ふぉーるだうん!

“お待たせ致しました”

エレベーターのアナウンスが流れる
しんとしたホールに無機質なドアが開く音
なんとなく気まずくてウサギ方はみれることができないけど、そんな気遣いは無用ですよーとばかりに視線を下ろすと既にウサギさんはエレベーターに乗っていらっしゃいました
あ、私が待たせているんですね、どうもすみませんね。
大人しく入口のボタン側にそっと乗り込む

「あのー…何階まで行きます?」

えぇ、もちろん返答なんかありませんよ。
アラサーにもなってウサギに話しかけてるの辛い。ぴえん超えちゃう。

“下へ参ります”

とりあえず私の目的地であるエントランスを目指して1階を押してみた

ウィーーーーーンという機械音にこんなに助けられたことないわ
無音ほど気まずいものはないし、私なんでウサギに気を使っているのかもわからない
めっちゃ凶暴なウサギだったらどうしよう
足に噛みつかれたら…引っ掻かれたら…
今日のストッキングはちょっと高めのやつだしホントにやめて欲しい
いつもの3足セット980円じゃないのよ
ちょっといい所で買った1足で1890円なのよ
給料日に勢いで奮発しちゃったやつなのよ
しかも25歳を過ぎたあたりから傷の治りがまじで悪い。いやホントに。
回復も遅いしなんなら痕が残る
どうか神様、無事に1階に着きますように。

そんな祈りを捧げているうちに体感では恐らく5分くらい経ってるんだけど、未だ着く気配はない
幾つの階を見送ったんだろうか
私の階は5階なんですけれど?
1階までは20秒もしないで着くと思うんですけれども?

ちらりとウサギをみてもスンッと澄まして一点を見つめているだけで微動だにしない
あれ、もしかして夢の中にいるのかな?
よくよく考えればこんな状況ありえないわよね
ウサギと着く気配のないエレベーターに乗って、ひたすら下へ降りていく
ないない、ありえない。ありえないわよ、アリス
これだから夢見がちなオタク脳には困ったわ
全く自分の頭ながら困ったものね

しばらくして浮遊感が治まった
た、たぶん着いたのよね?地下何回?そもそも地下であってる??
ちらりとウサギを見るとなんと二足で立ち上がっておられました
それはもう美しい姿勢で
最近猫背が悩みな私とは大違いよ
へぇ〜〜〜ウサギって立つのね〜〜〜
そしてどこからとも無く取り出した懐中時計を確認している
へぇ〜〜ウサギって時計持ってるのね〜〜〜
パチンと時計を閉じると私の方を一瞥して一言



「じゃ、先行くわ」


……………へ?

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