三井さん2見出し

コピーライター、三井明子氏。2020年のお正月広告。高齢化社会をテーマにした宝島社の新聞広告をアートディレクター、副田高行氏と制作。いまでは三つ子の魂も、百まで生きる時代になったのだ。

三井明子さん2 キャッチ

2020年、今年のお正月の新聞広告として話題になったといえば、宝島社の企業広告、

「長寿先進国、おめでとう。宝島社」だと、僕はこころの奥で熱く想っている。

なにせ、クリエイターズファイル・ブログに過去、登場してくださった、副田デザイン制作所、

アートディレクター、副田高行氏、ADKクリエイティブ・ワン、コピーライターの三井明子氏の

お二人の方が制作しているからだ。クリエイターの方たちを応援している私どものブログとしても、

お二人が創った新聞広告が話題になることは、たいへんうれしいニュース。

「宝島社の広告は、毎回毎回、社会の状況などに合わせたテーマで創るという制作の仕方をしていまして。

テーマ自体からのプレゼンテーションも行います。今回の広告には、「長寿先進国、おめでとう。宝島社」

というコピーが掲載されていますが。過去にも、宝島社は、長寿をテーマに広告を制作しているので、

もう一度テーマとして採用されるかはわかりませんでしたが、提案させていただいた結果、

長生き、少子高齢化で広告を制作するという承諾をいただきました。そこで、アートディレクターの副田高行氏に、

何とかご一緒させてください!とお願いしました。私は、宝島社の広告を副田氏が制作したらどうなるんだろうと、

ずっと思っていまして。」この三井氏のお言葉は、僕も同感である。新聞広告のプロ中のプロ、

副田氏がどのような宝島社の広告を創るか、ぜひ、見てみたい。これは、広告業界の方なら、

誰でも思うことではないだろうか。「まず、最初の打合せで、私がキャッチコピーを創っていきまして。

その案を、とても気に入っていただけて。次の打合せで、私は別のコピーを創っていったのですが。

副田氏が、最初に出したキャッチに合わせて、このビジュアルどう? と、すでにいじわるばあさんの案ができていたんです。

三井さん2①

キャッチは、ご老人の処世術を、前向きに、こういうふうに図太く生きていけばいいよ、と、見ざる、言わざる、

聞かざるをもじって創りました。裏テーマとしては、政治家の方への風刺というかメッセージにもなればいいな、

という想いも入っています。」実に、キャッチの視点がいいし、いじわるばあさんのポーズもいい。

温度を感じる広告である。「第1弾の提案がスムーズに通り、そこで、ぜひシリーズ広告にしていきたいとなって。

第2弾、第3弾を提案しました。第2弾は、棺桶から生きかえっている絵に対して、

チャーミングでいいねという声があり、メインビジュアルに使いました。キャッチの「なんで、長生きしたかったんだっけ。」は、

日本はどんどん長寿の国になっていますが、みなさん健康とは限りません。長生きすることが

目的になってしまっている部分があります。自身の家族でも同じことが起きているので、個人的に深刻な問題でもあるのですが…。

この問題を社会に向けて投げかけるという考えで制作しました。

三井さん2②

第3弾のキャッチ「昨日? そんな昔のこと、わからないね。明日? そんな先のこと、わからないよ。」は、

往年の名画「カサブランカ」のセリフのもじりなんです。そのもじりを、長寿のテーマにした切り口のキャッチにしました。

二人がしゃべっている絵が合うね、と、副田氏も気に入ってくださいまして。

三井さん2③

ボディコピー(文章)がないのは、キャッチだけにして、あとは受け手にゆだねているからです。

考えてもらうという意味ではいいのではないかと思っています。

副田氏は広告を愛していらっしゃいますし、コピーライターが一番仕事をしたいアートディレクターなんですね。

コピーをどう表現しようということから発想する方なんです。まわりの方からも、副田氏と宝島社の広告が創れるなんて、

コピーライターとして一番やりたいことが叶っちゃったね。と、言われました。」

三井さん2④

三井氏は、コピーライターとしての幸福を叶えてしまった女性なのだ。

いいキャッチができたときの、コピーライターとしての幸福もあるが。

希望するアートディレクターと一緒に広告を創れたというのも、コピーライターとしての幸福なのだ。

仕事にも、いろんな幸福がある。

それを、自分の仕事の視点でみつけて、めざす。

幸福は、物心が豊かになることだけじゃない。

仕事での、幸福があるじゃないか。

それも、生きる意味のひとつだと想う。

撮影:前田洋一(株式会社スタジオヨンジュウイチ)

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