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「息子の使ったタッパーは自宅で洗ってるのに…」第3のカップ「CIRCLE CUP」開発者が“使い捨てゼロ”に立ち向かう理由

「使い捨てをゼロにしたい」

そう語るのはテイクアウト用リターナブルカップ「CIRCLE CUP(サークルカップ)」を運営する、中西理恵さん。彼女は子育て中に感じたある疑問をきっかけに、地球に優しい“使い捨てないカップ”を作る事業を立ち上げました。

伊藤忠紙パルプ株式会社が公開する報告書によると、飲料用カップは毎年約40億個以上が消費されており、焼却処分によって膨大な二酸化炭素が排出されています。

そんな使い捨てカップによる環境破壊に立ち向かう中西さんに、私たち1人ひとりでも起こせるアクションについて教えていただきました。

使い捨てが当たり前の世の中で、一歩立ち止まるためにはどんな考えを持てばよいのでしょうか。

中西 理恵(なかにし・りえ)
1983年生まれ。大阪府出身。広告代理店や航空会社で広報、ブランディング等を経験した後、フリーランスとして独立。スタートアップやベンチャーキャピタルなどのPRに従事。
たった10分しか使わない紙コップをゴミ箱に捨てている現状に疑問を感じ、2020年9月に合同会社ブルドーザーを設立。テイクアウトカップのシェアリングサービス「CIRCLE CUP」を通じて、「使い捨てない」が当たり前の社会の実現を目指す。

日々の疑問を追求することが、行動に繋がる

ーー環境課題に対して行動を起こすのは難しいイメージがあります…。どうすれば、中西さんのように積極的に行動できるようになるのでしょうか?

自分なりの考えを持つことが大切だと思います。誰かに「環境に配慮しよう」と教えられても納得感がないでしょ?

実は私自身も事業を始める前は、環境配慮とは無縁の生活をしていたんです…(笑)。

ペットボトルは毎日2〜3本買っていましたし、ゴミをたくさん出すことにもまったく罪悪感を感じていなくて。ものを使い捨てることに疑問すらありませんでした。

そうなんですか…!?

だから、誰かに言われて行動するのではなくて、日々の生活に疑問を見出して、環境について調べて考えてみる。そして、その考えをもとに行動を起こせるのが一番!

私の世代よりも、今の若い世代の方たちのほうがずっと環境に対する意見や知識があると感じます。そんな世代だからこそ、少しでも興味がある分野でいいので、まずは調べてみれば、わかることや行動したくなるようなことがたくさん出てくるんじゃないかな。

環境課題に興味を持ったきっかけは「子育て」。年間40億個のカップが廃棄されていると気が付いた

ーー中西さんは以前は環境課題に興味がなかったとのことですが、どうして環境のことを考えようと思ったのですか?

初めて環境課題について考えたのは、当時1歳の息子を連れて出かけているときでした。

いつも子どもを連れて外出するときは、息子用におにぎりやちょっとしたおやつをタッパーに入れたり、ストローマグに飲み物を入れたりして持ち歩いていたんです。

ある日、いつものように息子と出かけていたときに、私は息子の隣でカフェで買ったコーヒーを飲んでいました。そして、飲み終わったあとのカップをゴミ箱に捨てようとした瞬間、初めて疑問を覚えたんです。

息子の使ったタッパーやマグは自宅で洗って大事に使いつづけているのに、自分の使ったコーヒーカップはその場で捨てている。

しかも、そのカップにはスリーブや蓋などもついていたことを思い出し、コーヒーを1杯飲むだけでたくさんのゴミを出していることに気が付きました。

この違和感を解消したくて使い捨てカップについて調べてみると、なんと年間約40億個もの使い捨てカップが消費されていることがわかったんです。

ーー子育てをきっかけに環境について考えはじめたのですね。それにしても40億個ってすごい数…。

しかも、そのほとんどが再利用されずに廃棄されているんですよ。たった数分しか使わない使い捨てカップを廃棄するために、大量の二酸化炭素が排出され、環境に負荷をかけているんだとわかりました。

当時1歳だった息子が成長したときに、自分や息子が使い捨てカップを使っているのは嫌だと思い、この「負の使い捨てループ」を断ち切ろうと考えたのが『CIRCLE CUP』だったんです。

実質0円で環境に貢献。使い捨てない「CIRCLE CUP」

ーーそうしてできあがった「CIRCLE CUP」は、どんなサービスなんでしょうか?

天然有機廃材の竹が主原料のバイオマスプラスチック製のテイクアウトカップを、借りることができるサービスです。

「CIRCLE CUP」とパートナー契約をしているカフェなどの飲食店で、ドリンクを購入するときに利用でき、使用後はパートナーの飲食店であればどこででも返却することができます。返却されたカップは店舗で洗浄し、繰り返し使うことができるんです。

ーー竹でできたカップ! デザインもシンプルでかわいいですね。

「CIRCLE CUP」を設計するときにどんな素材がいいか調べに調べて、最終的に竹にたどり着きました。

竹の特徴は、抗菌・抗ウイルス・防カビ効果があること。長く安心して使っていただけるだけでなく、通常の使い捨てカップとは違い、食器洗浄機や家庭用電子レンジの使用も可能です。

竹は成長がすごく早いので、そのままにしていると崖崩れなどの自然災害の原因になってしまうんです。そのため、定期的に伐採されるのですが、その廃棄された竹を使ったバイオマスプラスチックがあることを知り、「CIRCLE CUP」に採用しようと考えました。

ーーレンジでも温めなおせるんですか! 使い捨てカップよりも便利ですね。

「CIRCLE CUP」は、利用者さんや飲食店さんにとって便利で、環境にも優しいという三方良しのカップを目指しました。

また、たくさんの方に使っていただくためにこだわったのが、実質0円で使えることです。「CIRCLE CUP」は利用時に1個につき300円を「CIRCLE CUP」パートナーにお支払いいただき、使用済みのカップを返却していただくと、エコ協力金として300円をお渡しするというシステムなんです。

ーーたしかに、環境配慮をしたいと思っても有料のサービスを使うのは抵抗感がある人も多いかも。

使い捨てカップはドリンクを買えば無料で付いてくるのが当たり前のものなので、代替するサービスを有料にしてしまうと、ハードルが上がってしまいます。

ハードルをとことん下げて、実質0円で誰もが環境に貢献できるようなサービスにすれば、気軽に「CIRCLE CUP」に移行していけると考えたんです。「CIRCLE CUP」を使うようになれば、ゆくゆくはマイボトルやマイカップを持つ習慣に繋がるかもしれない。

「CIRCLE CUP」はそんな使い捨てを無くしていくための、使い捨てカップでもない、マイカップでもない、“第3のカップ”を目指しています。

“使い捨てない”合理的な選択が当たり前になるように

ーー「CIRCLE CUP」のようなサービスが近くにあれば、多くの人が気軽に環境課題に取り組める気がしてきました…!

今の若い世代の方は特に、合理的に考える習慣がついていると思うんです。使ってもすぐ捨ててしまうものを買うよりも、環境に優しく繰り返し使えるものを買ったり、借りたりするほうが合理的じゃないですか。

「せっかくお金を払っているのに、もったいない!」という感覚からも環境配慮は生まれると思います。

また、私も現在子育て中ですが、若い世代にも環境課題が身近なものに感じてもらえるように、次世代を育てる身として課題に立ち向かう背中を見せていきたいです。

私たちは生まれたときから紙コップやラップなど使い捨てを前提にしたものに囲まれてきました。それは便利だけど、便利なだけで進んでいるんじゃないかと思うんです。

そんな世界で「CIRCLE CUP」は、かつての私のようにちょっと立ち止まって、使い捨てという当たり前に疑問を持ち、考え直す人が増えるきっかけになってほしいと思っています。

(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/(撮影=深谷亮介(@nrmshr))

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