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ラグビー:トライネーションズカップ Day5

※サムネ画像はJSPORTSのオンデマンド放送の一部をスクリーンショットさせていただきました。トップリーグの試合も放送してくれるのでスポーツ観戦が好きであれば是非加入してみてください。

Buenas tardes.
11月28日にアルゼンチンとオールブラックスの対抗戦がニューカッスルのマクドナルド・ジョーンズ・スタジアムで行われました。結果はオールブラックスが38-0とアルゼンチンを圧倒しました。

今回もSANZARのスタッツページを参考にしました。

オールブラックスはフォーメーションが最大限に機能した。
アルゼンチンはゴールドコーストの暑さに負けた。

まずはスターディングメンバーについて書きます。
オールブラックスはメンバーを3人入れ替えてきました。ただし、バックス陣には手を加えませんでした。変更箇所は以下の通りです。

3 ティレル・ロマックス⇒ネポ・ラウララ
4 パトリック・トゥイプロトゥ⇒スコット・バレット
6 シャノン・フリゼル⇒アキラ・イオアネ

乱闘がやや多く規律が乱れがちなシャノン・フリゼルに代わってブレディスローカップ第4戦で好パフォーマンスにもかかわらず悲運の交代を受けたアキラ・イオアネを登録してきました。

一方でアルゼンチン代表、ロスプーマズは大幅に10人もメンバーを入れ替えました。入れ替えた選手は以下の通りです。

1 ナウエル・テタス=チャパロ⇒マイコ・ビバス
3 フランシスコ・ゴメス・コディラ⇒サンティアゴ・メドラノ
5 マティアス・アレマノ⇒ルーカス・パウロス
8 ロドリゴ・ブルーニ⇒ファクンド・イサ
9 トーマス・キュベッリ⇒フェリペ・エスクーラ
11 フアン・イモフ⇒ラミロ・モヤノ
12 サンティアゴ・チョコバレス⇒ジェロニモ・デ・ラ・フェンテ
13 マティアス・オルランド⇒フアン・クルス・マリア
14 バウティスタ・デルグイ⇒サンティアゴ・コルデロ
15 サンティアゴ・カレラス⇒エミリアノ・ボフェッリ

10人もメンバーを入れ替えた意図は4週連続での試合になることから負荷分散・より多くの選手に対戦経験を積ませる等の意図があったと考えられます。

結果としてはオールブラックスが万全のラグビーをしたことでアルゼンチンを零封しました。
プレーについて目を転じると、前戦のバッシング内容に対してすべて回答したかのようなプレーでした。
まず、前半3分にジョーディー・バレットが45mのPGを試みました。結果は失敗に終わりましたが、PGで点を積み上げるラグビーもやろうと思えばやれるんだぞという意思表明のように映りました。実際にマイタ―10カップでランファリーシールドが懸かった試合で50mのペナルティーゴールを決めることでタラナキに勝利をもたらしています。
また序盤~中盤ではキックをモウンガとボーデン・バレットの双方からスペースあらば繰り出す形でボールポゼッション・テリトリーを徹底的に高めていました。この時点でNZL80:20ARG位だったと思います。
後半はオーディー・サヴェアのトライを皮切りにアルゼンチンのパスのミスを突いてウィル・ジョーダンが独走して2トライ決めて突き放しました。
ウィル・ジョーダンのトライの取り方はある意味とてもオールブラックスらしいものでした。


前回の敗戦時との比較

前回との変化は以下のようになります。
要約すると:
ロスプーマズはFW陣のディフェンス・キャリー比率が10%ほど低下した。
オールブラックスはバックス陣が機能して平均ゲインメーターが6.7mとトライにつながる走りが多く見られた。また、キック回数が36とワラビーズに43-5で大勝した時と同じ水準になった。

◆パスとディフェンス

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※読み方
Pass from No.9 rate on carry : 全体のキャリーのうち、スクラムハーフから受けたボールの割合
Number of passes on 1 carry : 1回のキャリー当たりで何回パスしたか。少ないほどパスせず自分でボールを持ってぶつかりに行く傾向があると仮定
FW tackle rate : 全体のタックルのうち、フォワード(No.1~8)のタックル割合
BK tackle rate : 全体のタックルのうち、バックス(No.9~15)のタックル割合

●ロスプーマズの全体タックルに対してのFW陣のタックル割合が75%⇒63%と低下している。前週のワラビーズ戦と同じ水準。
●オールブラックスは全体に対するSHからのパスの割合が75%と前回より7%上がっている。キック回数が増えたことが影響していると考えられる。

ロスプーマズのディフェンス面で若干疲労が感じられる数字となりました。タックル水準そのものは変わっていないものの、フォワード陣のタックル成功率が91%から86%とやや低下しています。

◆アタック

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※読み方
Average gain metre 1 carry : 1回のキャリーでどれだけ前に進んだか
Breaking rate (クリーンブレイク+ディフェンス突破数)/キャリー数 : 1回のキャリーでどれだけディフェンスを突破できるか・相手がいない状態で走れるかの割合。1を超えているとその人にボールを持たせると必ず1回はディフェンスを突破されるということなのでかなり攻撃力の高い選手(もしくはディフェンスが甘いか)と仮定できる。
FW carry rate : 全体のキャリー数に対するFW陣のキャリーの割合。Attack3ではFWの中でさらに細かく割合を見ています。

●バックス陣の平均ゲインメーターについて:ロスプーマズが5.86m/回⇒3.27m/回とダウンした一方、オールブラックスは2.42m/回⇒6.70m/回と2.5倍のパフォーマンスを出している。
●また、Breaking Rateについてもオールブラックスは0.13⇒0.26と相手のディフェンスを崩す機会を2倍に増やしている。ロスプーマズも0.25とやや良いスコアではあるがノックオンが多くトライに繋げられなかった。

ロスプーマズ側のノックオンがやや目立ってしまったことで、これが汗による要因かは判断できませんが攻撃面で零封されてしまった原因であることは間違いないと思います。この試合ではあまりPGを取らない動きをしていました。(これはチームとしてそういう方針だったのではないかと思います。SOサンチェスの負荷軽減を図りたかったのでしょう)

◆セットプレー

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セットプレーについて見てみます。
●ロスプーマズのラインアウト・スクラムのパフォーマンスが2週間前の勝利時と比べて安定しなかった。
●スクラムの安定度に定評のあるオールブラックスはスクラム機会を10回手に入れた。
●ペナルティーが7回とオールブラックス側のペナルティーがやや取られにくい傾向があった。規律も取れていた。

スクラム機会が10回あった事がオールブラックスの5トライ取れたことと相関性はある程度あると思います。ロスプーマズのフォワード陣のディフェンスを一時的に無効にできるのはかなり有利になるでしょう。
また、ペナルティの少なさについては、マラドーナ選手に対する追悼のハカのパフォーマンスを見せたことで審判が心理的にややNZ寄りになった影響もある気はします。
(公平な判定を出すのが建前上レフェリーの役目ではあるが、その時の観客のエキサイト・大義名分などによって審判の判定が片方のチームに若干偏ることはたまにある。日本プロ野球においても2013年に楽天が日本一になった際にアウトのタイミングをセーフと判定した事でその走者が勝ち越しの得点ランナーになったという事例がある。これに加えてブレディスローカップ第4戦のレッドカードを受けた後に審判と和解した談話をイアン・フォスターHCが出している)


オールブラックスの勝利とキックインプレ―の相関性

オールブラックスの今年の国際試合の結果とキックプレー数、W司令塔の機能度合いについて見てみます。

△試合中でのキックプレー数(SO,WTB,FBについて見ます)

10/18 モウンガ 5   ジョーディー 1 ボーデン 4 27-7〇 チームキック数:24
10/31 モウンガ 14   ジョーディー 6 ボーデン 5 43-5〇 チームキック数:38

11/14 モウンガ 12  ジョーディー 2  ボーデン 7 15-25● チームキック数:25
11/28 モウンガ 17  ジョーディー 4  ボーデン 10 38-0〇 チームキック数:36

※SO,WTB,FBの組み合わせが異なるパターン
10/11 モウンガ(3)+ジョーディー(3)+急遽ダミアン(5) 16-16△ チームキック数:31
11/7 ボーデン(21)+ジョーディー(1) 14番はセブ・リース 22-24● チームキック数:29

実際、イアンフォスターの考えるラグビーの方向性は結果から見ると正しいと考えられます。ただ彼の問題点はそれ以外の部分で起用法が保守的であるところです。(例えばウィル・ジョーダンは隠し玉的に使うのではなくブレディスローカップの段階で出しても良かった。また、シャノン・フリゼルよりもアキラ・イオアネの方がパフォーマンスとしては良かった。)

モウンガ+ジョーディー+ボーデンでのキックパターンでなおかつ、
キックプレー数が35以上
の時高水準の勝率が約束される。
目安は30回・・・2分おきにキックできるかどうか。

ただこれはスペースを見つける行為と関連しているので、
スペースを作らせるためにもフォワード陣の運動量・フィジカルの向上が2021年以降鍵になります。
或いはバックス陣の突破力、ケイレブ・クラークやウィル・ジョーダンもキーになってくると思います。因みに、単純な突破力はクラークが優れているが相手のミスをトライに繋げる力はウィル・ジョーダンに軍配が上がります。


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