箱をプレゼントした。


そんな彼らとcrevasseで、東地という同一の作家を扱いながらスタイルに対比的な部分があるので、それを比較提示することで「アートパブリッシングがなにを表現できるか」考える契機になるような展示ができるのでは、と考えて、これを東地のレジデンス成果展に位置付けた。

しかし、自粛ムードを受け中止の決定まで曖昧な時期はあったものの成果展全体として中止する結論を下したのが顛末だ。



この半年くらい東アジアの混乱の中にいる気がする。ここにも書ききれないたくさんのトラブルがあった。自分の活動がその波間で、たまたまうまく躱せたり思いっきり波を被ったりしているが「自粛」という仕方で波がなかったように見せることはできない。でも簡単にいうと「しゃらくせえ、好きなようにやらせてくれよ」と思っている。

中止を受けてから僕と東地はドアを開けないままでどうやって目的を達成するか努めてきた。展示のドアを開けなかったことで達成できなかったことは何かについて考えたい。


トークイベント『展示のドアを開ける必要はあるか?』
【日】2020/3/15(日)
【時】13:00-14:00
【所】Tinys 横浜日ノ出町
※入場は1d/500円となります。
※当日受付(会場は12:00よりオープン、先着順)となります。
ポップアップショップアワー
【日】2020/3/15(日)
【時】14:00-18:00
【所】Tinys 横浜日ノ出町
※トークイベント終了後、茨城のナノ・パブリッシャーcrevasseが自身のオンラインジンストアで取り扱う本を並べショップスペースを展開します。東地の新作となる「mountain」のほかたくさんのジンをご覧頂くとともに、イベント後の意見交換など交流の時間になればと思います。
展示『VARY /東地雄一郎』
【日】2020/3/13(金)~22(日)
【時】コロナウィルス感染防止施策のため終日会場には入れません。
【所】黄金町高架下スタジオ Site-Aギャラリー
https://www.crevasse.info/special-site


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