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本当は褒めてほしい

ビーズ刺繍は誰かに習った訳ではないので多分基礎が出来ていない。
ピシッと教科書みたいに綺麗にできないのだ。
できないのだ!なんて偉そうに言う事ではないな。

ずいぶん昔、展示で在廊している時にお客さんに話し掛けられても間が持たないと困るなぁと思って刺繍作業をしながら接客していた。

ふと気がつくとご婦人がジーッと私の手元を見いる。
緊張でドギマギしていると「あーっなんでそんなやり方してるの?下手くそ!貸して!」と言って私の手元から布と針を奪いチクチクと下絵に沿って刺繍をし始めた。

急に知らない人に叱られてびっくりして何も言い返せず固まっていると「ほら、こうやってこうやった方が効率良くて綺麗でいいでしょ!」と完成品を私に手渡し満足そうにその場を去って行った。

確かに、それはピシッとした縫い目で見た目すごく綺麗だった。
雑な縫い目も「作風です」と言って誤魔化していたところもあったから悲しさよりもすごく恥ずかしかった。

そこから何年も経って昨年、ビーズ刺繍のHOWTO本を出版した記念に個展を開催した。
さすがにこの仕事を始めて13年も経っているので自分なりの法則や考えも固まっている。

もう昔みたいにお客さんに何か言われても怖気付く事なく切り返せるし、何より積み重ねた年月と経験である程度の自信もついている。

作業をしながら在廊していると前をたまたま通りかかった風なご婦人集団がギャラリーに入ってきた。

その集団は作品を見ながらわいわい話ししている。
気にせず作業しているとひとりの婦人が「こんなやり方ってあるんだ…」と。
さらに別の婦人が「〇〇先生はこんなやり方しないよね」と。
更にもう一人が「まぁこの人も下手は下手なりにね…」と散々、作品というか縫い方の批評をしてがやがやと去って行った。

「ネット上でケチをつけられた事はあるけれど、対面では初めてだな…」と心が折れつつも、また免疫力がUPしたのを感じた。

そんな訳で、ヒソヒソ言っているつもりでも案外本人に聞こえていることもありますので、何か思うところあっても本人のいないところで言ってもらえると助かります。

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