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地覆(じふく)とは-高欄の基礎であり道路の安全確保と路面の排水処理を担う

サブスクリプション 道路の安全性に寄与する地覆設置の目的とは

地覆とは橋の高欄の基礎であり、道路に接して取り付けられる横材のことを指します。

通常道路では雨水の排水を行うために側溝が設置され、水が路面に溢れる事態を防ぎます。

この道路側溝は橋梁でも同様に設置され、高さのある道路上でも排水処理が滞りなく行われるよう設計されており、地覆がその機能を担います。


高欄とは

“高欄”という言葉は耳慣れないワードですが、“欄干”ならば知っているという方は大勢いるのではないでしょうか。

高欄とは橋梁工学の専門用語であり、橋の欄干部を指します。橋の端部に設けられる柵、もしくは高く反りあがった壁は高欄と呼ばれ、転落防止のため人が簡単に跨ぐことのできない高さを有します。

橋によっては、街の景観に合わせ高欄部分に装飾が施されるなど、デザイン性の感じられるものも存在し、曲線や折れ線の採用やイラストを描くなど、橋を渡る楽しさや高欄を見る面白さが感じられます。


地覆の設置場所と施工場面

地覆は高欄の基礎部分に設置されるため、路面と接する形で取り付けられます。

橋梁に限らず、家の敷居や門、建物の土台として一番下に設けられる基盤であり、コンクリート強度など設計強度を満たす地覆の搭載が求められます。

橋の建設では、準備工、橋体工、橋面工と多くの工程へ経て施工が行われますが、地覆は橋面工の段階で設置され、高欄の基礎及び排水用の側溝を目的として打設されます。


~橋のつくりかた一例~

①準備工・・・現場事務所の設置・資材準備・測量

②橋体工・・・主桁製作工・架設工・横組工

③橋面工・・・地覆工・高欄・排水工・舗装工・親柱工



3 道路の安全を守る地覆の拡幅工事

地覆は道路の安全上欠くことのできない装備であり、劣化や機能の低下が見られた場合には改修工事が行われます。

また製品によっては地覆の高さが低く、時に車両が乗り上げ事故となる危険性も考えうるため、既存製品の地覆幅や地覆高さを拡幅、嵩上げする工事が行われるケースもあります。

地覆の素材はコンクリートや剛性など製品により様々ですが、死荷重(構造物自体の重さ)による負荷を極力減らすことで橋全体の軽量化にも繋がります。

車両が地覆に衝突した際には、地覆にかかる衝撃負荷を抑える構造が採用された製品もあり、都度行われる工事が橋の安全な走行に大きく寄与しています。


4 地覆ジョイントとは

雨水排水機能をもつ地覆ですが、橋そのものの端部には遊間があり、地覆部も桁の境界部であるため隙間が見られます。

隙間を埋めなければ水漏れが発生し、桁下の支承を傷める原因となるため、遊間を覆うように地覆ジョイントを取り付け、橋の路面上に溜まった水が下へ流れ出ないよう対策を施します。

遊間の小さい橋であれば漏水のリスクも少なく、バックアップ材を詰めシール材にて止水を行う作業が一般的です。

しかし遊間が広い場合、シール材の弾性だけでは伸縮を吸収しきれないことや、シール材の自重で変形・破損してしまう可能性が大きいため、地覆部専用の伸縮装置を設置します。


5 地覆のまとめ

地覆とは高欄の基礎部分を指し、車両や歩行者の安全確保と排水処理機能を備えた装置のことでした。

普段馴染みのない土木用語ですが、橋の手すりや防護柵を支える一番下に設置された横材は、誰もが見たことのある橋梁製品であり、幅員や高さが道路の安全に大きく関わるところでした。

地覆は雨風などの自然環境の他、輪荷重やその他大きな衝撃を受けやすく、補強工事や補修が必要に応じて行われます。

また機能面を充実させること加え景観性も忘れてはならないポイントであり、人々の生活に馴染むデザイン設計が考案されます。

一見すると地覆は何の変哲もない横材ですが、その内部には地覆補強筋など太径鉄筋が相当数打設されており、製品の軽量化や低負荷など、実は土木技術が多く詰まった道路器機です。さほど目立つことのない道路構造物ですが、まさに縁の下の力持ちとして橋の安全な走行・歩行に大きく寄与しています。

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