ラグビー:ブレディスローカップ Day2

Kia ora! 10月18日にオーストラリアとニュージーランドの対抗戦の2試合目がオークランドのイーデン・パークで行われました。結果は目覚めたオールブラックスが27-7とオーストラリアを突き放しました。
ラグビーリパブリックさんが試合終了後すぐ記事にしてくれていました。仕事速い。
https://rugby-rp.com/2020/10/18/nations/55659

ワラビーズがまた結果+選手ごとのスタッツを公開してくれたのでこれを基に記事を書いていきます。

オールブラックスはケイレブ・クラークとボーデン・バレットの先発で勝利に大きく前進。ワラビーズはマット・トゥームアの離脱が痛手になった。

オールブラックスは先発メンバーを5人入れ替えました。

2 コーディ・テイラー⇒ダン・コールズ
5 サム・ホワイトロック⇒トゥポゥ・ヴァアイ
11 ジョージ・ブリッジ⇒ケイレブ・クラーク
15 ダミアン・マッケンジー⇒ボーデン・バレット

サム・ホワイトロックは脳震盪により(頭蓋骨ダメージテストをパスできなかった)欠場し、ウォーターを運ぶ担当に回りました。また、ジョージ・ブリッジも怪我により欠場、10/11に後半活躍したクラークを先発させました。
10/11ではアキレスけんを痛め大事を取って欠場したボーデン・バレットが18日では問題ないということで出場しました。
そしてケイレブ・クラークは10/18のマン・オブ・マッチ(MVPみたいなものですね)に選ばれ、バレットもゲインメーターで2位に立ちました。次の手のトライにつながるプレーも数多く見られました。

ワラビーズはというと、オールブラックスほどメンバーは大きく変えてきませんでした。

2 フォラウ・ファインガァア⇒ブランドン・パエンガ=アモサ
6 ハリー・ウィルソン⇒ネッド・ハニガン
8 ピート・サム⇒ハリー・ウィルソン

このメンバー交代の意図としては1戦目で低かったラインアウト成功率・スクラム成功率の改善を図りたいというものがあったと思われます。ちなみに、この目的は達成されました(ラインアウト:77%⇒92%、スクラム:67%⇒100%)
ただし、マット・トゥームアが前半30分にわき腹を痛めたことで離脱・交代したことでディフェンス・パスの速さ(総合的なレスポンス)が少し失われたことでワラビーズにほころびが出てしまった印象を受けました。現に前半では10-7で接戦でしたが、後半に3トライ決められています。
彼が80分動いていたら17-10くらいになっていたかもしれません(たらればは禁物なのですが)

1戦目と2戦目の変化

ここから1戦目と2戦目の変化など見てみます。
要約すると:
ワラビーズは2戦目でパスが増えた。あまりキックを使わなかった。
防御では主にバックス陣のタックルの成功率があまり良くなかった。
オールブラックスはケイレブ・クラークとボーデン・バレットがディフェンスを突破したことでトライに繋げられた。

◆パスとディフェンス

画像1

※読み方
Pass from No.9 rate on carry : 全体のキャリーのうち、スクラムハーフから受けたボールの割合
Number of passes on 1 carry : 1回のキャリー当たりで何回パスしたか。少ないほどパスせず自分でボールを持ってぶつかりに行く傾向があると仮定
FW tackle rate : 全体のタックルのうち、フォワード(No.1~8)のタックル割合
BK tackle rate : 全体のタックルのうち、バックス(No.9~15)のタックル割合

パス・守備面での第1戦と第2戦の変化はAUの方が大きく出ています。
主にパス回数を増やしたことと、タックル成功率が下がっています。

パス回数については、ボールを受け取ったらそのままディフェンスラインに割り込む回数が減った事で相対的にパス回数が増えたのではないかと思います。
また、タックル成功率が下がった要因はディフェンス側の成功率が大幅に低下している影響が高いです。これはケイレブ・クラークが暴れたりボーデン・バレットが華麗に舞ったのも大きいですが、次の攻撃面で見て行きます。

◆アタック

画像2

※読み方
Average gain metre 1 carry : 1回のキャリーでどれだけ前に進んだか
Breaking rate (クリーンブレイク+ディフェンス突破数)/キャリー数 : 1回のキャリーでどれだけディフェンスを突破できるか・相手がいない状態で走れるかの割合。1を超えているとその人にボールを持たせると必ず1回はディフェンスを突破されるということなのでかなり攻撃力の高い選手(もしくはディフェンスが甘いか)と仮定できる。
FW carry rate : 全体のキャリー数に対するFW陣のキャリーの割合。Attack3ではFWの中でさらに細かく割合を見ています。

攻撃ですが、単純にボールのキャリーを中心に見てみました。
ボールを持つ人がどれだけ前に進んだか?についてはFW陣はワラビーズの方が前に進む力を持っています。一方、バックス陣はオールブラックスの方が大きく前に進むことができています。
どちらも平均で見ると2戦目の方がボールを持って前に進めています。

次に 「(クリーンブレイク+ディフェンス突破数)/キャリー数」について見ると、オールブラックスが0.3⇒0.5と大幅に上昇しています。
バックス陣について10/11と10/18の変化を見てみると下記のようになります。ケイレブ・クラークの数値が突出しています。
■10/11
9   アーロン・スミス 1
10 リッチー・モウンガ 0.25
11 ジョージ・ブリッジ 0.5
12 ジャック・グッドヒュー 0
13 リーコ・イオアネ 0.75
14 ジョーディー・バレット 0.286
15 ダミアン・マッケンジー 0.143
■10/18
9   アーロン・スミス 0.75
10 リッチー・モウンガ 0.75
11 ケイレブ・クラーク 1.875
12 ジャック・グッドヒュー 0.25
13 アントン・レイナートブラウン 0
14 ジョーディー・バレット 0.5
15 ボーデン・バレット 0.727

ディフェンス突破数だけを見ても、
ケイレブ・クラーク 12
ボーデン・バレット 6
と、ワラビーズとオールブラックスのメンバー全体で見ても突出しています。これは、今後ワラビーズとアルゼンチン代表はこの2人を独走させないという意識下でプレーを行わなければ勝てないことを意味します。

フォワード陣の攻撃参加について見ると、第2戦でのオールブラックスのフォワード陣の先発メンバーが1割ほどボールキャリー数が増えており、攻撃に参加するようになっています。また、フォワードの中でも細かく見るとロックの2人が積極的にボールキャリーするようになっています。
これもワラビーズのディフェンスでのタックル成功率を低下させた要因になったのではないかと思われます。サム・ホワイトロックからトゥポゥ・ヴァアイに入れ替わったのは10/18においてはプラスに作用したと見ていいでしょう。

◆セットプレー

画像3

セットプレーについては最初に触れましたが、ワラビーズがメンバー変更によりラインアウトとスクラムの成功率が改善されています。
ただし、スクラム・ラインアウト後のモールの機会の総数については2戦目でオールブラックスの方が多く機会を得られています。
特にFW陣が全員参加するスクラムの機会が4回⇒8回に増えたことと、ワラビーズのバックス陣のタックル成功率が80%⇒60%と落ちたことが同時に起こっています。この状況ではオールブラックスがバックス陣を有効に使ってトライに繋げるのはさほど難しくはないと思います。

◆キックについて

第2戦のキックについてはゴールキッカーさんが細かく数字を出しています。勝手ながら引用させていただきます。どうやって数えたんや・・・

要約すると:
1.オーストラリアはオコナーのキック(45分)と、タニエラ・トゥポウのペナルティで10点失った。
2.オールブラックスのコンテストキック(相手の防御ラインの後ろに蹴りこんで取り合いをするようなキック)の成功率は40%。
3.普通のプレイでのキック回数はオールブラックスが10回、ワラビーズが5回。オールブラックスの方がキックを多用している。
4.オーストラリアのキックオフでのキックは6回あったがすべて相手の22mラインより手前の所に落ちている。

オーストラリアのキックについての方針があまりキックしない方向に傾いていた印象を受けます。これは深くキックした場合にボーデン・バレットがカウンターキックを出すことを警戒していたのではないでしょうか。

10/31以降の試合でのワラビーズの動きで注目したいポイント

1.キックの方向
45分のオコナーのキックをクラークがキャッチ⇒ディフェンスを2回突破されたように今年のオールブラックスはWTBに突破力があります。
ラインを詰められたときにどういうキックを飛ばすかがポイントになるのではと思います。
(滞空時間の短い低い弾道のキックが良いのかもしれません。もう一つはバックスの位置を見ながらロングキックを出せる脚力のある選手がいるかどうか。今年のワラビーズは脚力がリース・ホッジを除いて全体的に低め)

2.キャリー寄りの攻撃スタイルを維持する
AU側の動きのスタッツ上で一番変化が大きかったのはスクラムハーフでした。

画像4

画像5

ゲインメーター:56m⇒0m
キャリー数:14⇒1
ディフェンス突破:5⇒0
スクラムハーフがボールを受けた時にそのままキャリーする動きが11日には多かったのが18日には減少しています。タックルを受けた後にスクラムハーフがボールを拾った時にパスを待つか・ライン形成を待たずすぐキャリーするかの違いが出ていたかもしれません。
逆に言うと、すぐボールを拾える・ラインを形成できるような攻撃テンポの速さがオールブラックスのディフェンスを突破するためのポイントになる気がするので、第3戦以降注目してみたいと思います。
(2019W杯の日本代表の縦の攻撃やスーパーラグビーでのレッズの波状攻撃がオールブラックス相手に一番点を取れる攻撃ではないかと仮説を立てています)

3.ディフェンス
これに関しては残念ながら見通しは明るく無さそうです。ディフェンスが上手いなおかつ、テンポの速い攻撃を展開できるマット・トゥームア選手が今年はもう代表戦に参加しない見通しになっているので彼の穴をどうカバーするかが大きな課題なのではないかと思います。
一番現実的なのはオコナーもしくはフィリポ・ダウングヌが12番に回ることでしょうか。18日に新しくジョーダン・ペタイアがメンバーに上がりましたが彼はディフェンスより攻撃で魅力を発揮する選手なのでCTBよりはWTBの方が良い気がします。

バックス陣の采配については10月29日頃に上がってくるだろうスターティングメンバーの発表を楽しみにしたいと思います。

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